19.閉ざされた洞窟
19.閉ざされた洞窟
頭上では、マーラたちがアロサウルスたちと戦っている、それを二人は知らない。戦いの際の地ひびきは。深い洞窟を震わせていたが、二人にはそれは海底地震の余震が続いてるのだと思っていた。
マイトとリンは、先に行く三人を追う。深海魚の発光器に似た青白い明かりの中、ようやく二人の目も慣れてきた。しかし亜矢達の姿はまだ見えない。
「もっと急いで、マイト」
「言われなくてもそうしてるさ、おっと危ない。気をつけないと滑りやすいぜ、リン聞いてるか?」
足元に気をつけていたマイトだが、それでも何度か転びそうになった。
「結構、揺れるな……」
「そうね、上で何か起きているのかしらね?」
もちろん、洞窟の外のマーラたちのことなど二人は知りもしない。その時、地鳴りのような音が聞こえてきた。
「何かしら、あの音は?」
「音、何も俺にはきこえないけど?」
「しっ、黙って」
マイトが小さく舌打ちして耳をすます。なるほど、かすかだが洞窟の奥から小さな音が耳に入って来た。
「本当だ、唸りの様な音がする」
「風かしら、ううん、まるでつぶやく様な人の声だわ」
「リン、先へ行ってみよう」
二人が進める一足ごとに、洞窟の傾斜は急になりはじめた、洞窟は間も無く行き止まりになり、ほぼ垂直の穴が目下に突然現れた。
「三人はここから飛び降りたのかもしれない」
マイトはリンにそう言うと、先に飛び降りた。
「マイト、気を付けてよ」
その穴を覗き込むリンには残念ながら、真っ暗で何も見えなかった。やがて中からマイトの大きな声が響いてきた。
「リーン、飛び降りても大丈夫だ。さあ、降りて来い」
「来いったってー、ムリ、ムリ」
(何があるのかわからないこんな穴の中なんて、とんでもないわ)
彼女は、暗闇が何よりも苦手だった。
「ズドーン、ガシャシャ…」
突然彼女の背後の壁が少し崩れた。
「ひゃつ!」
もう一度穴を覗くと、マイトがペンライトを振っているのが見えた。
「生き埋めになるくらいなら……」
天井の崩落がリンの左目の隅に映った。
「マイト、いくわよー」
リンはそう叫び、思い切ってその穴に飛び込んだ。
「ズドドドッ」
天井が崩落し、洞窟が完全に塞がれた。穴に飛び込んだおかげで二人は生き埋めにならずに済んだ。
「リン、待てよ。リンったら」
マイトが頬をさすりながらリンを追いかけて進んだ。その穴はもう一つ下層の洞窟につながっていた。
「全く失礼しちゃうわ、デリカシーのない馬鹿はダメね」
「なんで俺がビンタされなきゃならないんだ、ちゃんと受け止めてやったのに……」
「マイト、そのあとなんて言った?」
「リンの体重、違ってた?」
「はぁ、もう一発くらいたいか!」
マイトは余計な一言のために、リンの逆鱗に触れたのだった。
「全く失礼しちゃうわ、ウエストバッグの装備重量10キロあるんだからね」
(本当は5キロだけど……)
「この洞窟は何層もある、螺旋状になっているみたいだ。それにこのヒカリゴケと夜光虫たちはたった今踏まれたようだ。三人にそろそろ追いつくぞ」
「たて穴を使って私たちがショート・カットしたってことか」
「もう、ライトはいらないようね。不思議と少しずつ明るくなってきたみたい」
リンの言う通り、次第に洞窟内の明るさは増していき、数分も進むと洞窟内は月明かり程度の明るさになった。




