12. 【閑話】 もう一杯
※第2話「2. 舞踏会編② ディアバス」の続きです。
ディアバスは、自分のカップの底に残った澱を見つめていた。
カップにお湯を入れたら、もう一杯くらいお茶を飲めるかもしれない。
……いや、それとも、もう一度ポットにお湯を入れてみるべきか。
しかし、ポットに入れた茶葉は一杯分の分量だ。それで三人が二杯ずつ飲んだのだから、もう六杯は出した。
さすがに限界だろうなあ。
「おい、やめろ」
「……!」
突然、ベルデに声をかけられ、ディアバスは顔を上げた。
ベルデはじっとこちらを見ていた。
「俺には、お前が考えていることがわかる」
「えっ……」
ディアバスは思わずカップをもう一度見た。
「バサルク王家もムーンストーン王家も、いろいろ理屈をこねて、お前の食費を出してくれないが……」
ベルデは真剣な顔で言った。
「俺はお前に、出がらしのお茶を飲ませるような男じゃねえ!!」
ディアバスの胸に熱いものがこみ上げた。
「兄貴……!」
ベルデは腕を組んで、目を閉じた。
「カップが染まるから早く洗って、水を飲んでおけ!」
「……はい」
ディアバスの感動はすぐに終わった。
「出がらしと言えば」
それまで黙っていたペルラが口を開いた。
「出がらしのお茶っ葉で作る、佃煮という物を本で見ましたわ」
「ほう」
ベルデが興味を示した。
「何だ、佃煮とは?」
「分かりませんけど、おいしいのだそうです。ご飯が止まらないとか」
「止まらないご飯?」
ベルデが眉をひそめた。
「なにか危険な物ではないだろうな?」
「いえ。絵では、茶色っぽくて、クタッとしていました」
「ふーむ。想像がつかないなあ」
「試してみるのみ、ですわ!」
ペルラは、明るく、そしてキッパリと言った。
ディアバスは、嫌な予感がした。
「ディア、作って!」
ほら、来た。
「……俺も佃煮って知らないんだけど。とりあえず、洗い物が終わってからな」
ディアバスは立ち上がった。
お茶をもう一杯飲んでいる時間はなさそうだ。
バサルク王家でもムーンストーン王家でもいいから、俺の食費を支援してほしい。
それがダメなら、せめて佃煮なる物を一回買ってほしい。
〜閑話 終わり〜




