68.ラスト・ミッション
ラスト・ミッション
「一体、誰の許可があって、キャステリアの粒子砲を撃った……」
サリナがキャステリアの館内に音声信号を響かせた。しかし返答はない、再度呼び出すとようやく答えたものがいた。
「……エネルギー弾、アマトへ照射完了。これでキャステリアの全てのミッションは終了する……」
「最後のミッションだと、キャステリアのコンピュータが自動的に動いたのか。コンピュータはアマトがやってくることを以前から知っていたのか」
やがてエネルギー弾の直撃を受けたアマトは光の壁を突き破りゆっくりその姿を現した。もちろんその後ろにはオグマとザルバの乗った救助艇を引き連れていた。
「助かった、あの強力なエネルギー弾をアマトが全て受け止めてくれたおかげだ。しかしそれにしてもアマトの損傷はほとんど見られないのはどういうことだ?」
「オグマ様、アマトがアンカーを切り離しました。ようやく救助艇の制御システムが復活いたしました。こちらも只今より着陸いたします」
「こちらもだと……、なんとアマトが逆噴射を始めている。そうかあのエネルギー弾はアマトにエネルギーを与えるものだったのか。ならばあのカプセルロケットの推進システムは、われらと同じルノチウムを使うものということなのか」
「おそらく、間違いないでしょう。そうでもなければ外宇宙の太陽系まで航行できるはずがありません」
「シリウス型エンジンを使っている……、カグマ様の開発したものだろうか」
「確かではありませんが、さらに改良し、小型化したものではないでしょうか。それを行ったのが搭乗する二人なら、きっと素晴らしい科学者と思われます」
「よし、ザルバ。アマトの誘導を始めろ、ベガまでの先導くらいは我々がさせていただこう」
「了解いたしました」
程なく眼下に巨大な赤い葉巻型のベガが見えた。その側に人影を見たオグマは思わず敬礼をしてしまった。失笑してザルバに着陸位置を指示した。
「カザト様がお出迎えだぞ、機首を少し持ち上げろ」
サリナは次第に近づくアマトを見ると、一刻も我慢できずにベガから外に出てきていた。
「あれが地球のアマトという名のカプセルロケット、しかもルノチウムを使うシリウス型エンジン……。彼らに会えば、カグマや母星のことが何か解るかもしれない。今あのロケットを操縦しているのはコンピュータだという、何がアマトに起こっているのかこの目で見なければならない……。」
それだけではない、サリナはキャステリアの「全てのミッションが完了した」というコンピュータの音声が気になっていた。
「アマトにエネルギーを与えるミッションは既にキャステリアに組み込まれていた。いつ、そして誰がそれを組み込んだのか、私の予想通りだとしたらあのアマトは私たち虫人と深い関わりがある」
サリナの脳裏には「カグマ・アグル・サクヤ」の顔が浮かんでいた。
「艦長、やはり誰も降りては来ません。いかがいたしましょう」
「オグマ、ザルバご苦労だった。アマトはAIが操縦しているというのは本当らしいな。艦内には入れそうもないのか?」
オグマはザルバに目くばせをしてサリナに返事をするよう促した。
「はい、ハッチらしきものが見当たりません。それにこの外殻はまるで、その……」
「生きている、そう言いたいのかお前たち二人は」
二人は頷いた。艦長のことだ、きっと「バカバカしい」と笑うに違いない。二人はそう思っていた、だが意に反しサリナは冷静にこう言った。
「どうやらお前たちの思う通りだ、私はこれが何なのか知っている。これこそ『原始生命体』に違いない」
「原始生命体、我ら虫人の根源ですか?」
「そうだ、もちろん私もこうして見るのは初めてだが……」
サリナはサクヤが繰り返し言っていたことを思い出した。
「サリナ、気にすることはないわ、その腫瘍は病気なんかじゃあない。それは遠い昔に二人のイブに与えられたという、虫人の根源『原始生命体』じゃあないかしら。そのヨミの紋章、ヒドラに似た触手が何よりの証拠だわ」
「そうね、でも小さいのは何故かしら。リリナが持っていたのはもっと巨大なものだったと聞いているんだけど」
「しぼんじゃったのかしらねえ、長い間に」
「まあ、リカーナったら。ははははっ」
思い出し笑いをこらえてサリナはアマトの船体に手のひらを当てた、次の瞬間サリナの体はアマトに引き込まれてオグマとザルバの視界から消えた。




