112. 海の離宮編(24) 早朝
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
ディアバスがいつもより早く目覚めると、海上油田の火災は鎮火していた。
オーニチェはそれよりも早く離宮に到着していた。
油田へ向かうピレイと一緒に王宮を出て、そのまま離宮へ来たのだという。
オーニチェはディアバスに、ペルラの真珠のネックレスを差し出した。
ベルデがペルラの誕生日に贈った真珠のネックレスだ。
「なるべく元通りにさせたが、どうか?」
ディアバスはネックレスを表裏からよく確かめた。
「僕も細かいところは覚えていないのですが、いいと思います」
「お前がいいと思うタイミングで、ペルラに渡してくれ」
「あの……」
オーニチェはディアバスに警戒の眼差しを向けた。
「何だ?
お前の『あの……』は不吉なんだよな」
「不吉な話ではないです!
この真珠のネックレスをペルラに渡すのに、誕生日会を開いたらどうかと思ったんです」
「誕生日なのか?」
「いいえ。
でも、幸せだった誕生日会を再現したら、ペルラが笑うんじゃないかと思うんです」
「では、開けばいいではないか」
「兄上。ベトーラ家の誕生日会には、ベルデ様がいたんです」
「まあ、そうだろうな」
「ここにはベルデ様がいないので、兄上にその役をお願いしたい」
「え!?」
「それでペルラに真珠を渡して欲しいんです」
「え!? 私が渡していいのか?
ベルデ様の役なんて、責任重大じゃないか……。
いやいや、よく考えろ。それしかないのか?」
「僕は肉焼いたりケーキ焼いたりで忙しいので、それしかありません!」
「いやいや……。
お前の生活は一体どうなっていたのだ?
ベトーラ家は貴族なのに料理人もいないのか?」
「いたりいなかったりですね。
でも、僕の方がペルラの好物を作るのがうまいんです。
料理人は入れ替わりますからね」
「……」
「それより、兄上は、『お誕生日おめでとう』の歌が歌えますか?」
「え?……歌? いや、歌ったことはない」
「そうでしょう、そう思いました。
兄上の誕生日会は晩餐会で、楽団が演奏しているのでしょう。
ベトーラ家では、ベルデ様と僕が歌うんです」
「……何か、お前の言い方、棘がないか?」
「兄上、楽譜を書きましたから、これで練習してください」
ディアバスは楽譜を書きつけた紙を取り出すと、オーニチェに押し付けた。
「……やっぱり、お前が『あの』って言い出すと、ロクなことがない……」




