第五話『その道三十年以上のベテラン(初日)』
この姿だと、半日くらいしか保たないだろう……。
一度変身が解ければ、数分は再び変身できない。
――気をつけなければ。
あくまでもサイコスらしく、少し腰を曲げ、柔和な笑みを浮かべながら屋敷へ戻った……。
執事頭としての業務にあたり、伯爵を待つ。
待って、待って、待ち続けた……。
……けれど、
――その日、伯爵は屋敷に帰ってこなかった。
*
資料で書いてあった見取り図通り、使用人棟の一室がサイコスの自室だった……。
意図的に変身を解き、過ごしやすい姿へと戻った……。
なぜ戻ってこなかったのだろう?
サイコスの話し方的には、ちょっとしたら戻ってくるくらいの話だったのに……。
気にしてても仕方がない、体を休めるべきだ。
そう判断し、さっさと横になり目を閉じた。
*
またしても、ここへ来てしまった……。
目の前の少女は私を認識した途端、嬉しそうな嗜虐的な笑みで私を出迎えた。
「また任務なのね?あなたのだーいすきな任務ね?」
「今度はどんなヘマをするのかしらっ?
一体誰を苦しめるのかしらっ?」
「ルチア?それともフィガロ?」
そう言いながら目の前の少女は、いつのまにか隣にいた二人を楽しそうに燃やした……。
――ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……――
「仲良くなればなるほど、別れはつらくなる。」
「だったら……誰とも仲良くならなければいいのに……。」
*
いつも通りの最悪な目覚めの後、自分の状況を再確認……。
――いや、認識させられた。
木の温かみを感じる天井。
見慣れない部屋。
机とベッドと写真と植物……。
綺麗ながらも生活感を感じさせられる部屋。
ここはもう夢の中じゃない。
……サイコスの部屋だ。
――展覧会まで、あと四日。




