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ノンデリ男の敗北 ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~  作者: アル


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第19話「俺のこと、知ろうとしてくれてる?」

「どこに行きますか?」


ランチの会計を終え、店の外へ出てから、凛にそう言われて、俺は少し考えた。


俺の行きたいところ。


「……ゲーセン?」


「なぜ疑問形なんですか。」


「いや、俺いつも友達とゲーセン行くから。」


デートっぽくはない気がする。


「いいですよ。」


「マジ? じゃあ行こ。」


駅前のゲームセンターは、夏休みだからか結構混んでいた。


俺は普段、田中や小川と来ると適当に対戦ゲームをしたり、音ゲーをしたりしている。


「これ、俺得意。」


「そうなんですね。」


「見てて。」


そう言って始めたのに。


「……負けましたね。」


「今日は調子悪い。」


「便利ですね、その言葉。」


「凛ちゃんもやる?」


「やりません。」


五分後。


「……もう一回やります。」


「ハマってんじゃん。」


「今のは納得できないので。」


意外と負けず嫌いだった。


しかも真顔で何度も挑戦するから面白い。

凛ちゃんのこういうところ、まだ知らなかったな。


しばらく遊んで外に出ると、まだ日は高かった。


「次、ちょっと歩くんだけどいい?」


「いいですよ。」


駅前から二十分くらい歩いた。

坂道を上っていくと、凛が俺を見上げた。


「佐藤くん。」


「ん?」


「まだですか。」


「もうちょい。」


坂を上りきった先には、小さな公園があった。


高台にあるから、街がよく見える。


「着いた。」


ちょうど太陽が傾き始めていた。


凛が景色を見て、少し目を見開く。


「……綺麗ですね。」


「でしょ?」


スマホを取り出して、夕日にカメラを向けた。


「写真、好きなんですか?」


「うん。綺麗な景色とか自然撮るの好き。」


「意外ですね。」


「俺、どう思われてんの。」


笑いながら、スマホの写真を見せる。

海とか、桜とか、夕焼けとか。

旅行先で撮った山とか。


「結構撮ってるでしょ。」


「本当ですね。」


凛は一枚ずつ、思っていたより真剣に見ていた。


「こういうのが好きなんですね。」


「うん。」


スマホを返すと、凛はもう一度夕日のほうを向いた。


黒い髪が、夕日に照らされていた。

綺麗だな、と思った。

景色じゃなくて。

凛が。


気づいたら、そのままシャッターを押していた。


挿絵(By みてみん)


カシャ、と音が鳴る。

凛が振り返った。


「今、勝手に撮りましたね。」


「うん。」


「消してください。」


「えー。」


「なぜ嫌そうなんですか。」


「綺麗だったから、つい。」


凛が黙った。


「……まあ、いいですけど。」


「いいんだ。」


思わず笑った。


「うれしっ。」


「あなたは本当に、すぐ感情が言葉に出ますね。」


「そう?」


「出ています。」


「まあ、隠す必要ないし。」


俺は凛を見た。


「俺、まだ凛ちゃんのこと好きだし。」


凛が止まった。


「っていうか、前よりもっと好きになってる。」


「……そういうこと、よく平気で言えますね。」


凛は夕日のほうへ顔を戻した。


頬が、少し赤かった。

夕日のせいだと思った。


――たぶん。


少しして、凛が口を開いた。


「佐藤くん。」


「ん?」


「まだ時間ありますか?」


「あるよ。凛ちゃんのためならいくらでも。」


「そういうのはいいです。」


「本当なのに。」


凛は俺を見た。


「夕飯、食べませんか。」


「食べる。」


「即答ですね。」


「凛ちゃんから誘ってくれた時点で行く。」


「……今日、誕生日ですよね。」


「うん。」


「なので、その……お祝いです。」


一瞬、言葉が出なかった。


「いいの?」


「嫌ならやめますが。」


「行く。めちゃくちゃ行く。嬉しい。」


連れていかれたのは、高層階にあるレストランだった。

窓際の席から、街の明かりが見える。


「すご。」


思わず窓に近づいた。


「めっちゃ綺麗。」


「……よかったです。」


「ここ、凛ちゃんが選んだの?」


「はい。」


「なんで?」


凛は窓の外を見た。


「綺麗な景色が好きだと聞いたので。ここなら夜景が見えるかと思って。」


「……俺がさっき言ったから?」


「はい。」


俺は凛を見た。


「何ですか。」


「いや。」


なんか、めちゃくちゃ嬉しかった。

凛の好きなものを知るのは楽しい。

何が好きで、何が嫌いで、何をすると笑うのか。

ずっと俺ばっかり知りたがってると思ってた。


でも。


「凛ちゃん。」


「はい。」


「俺のこと、知ろうとしてくれてる?」


凛の動きが止まった。


「……午後は佐藤くんの行きたいところに行く約束だったので。」


「そっか。」


やっぱ違うか。

そう思ったのに。

凛は少しだけ目を逸らしていた。


もしかして。


ほんの一瞬、そんなことを考えた。

でも、俺は一回ちゃんと振られている。


『私は好きではありません。』


あれだけはっきり言われたのに、ちょっと優しくされたくらいで期待するのは都合がよすぎる。

だから、その日はそれ以上聞かなかった。


ただ。


今日一日で、俺は凛のことをまたいくつか知った。

意外と負けず嫌いなこと。

俺の撮った写真を真剣に見てくれること。

俺の誕生日を祝ってくれること。


それだけじゃなかった。


凛も、俺のことを知ろうとしてくれていた。


――ような気がした。


その答えを知ることになるのは、もう少しだけあとだった。



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