77.サンドラ
サンドラ
火星を殲滅させようとする、シュラを止めようと『カグマ・アグル・サクヤ』は、外宇宙へと向かった。彼女はその途中、辺境の星で一体の『インクトロイド』を発見、そのインセクトロイドとともに彼女は戦い、ようやくシュラを破壊する。やがて彼女は母星『ゴリアンクス』に帰還したが、移住可能な星を求めて虫人たちはすでに脱出していた。「ゴラゾム」や「ビートラ」そして「リカーナ」の無事を信じながら、ついに彼女は力尽きる。
彼女は決断した、虫人を守るために彼女の脳を『インセクトロイド』に移植したのだ。なぜならば虫人たちが向かった『第三惑星』には彼女の作った『シュラ』の最後の一体がすでに到着していたのだ。
「もし、虫人たちが無事に移住していたなら、シュラはおそらくその時、眠っていたに違いない。そして何らかのきっかけで目覚めたとしたら、虫人は殲滅すべき『先住民』としてシュラに認識されるに違いない」
『カグマ』は、もしも『シュラ』が海中に到着した場合は、体の腐食を避けるために自ら休眠したのではないかと予測した。そしてもしその後に『シュラ』が塩水のない環境に置かれれば再び活動を開始するのではないかと、万が一『シュラ』が目覚めたなら、虫人は根絶やしにされる事に気付いたのだ。
(以下、『なっぴの昆虫王国 イブ編』より)
「このままにはしておけない、シュラを破壊しなければ、しかしどうやって……」
『シュラ』は『インセクトロイド』だ。『ゴラゾム』の細胞を使い創られた、鋼の身体を持つ。無敵の恐るべき相手となる。もはや体も不自由なカグマは回収したインセクトロイドを呼んだ。
「ここへおいで、サクヤ」
『シュラ三号』は回収後、『カグマ』によって創り変えられていた。その長い髪と細い身体からは想像出来ないが、最強のインセクトロイド『サクヤ』として永遠の美しさを持っていた。『カグマ』は新コマンドを書き込み、セットアップを行った。それが終了した頃、『カグマ』の疲労もピークに達していた。
「これでいい『サクヤ』、虫人を『シュラ』から守るのです」
「ハイ、『シュラ』ヲ必ズ破壊シマス。」
『カグマ』は残りのエネルギーを使い、自分の脳を『サクヤ』に移植するように手術プログラミングを入力すると『サクヤ』と連れ立って手術室に消えた。ベッド上、意識が遠のく中『カグマ』は初めてその思いを口にした。
「……『ゴラゾム』様、ずっとお慕い申しておりました。もし、科学者の娘に産まれなかったならばきっとこの思いを告げていたでしょう……」
緑の髪の『サクヤ』は不思議そうにその言葉を聞きながら、まぶたを閉じた。
「ノア、私に残るあなたの古い記憶も一緒に地球へ連れて行ってあげるわ」
カグマ・アグル・サクヤ、その体は激しい星間戦争により大部分の組織が再生不能になっていた。カグマ博士が「ノア・スカーレット・サクヤ」から抽出した記憶の元になる「核酸」から完成させた、最初のインセクトロイドはついにルノクスでその動きを止めた。
『サクヤ』のAIにカグマの記憶はデータ化され、高速で記憶させられていく。シナプスが体中に行き渡ると、ゆっくりとインセクトロイドは起き上がった。
「何モノカガ、ココニ侵入シテ来マス」
コンピュータの機械音が船内に響いた。
「ウィーン」
宇宙船に侵入してきたのは、ヒドラの出芽した姿、後のナナだった。サクヤが声をかけた。
「あなたは?」
きょろんと目を丸くし、少女は笑って答えた。
「ヒドランジア」
(以上、『なっぴの昆虫王国 イブ編』より)
彼女がインセクトロイドにつけたその名前は『サクヤ』それは本当に偶然だったのか、ルノクスの虫人『ガザ』は、『予言の書』を読んだという『サンドラ』からこう聞かされたと話した。
「ルノクスの再誕のためだと、そんなことでだまされるな。マンジュリカーナはこの結界を解くことなど決してせぬ。お前たちの命はこの中でしか生きることはできない。それが『生殺与奪』の力を持つマンジュリカーナなのだ。神の子『マルマ』様が持っていたその力を『リリナ』はイブの立場を利用して『リカーナ』に封印した。おかげで虫人はあの地球という辺境の星に住まざるおえなかった」
その話は間違いではない、そしてこう続けた。
「いいか、余計なことをせずともルノクスは復活したのだ。絶滅の後にこそ繁栄が起こる。この星に戻りわしはその確証を得た」




