↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
122/144

122. 海の離宮編(33) 謁見

※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。

ミリスは、バサルク王宮を歩いていた。


バサルク王宮は、入り組んだ樹間の回廊が続いていた。

頭上を覆うのは、何重にも重なる太い枝と、濃い葉だった。

昼間だというのに、王宮の中は薄暗い。


一定の間隔で置かれた火皿に、炎が揺れている。

視線を上げれば、少し離れた向こうの回廊にも灯火が並んでいた。

王宮のあちこちに、大小の火が連なっていた。


王宮内には、香煙が漂っていた。

ひとつの香炉を通り過ぎる前に、次の煙が重なった。

甘く重い香りが、喉の奥にまとわりつくほど濃い。

白い香煙は薄暗い回廊を流れ、灯火を受けて形を変え、渦を巻きながら、ゆっくり立ち昇っていった。


いくつもの回廊を渡り、階段を上るうちに、ミリスは王宮のかなり高いところまで来ていた。


謁見の間へ近づくにつれ、あたりはさらに暗くなっていった。

昼の光もほとんど届かない回廊で、濃い香煙の向こうに、紫を帯びた青い炎が一定の間隔で揺れていた。


行き止まりで、案内役が足を止め、ミリスに一礼して手で扉を示した。


近衛がミリスの顔を確認してから、大きな扉を左右に開く。


ミリスは一礼して、謁見の間に足を踏み入れた。


◇


金と水晶を連ねた細い簾(すだれ)が、幾重にも垂れていた。

小さな金の粒と透明な水晶の粒が、数えきれないほど縦に連なり、光を拾って煌めいている。

無数の金と水晶は、光を細かな粒に砕き、揺れる輝きの幕をつくっていた。


外から入る風が、正面の金と水晶の簾を揺らしていた。

謁見の間は広く、天井は高かった。

左右は壁がなく幅広い外廊へ続き、その向こうには空と熱帯雨林がどこまでも続いていた。


大きな火皿には炎が揺れ、香炉から上る薄い煙が、光と風の中をゆっくりと昇っていた。


金と水晶の簾の向こう。

正面の階段の上に、広い壇がある。

壇上に、バサルクの伝統衣装に身を包んだ王族が静かに座っていた。

風に簾が揺れるたび、金の光の粒がその輪郭を縁取り、水晶の煌めきが衣装の上を淡く渡る。


ペルラ・ベトーラが微笑んでいた。

金と水晶で隙間なく飾られた頭飾りは、額の上から左右へ大きく張り出していた。何本もの簪から飾りが幾重にも垂れ下がっている。

ムーンストーン王都で見慣れた、気さくな令嬢の面影は、そこにはなかった。


その傍らには、見覚えのある黒髪の男がいた。

ディアバス・バサルク第二王子殿下であった。

ムーンストーンで見た男爵、アーバス・セルドとはまるで違う姿だった。

背を伸ばし、前を見据えている。

頭上には金と水晶で作られた冠が輝き、深い色の衣は金と宝石で飾られていた。


壇上には、もう一人いた。

あの方が、おそらくオーニチェ王太子殿下だろう。


壇の下には、数名の重臣が控えていた。


ミリスは定められた位置まで進んだ。

深く頭を下げる。


「ミリス・ヘーゼル。遠路、ご苦労だった」


壇上から声が響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。