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リゼ  作者: 梅プリン
第一章
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第六話『伯爵の崇高なる考え』

まだ伯爵は帰らない。


――展覧会まで、あと三日。


まだ伯爵に会えない。


――展覧会まで、あと二日。


まだ伯爵は屋敷に戻らない。


――展覧会まで、あと一日……。


ついに、ついに今日、伯爵が戻ってきた。


玄関にいたメイドが私まで知らせてくれたので、急いで出迎えに向かった。


しかし、最初は誰もそれが伯爵だとは気づかなかった。


写真ではかなり豊満な肉体のはずだったが、今帰ってきた彼の体はガリガリに痩せていた。


――いや、やつれていた。


服には皺が寄り、髪も乱れている。

頬もこけており、まるで何日もまともに休んでいないようだった。


それなのに――。


「ただいま」


伯爵は、まるで数時間ほど外出していただけかのように笑った。


「旦那様! 一体どこをほっつき歩いていたんですか! 屋敷にいる全員に心配されてたのですぞ!」


サイコスらしく叱る。


伯爵は少し申し訳なさそうな顔をした。


「それは悪かったな。皆にも心配をかけてしまったようだ」


そう言って、周囲にいる使用人たちを見渡す。


「留守の間、何か問題はなかったか?」


……それは使用人の方が聞きたいと思うが。


それよりも――。


一体、何をしていたんだ?


あれほどまでに、やつれるなんて……。


そんなことを考えていると、伯爵がこちらを見る。


そして、目を見開いた。


「特にお前には心配をかけたようだな。

サイ……コス?」


疑問系で名前を呼ばれた。


まさか?


いや、考えすぎだろう。


「展覧会の準備をしていたんだ。皆にまだ見せるわけにはいかないからな」


伯爵はそう言って、少しだけ顔を曇らせた。


「……本当は、誰にも見せたくないんだがな。

無力な俺を許して欲しい……」


無力?


それに、そこまで徹底的に隠すのか……?


その絵とは一体なんなんだろうか……。


そう怪訝に思っていると、


「いや、本来皆にまだ見せる気はなかったんだが、サイコス……キミには手伝ってもらいたい」


伯爵はそう言って、私を見る。


「ついてきてくれ。会場へ向かおう」


渡りに船というやつだろうか。


しかし、なぜ私にだけ……?


やはり気づいているのか?


「はぁ。手伝うのはいいのですが、他の使用人も呼ばなくていいのですかな?」


「あぁ、問題ない。とにかく来てくれ」


そう言って、伯爵は歩き出した。


*


会場は領土内の、そこそこ大きいホールらしい。


「あの絵を取りに行くために少し遠出をしていたものでね。そのまま泊まりで、展示物の配置などを調整していたんだ」


一人で?

どうしてそうまで……。


なんて疑問を持ちながらも、促されるままにホールへ入る。


ホール内には大小様々な部屋があり、あちこちに骨董品が置かれていた。


伯爵はそれらを一つ一つ眺めながら、どこか嬉しそうにしている。


……なるほど。


資料にも書いてあったが、本当に骨董品が好きらしい。


「それで、私は何を手伝えばいいのですかな?」


伯爵は目を細める。


茶色の目が、こちらをじっと見つめる。


「あぁ、そういえばそんな口実だったな」


……?


「口実とはどうい――」


「それで? キミは誰だ?」

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