10. 舞踏会編⑩ 質問
大広間へ戻ると、曲はまだ続いていた。
ガレナは飲み物を一つ取り、壁際へ移動した。
アーバスとしばらく話していたので、喉が渇いた。
グラスを口元へ運ぼうとしたとき、こちらへ近づいてくる淡いミントグリーン色の髪が目に入った。
ペルラだった。
ガレナは自分に用があるとは思わず、道を空けようとした。
しかし、ペルラはそのまま彼の前で足を止めた。
「ガレナ様、またお会いしましたね。
舞踏会を楽しまれていますか?」
ガレナは、グラスを途中まで上げていた手を下ろした。
「はい」
楽しんでいるかと言うと微妙だったが、アーバスという男と話せたし、ガレナにとって有意義であったことは間違いない。
「それはよかったです。
ところで、アーバスを見ませんでしたか?」
「アーバス様を?」
「ええ。大広間に見当たらなくて」
ペルラは周囲を見回した。
「南の庭にいらっしゃるのではないでしょうか。先ほどまで、私も南の庭で話していましたから」
「南の庭ね」
ペルラはにっこりと笑った。
「どうもありがとうございます」
ペルラはお礼を述べると、歩き出した。
「いえ」
ガレナはその背中を見送り、グラスを持ち上げかけた。
少し離れたところに、ベルデとミリスが並んで立っていた。
二人とも、ガレナの方をさりげなく見ていた。
そのとき、行ったばかりのペルラが戻ってきた。
「すみません。
あの……南の庭はどちらですか?」
ガレナは手を止めた。
「あちらです」
ガレナは大広間の反対側にある扉を示した。
「どうもありがとうございます」
ペルラは示された扉を確かめ、今度こそ歩き出した。
ガレナは再び、ベルデとミリスの方を見た。
二人とも、まだこちらを見ていた。
ベルデは、大きく笑っている。
ガレナは、ベルデとミリスへ向けて会釈した。
ベルデは軽く手を上げ、ミリスもにこやかに会釈を返した。
何だか少し気まずいが、自分から話しかけたのではない。
アーバスの居場所と、南の庭への行き方を聞かれて答えただけである。
自分のせいではない。
ガレナは心の中でそう唱えながら、グラスに口をつけた。
ようやく口にした白葡萄酒は、よく冷えていた。




