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107/144

107. 海の離宮編(19) 火

※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。

翌日。


離宮への襲撃について、近衛と離宮守備隊から報告が上がった。


捕らえられた侵入者は、アルマンディンの残党だった。


しかし、油田火災については知らない様子だった。


離宮襲撃と油田火災は同じ晩の出来事であったが、調べても二つを直接結びつけるものは出てこなかった。


◇


オーニチェとピレイは、王太子執務室で報告書を確認していた。


油田側の報告には、奇妙な点があった。


火災は、離宮からもはっきり見えるほど激しかった。

今もまだ一部で消火活動が続いている。


それにもかかわらず、主要設備の損傷は少なく、操業再開にもそれほど長い時間はかからない見込みだった。


さらに、火災は事故ではなく、誰かが意図的に起こした可能性が高いことも分かった。


オーニチェは報告書を机に置いた。


「破壊が目的ではなかったということか?」


ピレイは少し考えた。


「例えば……燃えているところを、見せたかったのでしょうか?」


「なぜ? 誰に?」


「そんなの、私もわかりませんよ」


「まあ、そうだよなあ。

別々の事件である可能性も考えて、調査を続けてくれ」


「承知しました」


オーニチェは報告書を閉じた。


◇


後日、油田の年一回の定期保全のため、ムーンストーンからコンミフォラ家の船がバサルクへ到着した。


その船には、イグニスの父であるコンミフォラ卿が乗っていた。


コンミフォラ卿は海上油田へ向かうと、予定されていた点検に加え、火災のあった設備も調べ始めた。


派手に燃えた割に、やはり損傷は軽かった。


外装の焦げた装置の一つを開き、内部を確認する。


透明な液体の中を、細い銀線が何本もゆるく曲がりながら伸びていた。


銀線は淡く光り、液体の中でゆっくりと揺れている。

その間を、細かな気泡が無数に立ち上っていた。


ところどころに小さなオレンジ色の宝石が埋め込まれ、銀線の淡い光を受けて、きらきらと瞬いていた。


◇


装置には、記録もきちんと残っていた。


コンミフォラ卿は順に目を通していった。


稼働記録、点検記録、認証記録。


その中に、火災直前の不審な認証が一件だけ残っていた。

油田勤務者のものではない。


詳細を確認すると、ムーンストーン軍へ納入された星の蔦で、さらにアルマンディン駐留軍の軍人に登録されたものだった。


油田では出退勤管理のために認証用の銀線が使われている。

侵入者を見つけるための設備ではないため、その軍人は気づかず銀線の近くを通り、星の蔦が自動的に反応したのだろう。


星の蔦は登録された本人以外には使えない。

つまり、火災の直前、アルマンディン駐留軍の軍人が油田にいたことになる。


アルマンディンの治安が安定すれば、駐留軍の縮小や予算の削減を求める声も出る。

反対に、脅威が周辺国にまで及んでいるとなれば、その必要性を主張しやすくなる。


それだけで、その軍人が火をつけたとは言えない。


だが、無関係とも言い切れなかった。


コンミフォラ卿は、識別情報と時刻を紙に書き写すと、紙を折り畳み、上着の内側へしまった。


コンミフォラ卿は、バサルク側への報告書には例年通り、設備の状態だけを記すことにした。

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