↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノンデリ男の敗北 ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~  作者: アル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/45

第24話「俺は毎日でもデートしたい。」

十一月上旬。

凛と付き合い始めてから、一か月以上が過ぎた。

休日はほとんど毎週デートをして、講義の時間が合えば平日も一緒に昼飯を食べた。

付き合う前より会う回数は増えたはずなのに、会えば会うほど、もっと会いたくなる。


それから、俺たちは大学ですっかり有名なカップルになっていた。

原因は分かっている。


十月上旬の昼休み。人の多い中庭で、俺が凛を抱き上げて、大好きだと叫んだからだ。

その翌日、講義室に入った途端、同じ経済学部の男子に囲まれた。


「佐藤、冬城さんと付き合ったってマジ?」


「マジ。」


「お前、告白して振られてなかった?」


「振られたけど、今は付き合ってる。」


そう答えると、別のやつが身を乗り出してきた。


「中庭で抱き上げて、大好きって叫んだって話もマジ?」


「それもマジ。」


「なんでちょっと得意げなんだよ。」


後ろの席に座っていた田中が呆れた声を出した。


「普通、そこは反省するところだろ。」


「凛ちゃんには怒られたよ。」


「冬城さんにじゃなくて、周りの人間に反省しろ。昼休みの中庭だぞ。」


でも、凛と付き合っているとみんなに知られること自体は、全然嫌ではなかった。

むしろ、もう誰も凛を狙わないだろうと思うと安心した。


それから一か月近くたっても、その話題は消えなかった。



十一月に入ったある日の昼休み。

俺が凛と一緒に学食へ向かっていると、今度はサークルの知り合いたちに呼び止められた。


「あ、噂の二人だ。」


女子の一人が俺たちを見て笑った。


「本当に付き合ったんだね。」


「うん。」


俺が答える横で、凛は少し居心地が悪そうに視線をそらした。


「冬城さん、佐藤でいいの?」


「それ、どういう意味ですか。」


凛が真顔で聞き返す。


「だって、顔はいいけどノンデリじゃん。」


「それは知っています。」


「凛ちゃん、そこは否定してよ。」


「事実を否定する必要はないよね。」


周りから笑い声が上がった。

俺は納得できなかったけれど、凛も少し笑っていたから、まあいいかと思った。


「じゃあ、冬城さんは佐藤のどこがよかったの?」


そう聞かれた途端、凛の笑みが消えた。

みんなの視線が一斉に集まり、凛は困ったように俺を見上げた。


「俺も聞きたい。」


「夏樹くんまで便乗しないで。」


「だって気になるし。」


凛はしばらく黙っていた。

このまま答えないと思ったとき、小さく息をついた。


「……裏表がないところ。」


「ほかは?」


「まだ聞くの?」


「聞く。」


凛は俺を見た。

その頬が少しだけ赤くなる。


「一緒にいると、楽しいから。」


今度は、俺が黙る番だった。


「凛ちゃん!」


嬉しくなって腕を広げると、凛はすぐに一歩下がった。


「大学では抱きつかないで。」


「まだ何もしてないじゃん。」


「しようとしてたよね。」


「佐藤、完全に尻に敷かれてるじゃん。」


また笑われたけれど、今度は何を言われても気にならなかった。

一緒にいると楽しい。

その言葉だけで、しばらく生きていける気がした。




その週の金曜日の夜、凛からメッセージが届いた。


『日曜日、行きたいところがあります。一緒に行きませんか』


いつも誘うのは俺だった。


毎週のように会っているのに、凛のほうから誘われただけで、すぐに電話をかけたいくらい嬉しくなった。


でも、それをしたら重いと思われるかもしれない。


三分悩んでから、『行く。どこでも行く』と返した。


『まだ場所も言ってないけど』


『凛ちゃんと一緒ならどこでもいい』


少しして、呆れた顔をしたスタンプが返ってきた。

それすらかわいく見えて、画面を保存した。


日曜日、凛が連れていってくれたのは、紅葉が見頃を迎えた庭園だった。

赤や黄色に色づいた木々の間を、二人で並んで歩いた。

前に俺が紅葉を見に行きたいと言ったことを、凛は覚えていたらしい。


「凛ちゃん、こっち見て。」


凛が振り返った瞬間、スマホを向けた。


「勝手に撮らないで。」


「紅葉と凛ちゃん、すげえ合う。」


「ちゃんと紅葉も見てる?」


「見てるよ。」


「さっきから私ばかり見てるけど。」


「紅葉より凛ちゃんのほうがかわいいから。」


「そういう比較は、紅葉に失礼じゃない?」


「紅葉って傷つくの?」


「知らない。」


そっけなく返しながらも、凛の口元は少し緩んでいた。


園内では、家族や恋人同士が紅葉を背景に写真を撮っていた。


俺も凛と撮りたかったけれど、大学であれだけ注目されたあとだ。今日は静かに過ごしたいかもしれないと思い、言うのをやめた。


すると凛が足を止めた。


「写真、撮らなくていいの?」


「撮っていいの?」


「せっかく来たから。」


近くにいた人に頼み、紅葉を背に二人で並んだ。

撮ってもらった写真の中で、俺はいつも通り笑っていた。隣の凛も、ほんの少しだけ笑っていた。


挿絵(By みてみん)


「あとで送って。」


「うん。待ち受けにしていい?」


「好きにすれば。」


許可が出たので、その場で設定した。


庭園を出たあとは、凛が気になっていたカフェへ向かった。

期間限定のモンブランを前にした凛は、今日一番真剣な顔をしていた。

その姿を眺めているうちに、昼休みの言葉を思い出した。


「ねえ、凛ちゃん。」


「なに?」


「俺と一緒にいると楽しいんだ?」


凛の手が止まった。


「それ、いつまで言うつもり?」


「一生。」


「やめて。」


「だって、嬉しかったから。」


凛はフォークを置き、窓の外へ顔を向けた。


「……楽しくなかったら、休日のたびに出かけないよ。」


「大学で会うのと、デートするのは違う?」


「違うでしょ。」


「俺は毎日でもデートしたい。」


「知ってる。」


否定されなかった。


それどころか、テーブルの上に置いていた俺の手に、凛の指先がそっと触れた。


「私も今日も会いたかったから、誘ったの。」


その一言で、大学中に付き合っていると知られたときより、ずっと浮かれた。


帰り道、俺はさっそく次の週末のことを考えていた。


「凛ちゃん、来週はどこ行く?」


「もう来週の話?」


「だって、早く決めたほうがいいじゃん。」


「日曜日なら空いてるよ。」


「土曜日は?」


「空いてるけど。」


「じゃあ、両方会おうよ。」


凛は呆れたように俺を見たあと、つないだ手に少しだけ力を込めた。


「……どちらか一日だけ。」


「じゃあ、長いほう。」


「どっちも一日は同じ長さだよ。」


付き合う前は、凛と一度会えただけで嬉しかった。


今では一日では足りないと思っている。


たぶん、俺はこれからも、どんどん欲張りになっていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。