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118/144

118. 海の離宮編(30) 雨

※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。

離宮は今日は雨だった。

窓ガラスに打ちつける雨で、海と空が滲んでいた。


ふいにペルラが口を開いた。


「ディアは……離宮にいたいの?」


「え?」


ペルラは皿のチーズケーキにフォークを刺した。


「ディアは本当は王宮にいたいのに、私のせいで離宮にいるんじゃない?」


チーズケーキがボロボロと崩れた。


「いや、そんなことはない……」


「だって、王宮にいた方がお父様ともお兄様とも一緒に過ごせる。

もう次いつバサルクに来れるかわからないんだよ。

バサルクの貴族と社交もできる。

朝儀にも出られるかもしれない。

先生の指導もいつでも受けられる」


ペルラはディアバスの目を見た。


「ディアは、私の面倒を見るために、ここに押し込められているんじゃないの?」


ディアバスは食べるのをやめると、ペルラの方を向いた。


「ペルラ、聞いてくれ。

俺は自分で望んで、ここにいるんだ」


ペルラはフォークを握りしめると、ディアバスに笑顔を見せた。


「私、もう元気になったよ。

だから、ディアがずっとついていなくても大丈夫だよ。

今までありがとう。

……だから、ディアも無理しなくていいんだよ」


「……俺は、いたらいけないのか?」


ディアバスは静かに言った。


「だって、私と一緒にいたら、良くないことばかり起きるじゃない?

私といたら嫌なことを思い出しちゃうんじゃない?

ディアにこれ以上迷惑をかけたくない……」


部屋に雨音だけが響いていた。


ディアバスはペルラを抱きしめた。


「迷惑だなんて、一回も思ったことない。

俺の大切なペルラ。

誰が何と言おうが、お前の隣にいたいんだ」


ディアバスはペルラの肩をつかむと、顔を覗き込んだ。


「俺のこと、『大好き』って言ってくれたよな?

俺と結婚するって言ってくれたよな?

嘘じゃないよな?」


「嘘じゃない……」


ディアバスはペルラをもう一度抱きしめた。


「じゃあ、何でだよ?

今さらお前が何を言っても、お前を離すなんてできない。

俺のせいでお前が傷ついても、お前のせいで俺に何かあっても、だから遠く離れて他人のように生きようなんて、俺には無理だ。

その方が安全でも、そんな人生を俺は望んでない。

お前を幸せにする、できる限り幸せにする、何でもする。

だから、俺と一緒に生きてくれないか?

それがダメなら、せめてそばにいさせてくれ」


ペルラが口を開いた。


「……私も……私もディアを幸せにできるかな?」


「できる、できる。

難しいことじゃない」


ディアバスはペルラの顔を見ると微笑んだ。


「難しいことじゃない?」


ペルラは怪訝な顔をした。


「どうするのか、教えてやろうか?」


「うん」


ディアバスはペルラの手を取った。


「俺の言うことを繰り返すんだ」


「うん、わかった」


「私ペルラはディアバスと死ぬまで一緒にいます」


「私ペルラはディアバスと死ぬまで一緒にいます」


ペルラは真剣に復唱した。


ディアバスは笑った。


「よし、よく言えたな!」


「え? 終わり?……あっ!? 今のは約束ってこと?」


「そうだな。

ペルラの口から聞けて、俺は本当に幸せだ」


ペルラはディアバスの胸をポカポカ叩いた。


「……ディアのバカ。もう知らない」


ペルラはそう言いながら、少し笑っていた。


ディアバスは、その顔を見て笑った。

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