111. 海の離宮編(23) 香煙
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
ディアバスはペルラを風呂に入れさせ、スープと果物を何とか食べさせると、ベッドに入れた。
ディアバスはペルラに布団をかけて、声をかけた。
「ペルラ、おやすみ」
しかし、ペルラは無言で天井を見つめていた。
ディアバスはペルラに背を向けてカーテンを閉めながら、赤い小さな実をこっそり口に入れて噛んだ。
口の中がビリビリした。
ディアバスは笑顔でペルラの方へ向き直った。
「今夜はよく眠れるように、久しぶりに香煙を焚こう。
王宮以来か?
オレンジとレモンの香りだから、きっとペルラは好きだぞ。楽しみだな?」
ディアバスは持ってきた香炉に、懐から出した香を置くと、火をつけた。
爽やかな香りとともに、かすかに白い煙が、部屋にうっすらと広がり始めた。
オーニチェに「困ったら使え」と渡されていた香だった。
まもなくペルラは寝息を立て始めた。
寝顔だけは、ディアバスの見慣れたペルラの顔だった。
ディアバスは部屋を出て、静かにドアを閉めた。
「中で香煙を焚いている。日の出までは中に入るな」
「はっ」
離宮守備隊が小声で返事をして敬礼した。
ディアバスは自室に戻ると、赤い実を吐き出した。
オーニチェから香を受け取った時は、使うつもりはなかった。
しかし、もうどうしていいか分からなかった。
ベッドの端に座って何となく床を見ている時、自分のズボンにペルラの長い髪の毛が一本付いていることに気づいた。
ディアバスは、淡いミントグリーンの髪をつまむと、丁寧に指に巻きつけて輪を作り、オーニチェの香が入っていた金の小箱にそっとしまった。




