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約束の地  作者: 黒瀬新吉
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67/328

67.誤射

誤射



「艦長、オグマ、ザルバ両名入ります」

「よし」

二人は艦長室に入った。

艦長室に入った二人に、艦長の背中が言った。

「これが漂流中のカプセルロケットだ」


サリナはハニカムモニターに大きく映し出されていたロケットを見ていた。それは外宇宙から地球に帰還しようとしている「アマト」だった。ロケットを覆う丈夫な耐圧殻は、度重なる流星群との衝突により、その船体は凹凸が目視できるほど痛んでいた。


「……あんな小型のカプセルロケットで、外宇宙を航海しているとは信じがたいことです。あの痛みようでは生存者がいるとは、思われませんが……。艦長、艦に生体反応はございますか?」

「いや、ところがこれを見ろ二人とも」

「なんということだ、二人分の生体反応がある」

生体反応のスキャンデータを見てオグマが驚いた。

「さすがに映像までは送られてこないが、救援信号がずっと出されている。乗組員は二名いると」

「所属はどこのものだと申しておりますか」

「太陽系第三番惑星、地球の『アマト』だそうだ。乗っているのはマトバ・タイスケとマンジュ・コナツの二名だと言っている」


「あんなカプセルロケットの中に二名も生存者がいるとは、すぐには信じがたいですが」

ザルバは、彼自身の漂流中の過酷な体験を思い出した。

(あんなこと、もう二度と体験したくはない……)

「生体反応は冷凍カプセルの中からだ。彼らは何らかの事情で、眠ったまま自動操縦で地球に向かっている。救助信号はカプセルロケットを制御しているコンピュータからのものだ」

カザト・ベガ・サリナはこう言って話を締めくくった。


「直ちにアマトを救助し、ベガに収容いたします」

「ザルバ、頼むぞ。ルノクスのことも何か解るかもしれない」

「お任せください、カザト艦長」

ほどなく「ベガ」から救助艇が飛び立った。それを見送るサリナは「アマネ」もあのカプセルロケットのように、今も漂流を続けているかもしれないと思わずにはいられなかった。


「アマト」はオグマが想像したよりさらに一回り小さい船体だった。そして驚くべきことがあった。その船体の凹凸が目に見えて滑らかになっていく、そして救助艇が近づく頃には球体へと修復していた。

「ありえない、まるで生きているかのようだ」

「オグマ様、あのカプセルには自動修復機能でもあるのでしょうか、それとも我ら虫人の『ゴラゾーム』に似た細胞でコーティングされているのでしょうか?」

「ザルバ、あれを見ろ。アマトが動き始めた」

二人は「アマトが黒色惑星の引力に捕らえられた」と思っていたのが、実は間違いであったことに気づいた。アマトはゆっくり船体を回転させ、船首を上空に向けたのである。

「着陸するつもりか、ザルバ艦内の二人は目覚めたのか」

「いえ、全て自動プラミングの模様です。しかしあのままですと大地と衝突し、粉々になるでしょうし、何よりカプセルにはもう逆噴射用のエネルギーは残っていないはずです」


「惑星の引力により、次第に速度が速くなる。そろそろアマトに曳航(えいこう)用のアンカーを打ち込む用意をしろ」

「いつでも発射できます」

「よし、ザルバ。撃て、はずすなよ」

「もちろん、アンカー発射!」

アマトを安全に着陸させるためのアンカーが打ち込まれた。


「オグマ様、あれを……」

「ば、馬鹿なっ!」

アマトは複数の補助ブースターを使い直前で進路を変え「アンカー」の狙いをやり過ごした。オグマは驚いた。

「アンカーを拒否しただと……」

救助艇に警告ランプが灯った。

「ベガから緊急連絡、すぐここを離れよとの連絡です。キャステリアのタキオン粒子砲から「リノチウム」のカートリッジ弾が打ち出されたようです。このあたりを通過します、大変危険です」

「一体、キャステリアの解体班は何をやっている。味方を狙って砲撃するとは、仕方ないすぐに反転、退避する」


「許せ、地球のカプセルロケット。アマトよ」

オグマはそうザルバにも聞こえるように言った。しかし……

「オグマ様、機関に異常あり。制御不能、退避できません」

「何っ、何ということだ。このままではアマトともどもタキオン砲の直撃にあうぞ」

「着弾まであと30秒」


アマトがさらに加速し始めた。そしてついに制御不能の救助艇を抜き去ろうとした、ザルバがこう叫んだ。

「アマトから連絡、アンカーを再度発射せよ、我に続けと……」

「馬鹿な、それは確かにアマトからの連絡か」

「間違いありません、いかがいたしましょう」

「アンカーを発射しろ、ロケットを操縦しているのは「AI(人工知能)」を持つものかもしれない。カグマ博士の研究していたインセクトロイドに似たAIを持つ……」


「アンカー発射、タキオン砲の着弾まであと20秒」


連結した艦はタキオン砲の直撃を受けるとまばゆい光に包まれた。サリナはその様子を地上のベガで見続けていた。彼女の体は少し震えていた、しかし突然のことに瞬くこともできなかった。

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