表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/75

35:俺たちは結婚するんだ

「おい、乗せてくれ!!!」


俺は、通りに出ると、

近くを走っていた馬車を力強く手で止めた。


御者が驚いた顔をしている。


だが、俺は迷わず、

なんか前に観光で見たことある教会の名前を告げた!!


「カザン大聖堂だ!!!!」

「……は?」


御者が戸惑う。


「は、早くしろ!!! 俺たちは急いでいるんだ!!!」


そう叫ぶと、俺は10万ルーブルの包みを開き、

適当に札束を放り投げた。


御者の目がドルマークに変わる(19世紀にそんなマークがあるかは知らない)。


「Да, господин!!!」(はい、旦那様!!!)


ゴオオオオオオオ!!!!!!!!!!


辻馬車は、勢いよくペテルブルクの街を駆け抜ける!!!


ナスターシャ・フィリポヴナが、俺の隣で呆れ果てた顔をしている。


「……あんた、本当に狂ってるわよ」

「いいや、俺は正気だ」


俺は、しっかりと彼女の手を握りしめた。


だが――

ナスターシャ・フィリポヴナは、静かに、ドフトエフスキー先生仕込みの破滅願望モードに入った。


「……私はやっぱり、ロゴージンのもとへ行くべきだったのかもしれない」

「私は、どのみち救われない。私を愛する者は、皆、私によって不幸になるのよ。」

「それでも、あんたは私を救うと言うの?」

「それでも、私を――」


「うるせえええええ!!!!!」


俺は、もう考える間もなく、

ナスターシャ・フィリポヴナの顔を両手でがっちりと掴み――


「んっ……!?」

キスした!!!!!!!!


馬車の中、静寂。


御者、ちらっと覗き込むも、気まずそうに前を向く。


ナスターシャ・フィリポヴナ、目を見開いて硬直。

俺、全力。

唇が触れ合い、彼女の呟きが止まる。


そして――

俺は、囁いた。


「黙って、俺についてこい」


ナスターシャ・フィリポヴナの瞳が揺れる。


そして――

俺たちを乗せた馬車は、ペテルブルクの街を走り抜けていった。


ドンドンドンドン!!!!!!


ペテルブルクの夜、俺は、カザン大聖堂の巨大な扉を全力で叩きまくった!!!!


「おい!! 開けろ!!! 俺たちは結婚するんだ!!!!」


ナスターシャ・フィリポヴナが、

後ろで完全に呆れた顔をしている。


「……ねえ、あんた、本当に正気?」

「うるせえ!! 俺はナスターシャ・フィリポヴナを救う!!!結婚式を挙げると決めたんだ!!!!」


扉の向こうで、明らかに動揺する気配がある。


(……くるぞ!!!)


そして――

ギィィィ……


扉が少し開き、中から怪訝そうな顔をした神父が現れた。


「……なんですか? こんな夜更けに……」


俺は、迷わず、神父の肩をガシッと掴んだ。


「すぐに結婚式をしてください!!!!」

「……はあ?」

「いやいや、こんな聖堂だし、輔祭も聖歌隊もすぐに集まるでしょ!?」

「……えっ???」


俺は、神父の肩を揺さぶりながら、全力でまくし立てる。


「なあ、お願いだ!! 俺はナスターシャ・フィリポヴナを救わねばならぬ!!!」

「そのためには結婚式しかないんだ!!!」

「聖なる誓いで、彼女を束縛する!!!!」

「だから、すぐに式を挙げてくれ!!!!!」

「……」


神父は、完全に「なんなんだコイツは?」という顔で固まっている。

ナスターシャ・フィリポヴナが、後ろでため息をつきながら額を押さえている。


「……あんた、本当に……」


しかし、神父は、ハッと我に返ったように俺をまじまじと見つめると、急に真顔になった。


「……いや、そもそも……あなたは信徒ですか?」


……来た!!!

(この問いかけ、俺は待っていた!!!)


俺は、堂々と胸を張り、高らかに宣言する!!!!


「もちろんです!!!!」

「どこの教会の信徒ですか?」

モスクワで洗礼を受けました!!!!」

「……どこの教会で?」

「えっ……と……」


(やべえ、名前覚えてねえ!!!!)


だが、俺は、すぐに機転を利かせた。


「クレムリン隣で、すごく偉い神父に洗礼を受けました!!!!」

「……」


(これはいける!!)


「ほら、俺はちゃんと信徒だ!!!!」

「だから、結婚式を挙げてくれ!!!!!」

「聖歌隊はすぐ集まる!!!」

「俺は10万ルーブル持ってる!!!!!」


俺は、包みをバッと広げ、札束を神父の前に見せつけた。

「………………………………」


(よし!!! これで説得完了――!!!!!)


しかし――

次の瞬間、神父は、じっっっっっっと俺を見つめると、ゆっくりと口を開いた。


「……あなたは、本当に正気ですか?」

「…………」


(えっ、俺、まだダメ!?!?!?)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ