101. 海の離宮編(13) 窓
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
夜。
大きな物音でペルラは目を覚ました。
寝室の窓が割られて、見知らぬ男達がまさに入ってきているところだった。
異様で、現実味がなかった。
体が動かない。
男の一人がランタンをペルラの顔に近づけた。
「見つけた」
まぶしくて思わず顔をそらすと、別の男が乱暴にペルラの髪を掴んで顔を上げさせた。
「お前がペルラ・ベトーラか?」
「……」
ペルラは声が出てこなかった。
「だんまりか?
下賤なバサルク人とは話せないってか?」
男はペルラの髪の毛を掴んだまま、ベッドからペルラを引き摺り下ろした。
「ムーンストーン人様はさぞかし偉いんだろうなあ!
バサルク人よりも、アルマンディン人よりもなあ!」
ペルラは顔から床に落ちた。
顔を上げると、血がポタポタと床に落ちた。鼻血が出ていた。
「お前の父親がディアバス殿下をバサルクから連れ去った。
殿下はまだ3歳の子供だった。
国王陛下、王妃様、オーニチェ様がどれ程悲しまれたか。
国民がどれ程悲しかったか。
それなのに、お前はよくのうのうとバサルクに来れたな!」
男は剣を突きつけてきた。
ペルラは座ったままじりじりと壁に追い詰められていた。
「幼いディアバス殿下を奪っただけでは足りなかったのか?
オーニチェ殿下と婚約して、破棄して、どれだけバサルク王家を愚弄する気か?」
男は剣を振り上げた。
「この魔女がッ!」
剣はペルラの顔の横の壁に打ち込まれていた。
ペルラの髪がパサリと切れて、床に落ちて散らばった。
「全て置いて、バサルクから出て行け!」
ペルラは立とうとしたが、全然足に力が入らなかった。
「王妃様のティアラも置いていけ!
どこだ? 出せ!」
オーニチェとの婚約式や王宮行事で着けたティアラだった。
「ムーンストーン人なんかが触っていい物じゃないんだ!
さっさと返せ!」
ペルラは這って、衣装棚の前に行くと、震える手で棚の引き出しを何とか出した。
どこにあるか皆目見当もつかなかった。
何個目かの引き出しは、宝石の引き出しだった。
ティアラも入っているかもしれない。
ペルラは1つずつ箱を開けてみた。
開けた物は全て違った。
引き出しの一番奥に、緑色の箱があった。
ペルラは箱の中身がティアラではないと知っていたが、無意識に開けていた。
以前に兄ベルデがくれた真珠のネックレスだった。
ペルラがネックレスを手にした瞬間。
「時間稼ぎするなら、ここで殺すぞ!」
男が剣でネックレスを切り上げた。
糸が切れて、真珠が飛び散った。




