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41:お色気回……でも、破滅願望の発作

「……なんとか、時間をやりすごした」


エパンチン夫人と三姉妹との壮絶なお茶会を経て、

夕方になり、ついに将軍が戻ってきた。


(おっしゃ!! ようやく味方が帰ってきた!!)


将軍は、俺を見るなり


「よく生き残ったな」


という顔をしていた。


そして――

エパンチン家の険悪ムードのまま、夕食。


(ま、まぁ……美味いからいいや)


そして――

食事が終わり、俺はついに寝室をあてがわれた。


(よし!! ここまでは完璧だ!!!)


だが――

俺は、まだ知らなかった。


この先に、最大の試練が待っていることを――。


俺は、与えられた寝室に入り、ベッドに潜り込んだ。


転生そうそう、濃い時間が続きそのまま寝落ちしそうだった。


その時、扉が、すっと開いた。


ノックの音は、なかった。


(……!?)


振り向くと――

そこに、ナスターシャ・フィリポヴナが立っていた。


彼女は、何も言わず、ただ俺を見つめていた。


まとっているのは、薄く透ける白のナイトガウン。

灯りの加減によっては、肌の色が浮かび上がりそうなほど、

かすかな布一枚。


髪は解け、肩から流れ落ち、

その佇まいはまるで――


“運命そのもの”が、夜に降り立ったかのようだった。


そして、彼女は一歩、また一歩と、

俺の方へと近づいてくる。


何も言わない。表情もない。


ただ――静かに、

そのまま、俺の隣に横たわった。


ベッドのシーツが揺れ、

俺の体温に、彼女の温もりが触れる。


(…………えっ??????)


(えっ??????????)


(ちょ、まって、これは何のイベントだ!?)


混乱と覚悟が一瞬で脳内を駆け巡る。


「いや、待て待て待て……!」


声に出た。


「俺は、ナスターシャ・フィリポヴナを救うためにここに来た。

 こういう展開は……想定してなかった……!」


すると――

彼女は、静かにこちらを向いた。


目は、まっすぐに俺を射抜くように、冷たく。


「……私なんかを、抱くの?」


その声に、空気が凍った。


「いいの?」


「…………」


「あなた……私が、どれだけ汚れているか、分かってる?」


彼女の言葉は、刃だった。

皮膚ではなく、魂を裂く刃。


「私は、あなたが救えるような女じゃない」


「私はね……生まれてこなければよかったのよ」


「!?」


「男たちの玩具でしかなかった。

 私は、誰からも愛されたことなんてないのよ」


「私は――破滅するために生まれたの」


「……やめろ」


「私は、ロゴージンのところへ行くべきなの!!!!」


「うるせえ!!!!!!!!!!」


俺は、気づけば――

ナスターシャ・フィリポヴナを、全力で抱きしめていた。


「もう、いい!!!!!!」


「お前は、十分に苦しんだ!!!!!!」


「俺が、お前を救うって決めたんだ!!!!!!」


彼女は、腕の中で、しばらく黙っていた。


やがて、震える声で、ぽつりと呟いた。


「……私、幸せになっても、いいの?」


俺は、そっと彼女の頬に触れ、答えた。


「――ああ、もちろんだ」


そのときの、彼女の息。

それは、初めて“人間のナスターシャ”が吐いた、

生きようとする呼吸だった。


(……よし)


ナスターシャの破滅願望は、

この手で、必ず消し去る。


こうして――


俺とナスターシャ・フィリポヴナの、

新たな人生が静かに始まったのだった。


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