37:ところで……あなた、誰なの?
カザン大聖堂の中で、荘厳な結婚式が進められた。
聖歌が響き渡る。
神父が神聖な祈祷を捧げる。
俺はナスターシャ・フィリポヴナの手を取り、
神の御前で誓いを立てた。
「主の御名において、私はこの女性を愛し、守り抜くことを誓います」
ナスターシャ・フィリポヴナは、最初は戸惑っていたが――
次第に、その瞳が揺れ始めた。
(……よし、届いている!!)
そして、結婚式は滞りなく終わり――夜の祈祷が始まった。
俺は、そのまま聖堂に残り、夜明けまで祈り続けた。
「主よ、ナスターシャ・フィリポヴナをお救いください」
「彼女が破滅の道を歩むことなく、 ただ幸福の中で生きられるように」
「生神女マリヤよ、我らを憐れみ給え」
俺は、ひたすらに祈った。
長い、長い夜だった。
ナスターシャ・フィリポヴナは、
最初は呆れたように俺を見ていたが――
次第に、俺の姿をじっと見つめるようになった。
そして、気がつけば、彼女自身も静かに祈りを捧げていた。
(……よし……!)
そして――
夜明けが来た。
俺は、ゆっくりと立ち上がり、ナスターシャ・フィリポヴナと共に、聖堂の扉を開けた。
朝焼けのペテルブルク。
ナスターシャ・フィリポヴナは、
静かに息を吐き、俺の顔を見た。
「……で、これからどうするの?」
俺は、迷わず答えた。
「もちろん、夫としてお前を幸せにする」
ナスターシャ・フィリポヴナの目が、再び揺れる。
「ところで……あなた、誰なの?」
俺は――
堂々と胸を張り、高らかに宣言した。
「海山商事の山田タカシです!!!」
「………………は?」
ナスターシャ・フィリポヴナ、完全にフリーズ。
ペテルブルクの朝、
新たな物語が始まる――!!!!!!!!




