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ノンデリ男の敗北 ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~  作者: アル


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第21話「俺、ずっと負けっぱなしだわ。」

「今は、佐藤くんが好きです。」


凛がそう言った。


「…………。」


何も言えなかった。


たぶん、人生で初めてだった。


思ったことはすぐ口に出る。

言わなくていいことまで口に出る。


そのせいで田中には何度も怒られたし、凛にも何度も呆れられた。


なのに。


「……佐藤くん?」


凛が俺を見上げた。


「……今、好きって言った?」


「はい。」


「俺を?」


「他に誰がいるんですか。」


「…………。」


また黙った。


なんか、この会話。


前にもした気がする。


あのときは俺が好きだと言って、凛に振られた。


『今、振った?』


『はい。』


『俺を?』


『他に誰がいるんですか。』


ほぼ同じ会話なのに、結果が真逆だった。


「佐藤くん?」


「待って。」


「はい。」


「今、めっちゃ頑張ってる。」


「何をですか。」


「喋るのを。」


凛が目を瞬いた。


「佐藤くんが?」


「俺が。」


自分でも信じられなかった。


女の子に好きだと言われるのは初めてじゃない。

告白されたことだって何度もあった。

どう返せばいいのか、考えなくても言葉が出てきた。


でも凛には、いつもそういうのが通用しなかった。


初めて会ったときも。

告白したときも。

連絡先を交換したときも。


俺の予想なんて、簡単に外れてきた。


そして今も。


「……じゃあさ。」


やっと声が出た。


「はい。」


「俺と付き合ってくれる?」


「そのつもりで言いました。」


「…………。」


「また黙るんですか。」


「いや、だって。」


思わず顔を手で覆った。


やばい。

めちゃくちゃ嬉しい。


「俺、今たぶん人生で一番嬉しい。」


「大げさですね。」


「大げさじゃないって。俺、凛ちゃんに一回振られてんだよ?」


「知っています。振ったのは私なので。」


「そうだけど。」


なんだか笑えてきた。

ずっと俺が追いかけていた。


好きだと言ったのも俺。

振られても諦めなかったのも俺。


それが今、凛から好きだと言われている。


「凛ちゃん。」


「はい。」


「好き。めちゃくちゃ好き。」


「知っています。」


凛の目元が少しだけやわらかくなった。

それだけで、また嬉しくなる。


「じゃあ、今日から彼女ってことだよな。」


「そうですね。」


「やば。めっちゃ嬉しい。」


「さっきも聞きました。」


「何回でも言うよ。俺、凛ちゃんのこと――」


言いかけたときだった。

凛が一歩、俺に近づいた。


「ん?」


俺が少しかがむと、凛は何か言いたそうに口を開いて、また閉じた。

それから少し迷ったあと。

俺の頬に、ほんの一瞬だけキスをした。


挿絵(By みてみん)


「…………。」


凛はすぐに離れた。

顔が赤かった。

たぶん、俺も同じくらい赤かったと思う。


「……佐藤くん?」


「…………。」


「佐藤くん。」


「……今、何した?」


「聞かないでください。」


「いや、待って。無理。ちょっと待って。」


「何が無理なんですか。」


「いろいろ。」


告白されて、何も言えなくなった。

やっと喋れるようになったと思ったら、今度はこれだった。

この子にはいつもそうだ。


俺の予想できないことをしてくる。


「……俺、ずっと負けっぱなしだわ。」


「何の話ですか。」


「凛ちゃんに会ってからの話。」


「私と何か勝負していましたか?」


「してないけど。」


「では、負けていないのでは?」


「いや。負けてんの。」


「よく分かりません。」


「俺は今、めちゃくちゃ分かった。」


俺は笑った。


「俺、こんなに誰かに調子狂わされたことない。」


「私、佐藤くんを振り回した覚えはありませんが。」


「そういうとこ。」


「どういうところですか。」


やっぱり凛は分かっていなかった。


モテるとか。

恋愛経験が多いとか。

女の子の扱いに慣れているとか。

そんなの、凛の前では何の役にも立たなかった。


好きになったのは俺が先。

振られたのも俺。

追いかけたのも俺。

嫉妬したのも俺。


それで最後には、たった一言で何も言えなくされて。

やっと立ち直ったと思ったら、今度はたった一回のキスで、また何も言えなくされた。

思ったことを何でも口にしてきた俺が。

凛の前でだけ、何度も言葉をなくした。


……ああ。


俺、完全に負け続けてんだ。

たぶんこれからも、凛には勝てない。

そのときの俺は、そんなことを考えていた。


まあ――。


付き合ってからのほうが、もっと負けることになるんだけど。



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