40:知識チートで無双できない
「では、私は仕事があるのでな」
将軍、めっちゃ自然にフェードアウト。
「え、ちょっ、逃げんな!!」
「頑張れよ、若造」
「おい!!!!」
だが――すでに将軍の背中は遠く、
執事がそっと扉を閉める。
(くそっ、あのオッサン……逃げやがった!!!)
残されたのは――
エパンチン夫人と三姉妹。
そして俺、ナスターシャ・フィリポヴナ。
場の空気は最悪だ。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
(くっ……投げた後だからこそ、空気がより最悪になっている!!!)
だが――
俺には秘策がある!!!
「知識チート」だ!!!!
「21世紀の知識を駆使すれば、女たちの心を鷲掴み
……のはずだ」
(よし……ここは、俺の21世紀の知識で一発逆転だ!!!)
俺は、優雅に紅茶をすすりながら、にっこりと微笑んだ。
「さて……」
「皆さんに少し未来のお話をしてあげましょうか」
「は?」
「未来?」
「……なにかしら?」
(よし、食いついた!!)
俺は、優雅に微笑み――
「例えば……そうですね」
「これからの時代、ロシアでは大きな変革が訪れます。」
「もうすぐ、革命が起きて……」
「ロマノフ朝は崩壊するのです」
「……」
エパンチン家の女たち、完全に沈黙。
(よし……聞いてる聞いてる!!)
「貴族制度は終焉を迎え、平民が権力を握る時代がやってきます」
「そして、社会は急激に変わり――」
「共産主義が台頭し、ソ連が誕生するのです!!!!!」
「……え?」
「……は?」
「……何を言っているの?」
「さらに!!!」
「戦争が起き、ロシアはドイツ軍と死闘を繰り広げ――」
「その後、冷戦が始まり、宇宙開発競争が……!!」
「…………」
「そして、21世紀にはスマートフォンが普及し、
人々は手のひらの端末で世界中の情報を……」
「……ねえ、ちょっと待って?」
「???」
「あなた……何を言っているの??????」
「えっ???」
「……この男、頭がどうかしてるわ」
「……いや、でも、スマート……何?」
「冷戦? 宇宙??」
(あれ?????)
(なんか、めっちゃ警戒されてる??????????)
(俺の知識チート、
まったく通じてねぇ!!!!!!!!!!)
俺は気づいた。
「現代知識チート」って
「現代の価値観が通じる相手」
にしか有効じゃない!!!!
この世界の人間にとって、俺の話は完全に狂人の戯言だ。
(や、やばい……!!!!!)
(俺、今、この屋敷で、完全に「危険人物」になりつつある!!!!)
エバンチン夫人が、ようやく口を開く。
「……あなた、本当に正気なの???」
「……いや、まあ、その……」
三姉妹も呆れている。
「もう、この男を放り出して!!!!」
「……お父様が許しているのよ?」
「それでも……この男、変すぎるわ!!!」
(……詰んだ?????)
ナスターシャは、紅茶を飲むだけだ。
俺のペテルブルグ攻略、最大のピンチ!!!!!!




