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19話

チクリと腕に何かが刺さる。

殺意や敵意も感じられないし手練れの暗殺者の気配でもない。

……ん、この気配は宮廷医か。


あー、お注射されてるー。

私は直ぐに解析の魔法を発動する。


……結核の特効薬?

わーすごーいってまじで?!

宮廷医……貴様やはり天才であったか……


あっ……男性のいる密室で寝るなんて女子力の低いことをしてしまった。

これは私の元々持っている女子力を100ポイントとした時に10ポイントはこのことによって減ってしまっただろう。

つまり私の今の女子力は90ポイント。どこかで挽回しなければ


「シュコー……シルフィさんはこれで大丈夫でしょう、シュコー」


ん?いつのまにか針が抜かれていた。

考え事もほどほどにしないとなぁ。


「そうか……よかった……」


殿下や……何を言っているんだい?

……そういえばカイン殿下の結核は元を辿れば私が原因でしたね……いや、ほんと申し訳ない。


「シュコー…次は殿下の番ですぞ」

「な、なんだと?!」


宮廷医は針をカイン殿下に見せつけていると思う。

私は目を開けていないのでよく周囲の状況がわからない。

もっと喋って。説明して。


「いや、まさか殿下ともあろうお方が注射が苦手とは言いませんよね?」

「と、当然だろう?」

「シルフィさんの前でダダなんてこねませんよね?大声出しませんよね?」

「何を言っている?当たり前だろう?」


いや、カイン殿下はめっちゃ苦手だぞ。

今すごい心拍数が上がってる。

呼吸もだいぶ乱れてる。

宮廷医も知ってるでしょう?殿下の注射嫌い。

……これ、多分私の狸寝入りもばれてるかな?

宮廷医めっちゃ面白がってるし。

こっちを伺う気配が凄い濃い


「ならば……」

「ちょ、ちょっと待てっ!いいからちょっと待てっ!……心の準備がいるんだ」


子供か!……いや、前世を全て含めれば齢大体6000歳……7000歳?の私からすれば大体子供だよね。


いや、心はまだ200代だから私はまだまだ若いよ!


「いえいえ大丈夫です」

「いや私が大丈夫じゃない!」


宮廷医、心の準備いらない発言。

きっとカイン殿下は恐れおののいていることだろう。

もっと敬ってあげて。王族だよ?


「私は宮廷医です。安心して。私が大丈夫といえば大丈夫。」

「嫌だ嫌だ……やめろ……やめるんだ、今ならまだ間に合う……正気に戻れ!」


お前が正気に戻れ、殿下。


「さぁ殿下、3、2、1で刺しま……ハイ終わりました」

「うぉぉぉぉおおお!やめろぉぉぉぉおおお……あれっ?」

「終わりましたよ」


宮廷医……普通に神業なんだよなぁ……

尊敬する。意識のずらし方、痛点をなるべく刺激しないように針を打つ技術。

慣れてるなぁ……あ、これが本業ですか。

いつも研究室で毒薬が入った鍋を笑いながらかき回してたからちょっと誤解してたみたいですね。


「終わった?」

「ハイ」

「まじで?」

「もう一本イッときます?」

「いえ、結構です」


それにしてもカイン殿下……みっともないなぁ。

もっとシャキッとしなさい!

注射くらい怖がっちゃダメでしょ、男の子なんだから。


「シルフィさんも人が悪い」

「あ?ばれてました?」


やっぱ宮廷医にはばれてたみたい。

私、狸寝入りとか無理だよ……

動きが完全に固まって不自然になっちゃうから。


「シッ、シルフィ?!いいい、一体いつから起きてたんだ?!」


そんなに慌てることないでしょうに。

あ、宮廷医めっちゃ笑ってる。

おい、御者。さっきから見ないと思ったら一人で御者席で菓子を食べているとは……私も欲しいです。紅茶が飲みたい。


「最初から?注射打たれるくらいからかな?」

「……終わった」


私が答えた瞬間カイン殿下がうつ伏せになった。

めっちゃどんよりした空気を出してる。


「シュコー……クックックッ……失礼。では殿下……クックッ……すみません、あまりにもおもしろ……いえ、なんでもありません。では私は馬車に戻ります」


宮廷医……もっと敬う気持ちを持て。

王族に失礼……ぷっ……おもしろすぎる


「シルフィに笑われた……もうダメだ……」

「いえ、カイン殿下……ぷっ……すみません、あまりにもおかしくて……」

「終わった……」


今度はカイン殿下が若干床にめり込んだ気がした。まぁ気のせいだけど。それぐらい落ち込んでるオーラが出てる。


「もう馬車出しまーす」

「わかりました!」


御者のラナンが馬車を出す合図の緑色の光を空に打ち上げる。

馬車がベットのようになっていると危ないので私は仕掛けのスイッチを押し馬車の中を椅子の状態に戻す。


ゴトッ


カイン殿下が床に落ちた……

とりあえず私は下座に移り上座にカイン殿下を座らせる。


……寝てる。

完璧に寝てるよ。


はぁ仕方ないな……


「し、るふぃ……」

「……今回だけですよ?足が痺れるんですから」


私は太ももの上にカイン殿下の頭を乗せた。

外を見ると空は雲ひとつない茜色で綺麗だった。

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