115. 海の離宮編(27) マンゴー
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
ペルラが少し話せるようになって数日経った。
ほんの少しずつだったが、着実に、ペルラの中で何かが動き出していた。
ディアバスはペルラの髪を梳かしてやりながら言った。
「今日はマンゴーを取りに行こう。
近くに木が生えているらしい。
ずっと離宮の中にいるから、たまには出かけるのもいいだろう。
どうだ?」
「うん」
ペルラは無表情で短く答えた。
「マンゴーは明日タルトにしよう。
ペルラはタルト好きだろ?」
「好き」
切られたペルラの髪が少し伸びてきていた。
ディアバスは、器用にピンを使って短い部分を隠しながら、髪を結っていった。
最初、髪を一度短く切り揃えた方がよいかもしれないとディアバスは思った。
子供時代の短い髪のペルラもかわいかった。
しかし、ムーンストーンでは小さな子供以外は男も女も髪を長く伸ばしていた。
短髪はアルマンディンの男の象徴であった。
ペルラが自分と結婚せずにムーンストーンの社交界に戻る可能性があるなら、髪を切る訳にはいかなかった。
「ほら。どうだ?」
ディアバスはペルラに鏡を見せた。
「うん、いい」
ペルラは昔から髪型は「いい」しか言わなかった。
「よし、行くか」
ディアバスは鏡の中のペルラに微笑んだ。
◇
離宮から少し歩いた丘の上に、マンゴーの木が生えていた。
マンゴーはたわわに実っており、すぐに明日の分を集めることができた。
木陰にちょうどいい石のベンチがあった。
ペルラとディアバスは並んで座って水を飲んだ。
「ペルラ、疲れたか?」
「ううん」
ディアバスは、プルメリアの花を拾った。
近くの木から落ちたようだが、まだきれいだった。
バサルクでは、この花をよく髪に飾ると聞いたことがあった。
ディアバスはプルメリアの花を軽く払うと、ペルラの髪に挿した。
「うん、似合う」
ディアバスはにっこり笑った。
その時、ペルラがディアバスの肩に手をかけた。
ディアバスが耳をペルラに近づけると、ペルラはディアバスの頬に軽くキスをした。




