74.特別任務
特別任務
「マイ、そろそろ私たちが、アマトの航行を手伝える距離じゃあなくなってきたわよ」
リンリンが言う通りだ。しかも「デュラン」の言った「アキナ大流星群」がもしもアマトを直撃すれば、無事には済まないだろう。
「どうやらそのようね、でもルノクスに残っていた『原始生命体』はアマトの外殻に使ってもうないし、あのインセクト・ロイドの骨格は巫女のストゥールを変形させたものに過ぎないし……」
「骸骨じゃあ、少し頼りないかしらね?」
「姉さん、それに由美子!」
「まったくあなたたちったら」
「シルティ」
シルティが苦笑いをしてこう言った。
「ではパピリノーラ様の言葉を二人に伝える。『デュランタ (テンテン)』『ゲンチアーナ(リンリン)』『サフラン(由美子)』そして『ヒドランジア(マイ)』、マンジュリカーナとの約束を破ったことは許されることではない。とりわけ『ヒドランジア(マイ)』は王女の立場を利用し、科学者カグマの『人工生命体』を作り出す理論を入手し、そのプロセスを巧妙にアマトにプログラミングした。その四人の罪は許しがたく懲罰五年とする」
「えーっ、五年も監禁されるの……」
「やっぱりね、リンリン仕方ない諦めましょう」
マイは覚悟していた。シルティはそれからも言葉を続けた。
「ただし、執行猶予を三年とする。またその間、特別任務を完了した場合には、本件の追求はしないものとする」
マイの瞳が輝いた。
「特別任務?」
「それについては私から話すわ」
由美子が語ったのは、ルノクスの不穏な動きだった。
「地球にいた時はわからなかったけれど、虫人たちにはある信仰がひそかに広がっていたの。それは何度も私たちが聞いたことだった」
彼女はそんな話を王国で聞いていた。
「私が『ラクレス』から聞いたのは、造物主『タオ』が『失敗作』の虫人を滅ぼそうとしていた、ということだった」
それはヨミとカブトが対峙したときのことだった。
(以下、『なっぴの昆虫王国』より)
「そうさ、お前達は大きな勘違いをしている。虫人という種の終わりが来たのではない。『ゴリアンクス』、『ルノクス』この両星は最初に現れた惑星だ。いや、正確に言えば『タオ』の命令でこのわし(ヨミ)と『マナ』の二人がそれぞれ作った星なのだ。しかし失敗作だった、不良品は壊さなければならない。そして星の寿命が決まったのだ。星とともに全て滅び去ることになっていた。その『タオ』の決定に『マナ』は逆らった。それが繁栄の中、ふくれあがっていたお前達虫人の数を減らすという事なのさ」
「それが俺たちの『生命エネルギー』を封印すると言う事か……」
「今、お前の目の前のわしは『猿型知的生命体』の一つ、『ヒト』。知的生命体はいまや宇宙に広がっている、トカゲ型の『キョウリュウ』海中に住む『カイリュウ』大空を住処とする『テンリュウ』まだまだある、その一つがお前達『ムシビト』だ。俺たち(ヨミとマナ)が作ったまっ赤な火の玉が冷えると、やがてそれはガスに囲まれた。その星でやっと生まれた生命体がいた、その名は『ミドリ』。『ミドリ』によって次々と変換された豊富な酸素。その中でお前達は生まれたのだ。回りには敵もいない、餌にもなる膨大な『ミドリ』。そこで繁栄した『ひ弱な生命体』が自ら星を飛び出す訳がない。他の生命体と比べるとかなり見劣りする『ムシビト』を『タオ』は星の寿命とともに予定通り滅ぼすつもりだった」
(以上、『なっぴの昆虫王国』より、カッコ内は補足)
「由美子、私もなっぴの『里香』様の記憶に、それに似たものがあるのを知っているわ」
それは、人間界に現れたマンジュリカーナとその娘「里香」の経験した、海底王国「アガルタ」での記憶だった。
「アガルタよりもさらに深い地にあるという『根の国』を収めていた『創神』のひとり『オロチ』が『カイリュウ』の力を得て復活したのが邪神『ヤマタノオロチ』だったの。彼はこの星に命を吹き込んだイオナのことを想っていた……」
テンテンはなっぴからそのことをよく聞かされていた。




