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27:コルホーズは社会主義経済の発展においてどのような役割を果たすか

「……なんだ、お前は?」


男の声が響く。

俺は振り返った。


そこに立っていたのは、ゴツい体格、鋭い目つき、異様な気配をまとった男。


(……こいつか?)


こいつが――

ロゴージン!!!


俺は、拳を握りしめる。


いや、待て。俺はまだ確証を持っていない。

この世界の顔ぶれをちゃんと見極めるためには、まずは名前を確認するべきだ。


俺は一歩前に出て、深く息を吸い込み、堂々と名乗ろうとした――


……が。


緊張のあまり、頭の中が真っ白になる。


(やばい、ロシア語でどう聞けばいいんだっけ……!)


そして、次の瞬間、俺の口から飛び出したのは――


「Какова роль колхоза в развитии социалистической экономики?!」(コルホーズは社会主義経済の発展においてどのような役割を果たすか!?)


(違う!!!!)


違う!!!!!違うぞ俺!!!!


俺の必死のロシア語学習の成果、ソ連時代の農業集団化についての例文が出てしまった!!


ロゴージン(多分)の表情が固まる。

周囲の貴族たちは、呆然とした顔で俺を見つめている。


「……は?」


かまわん!!!!

考えるな!!!!!

俺は、もう勢いで行くしかない!!!


「間違ってたら後で土下座だ!!!」


俺は、叫びながら猛然と突進する!!!


そして――

「天誅ぅううううう!!!」


ロゴージン(多分)の巨体を豪快に投げ飛ばした!!!


ズシャアアアアアアアッ!!!


貴族たちの悲鳴!!ナスターシャ・フィリポヴナの目が見開かれる!!

ロゴージン(多分)の身体が豪華なカーペットの上に叩きつけられた!!!


(よし!!! いける!!!)


俺は荒い息をつきながら、仰向けに転がる男を見下ろした。


こいつがロゴージンでなかったら、後で全力で謝る。

だが、俺の直感は間違っていない。

俺は、叫んだ。


「ナスターシャ・フィリポヴナ!! 俺が、お前を救う!!!」


夜会の場は、完全なる沈黙に包まれた――!!!


公爵を投げた。ロゴージン(多分)を投げた。

だが、まだだ。


まだ、こいつを裁いていない。


トーツキイ。


ナスターシャ・フィリポヴナを弄び、10年以上も愛人にし、飽きたら捨てて、新しい若い令嬢(エパンチン将軍の長女)と結婚するために、彼女を金持ちどもの前に突き出した――


「お前を買いたい奴がいる」


そんな言葉を、何の呵責もなく、まるで品物を処分するかのように口にした男。


原作を読んだ時の怒りが、俺の脳裏に渦巻く。


ナスターシャの屈辱、悲しみ、怒り、絶望――すべての元凶は、こいつだ!!


(どこだ、トーツキイ!!!)


俺は、会場を見渡す。


いた。


なんか、金を持ってそうな中年男。豪華な服、指には光る指輪、妙に余裕のある顔つき。


(こいつだ。きっとこいつがトーツキイ!!!)


俺は、勢いよく駆け寄る。

だが、ここで学んだ。


(いや、今度はちゃんと確認しよう)


俺は、トーツキイ(多分)の前に立ち、グッと拳を握りしめながら、冷静に名を尋ねる。


「Ты Тотский?」(お前がトーツキイか?)


男が、怪訝な顔をする。


「……Нет, я――」(いや、私は――)


次の瞬間、俺の頭がフリーズした。


(やばい、こいつ違うかもしれない!!)


一気に緊張が走る。このままじゃマズい――!!


俺は、焦りながら必死にロシア語を探す。

何か、何か適切なフレーズを――

しかし、脳が混乱し、口から出たのは――


「Революция – это локомотив истории!!!」(革命は歴史の機関車だ!!!)


(違う!!!!!!)


なぜ今、マルクスの名言が出てくる!?俺の脳内のロシア語データはどうなっている!?


会場が、凍りついた。トーツキイ(多分)が、呆れた顔で口を開く。


「Что…?」(何だと……?)


構わん!!!!


もう、流れなどどうでもいい!!!

俺は、叫んだ。


「ТЕНЧУУУУУУУУУУУ!!!!!」


そして――

トーツキイ(多分)を、盛大に投げ飛ばした!!!!


ズシャアアアアアアアアアッ!!!!!!!


豪華なカーペットに、中年男の体が叩きつけられる!!!

貴族たちの絶叫!!!会場に響く悲鳴!!!


俺は、静かに立ち上がり、転がった男を見下ろしながら、言い放つ。


「お前がトーツキイでなかったら、あとで謝る」


完全に沈黙した会場。

俺は、荒い息をつきながら振り返る。


そこに――

ナスターシャ・フィリポヴナがいた。


その目が、俺をじっと見つめていた。


(……どうだ、ナスターシャ・フィリポヴナ!!)

(俺は、お前を救いに来た!!!)


緊張が走る。


彼女の口が、ゆっくりと開かれた――!!!


「Извините... но кто вы вообще?(……いや、あんた誰?)」

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