30:NHKありがとう
俺は、吹っ飛ばされながらも、再び立ち上がった。
顔が痛い。脳が揺れている。
だが――
心は折れていない!!!!
ナスターシャ・フィリポヴナは、
未だに呆然としたまま俺を見ている。
この一瞬の隙、今しかない。
俺は、再び彼女を力強く抱きしめた!!!
「……っ!?」
ナスターシャ・フィリポヴナの体が、一瞬、硬直する。
そして――
俺は、はっきりと、彼女に宣言した。
「俺を救うのは、お前だ!!!!」
会場が、凍りつく。
ナスターシャ・フィリポヴナの瞳が、大きく揺れる。
「……な、なにを……」
彼女が動揺している――これはチャンスだ!!!
だが、その時――
「救う、とは……!!」
うるせええええええええ!!!!
いつのまにか、公爵(多分)が起き上がっている。
そして、またしても俺に何か余計なことを言おうとした。
神のような愛だの、彼女の魂をだの、
どうせまた綺麗事を並べ立てるつもりだ!!!
……俺はもう、そんなものを聞く気はない!!!!
「ナスターシャ・フィリポヴナ、ちょっと待ってろ」
俺は、そう言い残し――
公爵(多分)を、もう一度、投げた!!!!!!!!
「ぐぉおおおおおおお!!!!!!!!!」
ムイシュキン公爵(多分)、再度宙を舞う。
――ドッシャアアアアアアア!!!!
貴族たちの悲鳴。もう誰も俺を止められない。
俺は、ナスターシャの前に戻った。
「お前は、美しい!!!」
「お前は、気高い!!!!!」
「お前は、俺が42年間の人生で、唯一、心の底から愛した女だ!!!!!」
「いや、愛するとか、そんな生易しい言葉じゃ足りない!!!」
「お前のためにロシア語を学び、筋肉を鍛え、クレムリンでスキンヘッドと戦い、寝台車でロシア人と飲み明かし、チフヴィン墓地で涙を流し、そして今、こうしてここにいる!!!」
俺の言葉は止まらない!!!
「お前が美しいのは当然だ!!!」
「お前が哀しいのも当然だ!!!!!」
「でも、お前が燃えるように生きる姿こそ、
俺はこの世界のどんなものよりも尊いと思うう!!!!!!!!」
「だから、ナスターシャ・フィリポヴナ!!!!」
「俺は、お前を絶対に救う!!!!!!!!!!」
俺は叫び続けた。
どこからこんな流暢なロシア語が出てくるのか、自分でも分からない。
(俺、よくこんなにロシア語喋れるな……NHKありがとう)
だが、そんなことはどうでもいい!!!
俺の言葉を受け、ナスターシャ・フィリポヴナは――
完全に、呆然としていた。
「……」
彼女は、俺を見つめる。
その瞳が、揺れる。
(俺の言葉は、届いたのか!?)
次の瞬間――
彼女の口が、ゆっくりと開かれた!!!!!!!!!




