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36:全能なる神に祈りを捧げる

「……あなたは、本当に正気ですか?」


神父の言葉に、俺は、胸に手を当て、深く息を吸い込んだ。


ここまで来た。

人間としてできることは、もうすべてやった。


ならば、俺に残された道はひとつ――

信仰に身を委ね、神の御許にすべてを託すこと。


俺は静かに目を閉じ、

守護聖人、守護天使、生神女、

そして、全能なる神に祈りを捧げる。


低く、しかし確かな声で――


「至善者よ、我等寤め興きて、爾に伏拝す、

全能者よ、天使の歌を以て爾に呼ぶ、

聖、聖、聖なる哉神よ、生神女に因りて我等を憐み給え」


神父の表情が変わる。


「光栄は父と子と聖神に帰す。

主よ,

爾は我を覚して榻より起せり、

我が智慧と心とを照し、

我が口を開き,爾聖三者を讃め歌わせ給え、

聖、聖、聖なる哉神よ、生神女に因りて我等を憐み給え」


静寂が、聖堂を包み込む。


ナスターシャ・フィリポヴナが、じっと俺を見つめている。


「今も何時も世世に。アミン」


俺は、深く十字を切る。


「私は、信徒として、

神の御前で誓いたいのです!!!!!!」


ナスターシャ・フィリポヴナは、もはや呆れを通り越し、なぜか微妙に感動しているような顔になっている。


(よし!!!!! いけるか!!!!?)


神父が、俺をじっっと見つめる。


そして――


「……お前、本当に信徒なのか?」


俺は、即座に答えた。

「ニカイア・コンスタンティノポリス信経を暗唱できます!!!!!」

「朝晩のお祈りは欠かしていません!!!!!」

「そして何より――俺はナスターシャを愛している!!!!!!」


神父が、一瞬、驚いた表情をした。


……いける。


俺は、信仰心と愛と情熱と勢いだけで、この場を突破する!!!!


「すぐに式を挙げてください!!!!!」

「今すぐに!!!!!!!!!!!!」

「彼女を救うためにです!!!!!!!!」


俺の魂の叫びに、神父はついに――


「……………………」

「……………………はあ…………」

「……………………わかりました」


俺、ガッツポーズ。

ナスターシャ、目を見開く。

御者、なんか感動してる。

俺は、聖堂の中心に立ち、静かに目を閉じた。


そして――


「Во имя Отца и Сына и Святого Духа, аминь.」(父と子と聖神の名による、アミン)


荘厳な聖堂に、俺の声が響き渡る。

神父の手が、ぴたりと止まる。

輔祭たちが、いつの間にか集まり始め、

微妙に驚いた表情を浮かべている。


感謝を込めて祈るしかない。


「Господи, помилуй.」(主よ、憐れみ給え)

「Господи, помилуй.」

「Господи, помилуй.」


俺は、繰り返し唱えた。


祈祷の響きが、聖堂に満ちていく。

ナスターシャ・フィリポヴナが若干戸惑い始める。


俺は、そのまま続けた。


聖堂の空気が変わる。

輔祭の一人が、思わず胸に十字を切る。

神父が、少し目を細める。


「……始めましょう」


こうして――

ナスターシャ・フィリポヴナとの結婚式が、

ついに始まった!!!!!!!!!!


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