23.エスメラーダの最後
エスメラーダの最後
「ああ少しずつ俺の手に感覚が戻ってきた、痛てててっ!」
「うーん、こうなると少し厄介ね。イーラ」
ラグナの支配からオンネが解放されたのはいいが、激しい痛みが彼を襲った。
「ええ、ラグナは彼の体から外へ逃げ出したりしない。原始に生きていたラグナにとって、たとえわずかの亜硫酸ガスでも有毒だから」
「でも、取り除かなければ彼の体はやがてラグナに食い尽くされてしまう……」
「何をためらう、マーラ。なあに俺の体ごと切り取ったらいい。俺たちウミトカゲの再生能力を見くびってもらっては困る、足の一本や二本でもすぐ元に戻る、さあやってくれ」
「そうは言っても、ラグナがいるのはあなたの神経の集まっている場所だから」
ラグナはオンネの太い尾の付け根に移動していたのだった。それを切り落とす際の痛みは想像に絶するものだろう。だがオンネはこう叫んだ。
「さあ、早く切り落としてくれ。やらないなら俺の腹のこの人魚をすり潰すぞっ!」
「まあ、強がっちゃって。わかった、気をしっかり持ってなさいよ」
マーラが長い槍を大上段に構えた。
声を一つも立てずにオンネはその太い尾をマーラに切り取られた。バランスを崩したオンネは、そのまま前のめりに倒れしばらく動かなかった。尾の切り口から這い出したラグナは見る間に干からびて消え去った。そのラグナはすでに芋虫のように成長していた。
「これがラグナ・セカンド。危機一髪、なんとかなりそうね」
マーラのおかげで、オンネは死なずに済んだのだった。
「言うだけのことはあるわ、気絶はしているみたいだけれど……」
イーラがアロサウルスの顎を持ち上げて顔をのぞかせ、ようやくアガルタの地面を踏んだ。
「おかえり、イーラ」
「ただいま、あなた達だけ?」
「メーラはプテラと一緒に二人を探しに行ったわ、それにシャングリラ人魚の新しい手がかりも手に入れたわ」
「氷山の中に閉じ込められた人魚の話?」
「そう、そう」
ドーラが大きく頷いた、それを見てイーラがため息をついた。
「もしそれがシャングリラ人魚だとしたら、一体誰を守っているというの。エスメラーダ様の最後の姿、あなた達も見たでしょう。それにアクア・エメラルドはこの星を守るためにその力を使い果たし、遠く宇宙に散らばってしまった。エスメラーダ様、アクア・エメラルド……、それ以外の何をシャングリラ人魚が守っているというの」
「それはそうだけれど、でも……」
「もしかしたら、次のエスメラーダに関するものじゃあないのかい」
その声は、ようやく気がついたオンネの声だった。しかしその姿はアロサウルスではない、尾の短いウミトカゲの姿だった。
「兄貴のその体は……」
「ああ、どうやら俺は元のウミトカゲの姿に戻ったらしい」
「尾の再生が優先されるみたいね、オンネ」
しかし、それほどには気にしてはいないオンネだった。
「まあしばらくはこのままでいよう。今更、ゼロに逆らう気もない。お前たちの言うことをもう少し信じてみよう。だがな、これからもっと多くの人間が死ぬぞ、アガルタに世界中から人間が押し寄せてくる。ゼロはそれを俺たちに見せた、次の戦いは先の大戦とは違う、このアガルタに集まった、愚かな人間同士の殺し合いだ……」
「次の戦いですって、ゼロはなぜそれを知っているの。この星の未来がわかるとでも、まさかそんなことが?」
「ドーラ、ゼロは不老不死のインセクトロイドのプロトタイプ。おそらく人間では太刀打ちできない、それにこの星の人間に対して激しい憎悪を抱いている」
「その憎悪は先の戦いを終わらせた二人の巫女へのもの、そうなんでしょうイーラ」
「マーラ、なぜそれを……」




