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約束の地  作者: 黒瀬新吉
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76. 最初のインセクトロイド

最初のインセクトロイド


「由美子、カグマ博士といえばシュラを作ったあのカグマ・アグル・サクヤのことでしょう。だったらそれほど古いことではないはず」

「リンリン、違うのよ。カグマとは代々引き継がれる名前、マンジュリカーナのようにね」

「じゃあ私の知っている『サクヤ』のご先祖さまってことかしら?」

「マイの言うように、かなり以前の人ね。おそらくリリナにも面識があったに違いないわ」

「もしかしたら、最初のインセクトロイドは、かなり以前に作られて、その姿も随分違っていたかもね……」


「それをあなたたちに、調べてもらいたいのです。」

「パピリノーラ様!」

皆一斉に「ハニカムモニター」を覗き込んだ。その声の主「パピリノーラ」の姿が映った。

「最初のインセクトロイドについては、こう言い伝えられています」



虫人たちはたった一人の女王から生まれた。その女王の名は「リリナ」である。しかし王の名は伝えられていない。王が死ぬと女王「リリナ」は再誕をし、生まれ変わり再び次の王の妃となる。ルノクスの虫人たちの繁栄は、地球の蜂や蟻たちに似て、一人の女王と複数の王によって成り立っていた。偶生{ぐせい}には違いないが、地球の創神たちとは少し違う「(イブ)」だった。イブと呼ばれる「ルノクスの女王」が虫人を繰り返し生み出すことができるのは、「原始生命体」があってのことだった。まだ未熟な虫人が死ぬと再び「原始生命体」に戻る。新たな虫人が生まれるためには、過去の記憶を全て抹消する必要がある。その役目を持つのが「シュラ」という「殺奪の神」そしてその後、新たな命を与える役目は「生与の神」である「サクヤ」だった。『マルマ』とは男女神を一つの身に持つ「倶生(ともせい)」の神に他ならない。しかもそれぞれが独り立ちし、「偶生(ぐせい)」の神にもなり得た。マルマは「サクヤ」と「シュラ」この二神をルノクスに残し、遂にその実体を消滅させた。


当時「ダーマン」と名乗ったという『マルマ』の行った「余計なこと」(リリナの夫の再誕)で「リリナ」はついに消え去り、その際彼女の持っていた「生殺与奪の力」はルノクスから消滅する。虫人たちの新たな命のもとが一つ枯渇したのだ。リリナの娘「リカーナ」が宇宙を航行中「レムリア」艦内で「マンジュ」を産んだのは、外宇宙にあふれていた「マナとヨミの力」、新たな生命の力によるものだった。そして同じ頃、地球には「ノア」という「原始生命体」が生まれていた。その「原始生命体」を生んだ力は、『マルマ』が生まれながらに持っていた「生殺与奪の力」によるものだ。


「最初のインセクトロイドは未完成のものだった。私はそれを作ったのは『マルマ』と『リリナ』だと聞いている」

パピリノーラはモニターの中でそう言った。


(以下、『なっぴの昆虫王国 イブ編』より)


マルマとリリナによって新たな命が生まれた。しかしそれは感情のない、生き物に過ぎなかった。マルマは、次の瞬間、力尽き倒れ込むリリナを見た。リリナを抱き起こしマルマは言った。

「大丈夫か、リリナ」

「既に申し上げたでしょう、思い残すものはありません。それよりご覧なさい、まだこの子には「感情」らしきものがない。でもやがてはそれも芽生えることでしょう。その日までこの宇宙をさまようことになるかもしれません。いつかこの子が目覚め、本当の女神になる時、その時はマルマ、あなたの『不老不死』の力だけではない、私の『再誕』の力さえ自在に使う、女神として現れることに……」


そう言うとリリナは芥子粒のようになって弾け飛んだ。マルマは、虫人達から女王を奪ったことを後悔し、「それ」に「サクヤ」と名付け、ともにルノクスを離れた。


「不思議なことに、新たな虫人達は次第に生まれなくなっていった。わしとサクヤは間も無くルノクスを離れた、サクヤは宇宙をさまよううちに確かに変わっていった。しかしある日、リリナに劣らず美しい顔のまま、サクヤはただの抜け殻のようになった」


(以上、『なっぴの昆虫王国 イブ編』より)

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