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ノンデリ男の敗北 ~モテる俺が法学部女子に告白したら「私は好きではありません」と普通に振られた~  作者: アル


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第16話「好きな子から連絡来た。」

八月上旬。

俺は都内にある会社の一日インターンに参加していた。

田中たちと話したあと、なんとなく就活サイトを眺め、目についた会社へ応募した。

その会社に強い興味があったわけではない。

大学三年生の夏休みだし、一回くらいは参加しておいた方がいいだろう。

その程度だった。


会議室には俺と同じような大学三年生が三十人ほど集まっていた。

午前中は会社の説明と仕事体験。


休憩に入ると俺は真っ先にスマホを確認した。

友達から何件か通知は来ていたが、凜からはまだ来ていなかった。


午後からは五人のグループに分かれて、新しいサービスを考えるグループワークが始まった。


「とりあえず、自己紹介しない?」


グループで集まると、俺から口を開いた。

大学と学部、参加した理由。

一人が話せば次のやつにも話を振る。


「経営学部なら、こういうの詳しそうじゃん。どう思う?」


「え、私?」


「うん。俺、経済学部だけど経済のことそんなに詳しくないから。」


「それ、堂々と言っていいの?」


向かいに座っていた女子が笑った。


「大学にはちゃんと通ってるから大丈夫。」


「何が大丈夫なの?」


さっきまで固かった空気が、少しだけやわらいだ。

意見が出始めると、今度は話がまとまらなくなった。

積極的に喋るやつが二人。

それを聞いているだけのやつが二人。

俺はホワイトボードに出てきた案を書きながら、まだ発言していない男子を見た。


「さっきから考えてそうだけど、なんかある?」


「え?」


「違った?」


「いや……一応。」


そいつが出した案は、意外とよかった。


「それ、めっちゃいいじゃん。それ中心に考えない?」


そこからは早かった。

出てきた案をまとめ、時間内に発表資料を作る。

最終発表は、俺が担当することになった。

人前で喋るのは苦手ではなかった。

というより、たぶん得意なほうだった。


発表が終わると、担当の社員からも「チーム全体の意見をうまくまとめていましたね」と褒められた。


「佐藤くん、就活余裕そう。」


席に戻ると、同じグループの女子に言われた。


「そう?」


「初対面の人と、あんなに普通に喋れる?」


「喋れる。今日でもう友達じゃん。」


「距離の詰め方が怖い。」


そう言いながら、その子は笑っていた。

俺も笑いながら、机の上に置いていたスマホに目を落とした。


通知が三件。

サークルのグループと、田中と、バイト先からだった。

凛からは来ていなかった。


別に、急かすつもりはなかった。

空いている日が分かったら連絡すると、凛は言っていた。

忙しいなら仕方がない。

分かっていたのに、休憩に入るたび、俺はスマホを確認していた。


インターン終了後、同じグループのやつらと駅前の店へ行った。

一日一緒にいただけなのに、全員すっかり打ち解けていた。


「連絡先交換しようよ。」


「佐藤くん、グループ作って。」


「はいはい。」


五人分の連絡先が増えた。

そのあとも、別のグループだったやつに声をかけられ、さらに何人かと交換した。

普段なら、こうやって知り合いが増えるのは楽しかった。


実際、その日も楽しくなかったわけではない。

ただ、スマホの画面を開くたびに探してしまう名前は、一つだけだった。


凛ちゃん、まだかな。


俺が何度目か分からないスマホの確認をしたところで、隣の男子が笑った。


「佐藤、さっきからスマホ見すぎじゃない?」


「連絡待ってんの。」


「彼女?」


「違う。」


即答すると、向かいの女子が身を乗り出した。


「好きな子?」


「うん。」


「そこは隠さないんだ。」


「隠す必要なくない?」


「どんな子?」


「小さくて、黒髪で、かわいくて、頭よくて、俺に冷たい。」


「最後のは大丈夫なの?」


「大丈夫。そこも好きだから。」


全員に微妙な顔をされた。

食事が終わって店を出ると、誰かが二次会へ行こうと言い出した。

時刻はまだ九時前だった。

俺も行くつもりで、どこにするか話していたとき。

手に持っていたスマホが震えた。

画面に表示された名前を見て、足が止まった。


凛だった。


『予定が分かりました。八月十六日なら空いています。佐藤くんの都合はいかがですか?』


事務的な文章だった。

でも、俺はしばらくその画面を見つめた。


「佐藤、行かないの?」


先を歩いていたやつに呼ばれた。


「ごめん。俺、帰る。」


「え、急だな。」


「好きな子から連絡来た。」


「分かりやすっ。」


笑われたが、気にならなかった。

さっきまで行くつもりだった二次会が、一瞬でどうでもよくなっていた。

俺は少し離れた場所へ移動すると、凛に電話をかけた。

数回の呼び出し音のあと、凛が出た。


『……もしもし。』


久しぶりに聞いた声だった。

それだけで、勝手に口元がゆるんだ。


挿絵(By みてみん)


「凛ちゃん。」


『はい。メッセージ、見ましたか?』


「見た。だから電話した。」


『返信でよかったのでは?』


「久しぶりに声聞きたかったから。」


電話の向こうで、凛が黙った。


『……そうですか。』


「うん。十六日、俺も空いてる。」


『分かりました。では——』


『凛、夏樹?』


凛の声に、美奈の声が重なった。

少し離れたところから、詩織ちゃんの声も聞こえた。


「美奈と詩織ちゃんもいるの?」


『美奈と詩織も、十六日なら空いているそうです。』


「あ、三人とも来るんだ。」


『そのつもりでしたが……違いましたか?』


俺は一瞬だけ黙った。


どうやら最初から、三人で来るつもりだったらしい。

できれば、凛ちゃんと二人で会いたかった。


『佐藤くん?』


でもここで「二人がいい」と言えば、凛は警戒するかもしれない。


「じゃあさ、田中と小川も呼んで、またみんなで遊ばない?」


『私は構いません。二人にも聞いてみます。』


電話の向こうで、美奈が「賛成」と言った。

詩織ちゃんも大丈夫らしい。

俺はその場で田中と小川にメッセージを送った。

二人からの返信はすぐに来た。


『行く。』


『詩織が行くなら。』


小川の返事を見て、俺は少し笑った。


「二人とも大丈夫だって。」


『では、行く場所を決めないといけませんね。』


「俺、凛ちゃんがいるならどこでもいい。」


『いちばん困る回答です。』


久しぶりに聞いた凛の冷たい言葉さえ、なんだか嬉しかった。


新しく何人と知り合っても。

何件通知が届いても。

俺が待っていたのは、凛からの一通だけだった。


二人きりではなくなったのは、少し残念だった。

それでも、ようやく凛に会える。


六人で会えるだけでも十分だった。

そう思っていたはずなのに。


十六日、俺は自分が思っていたよりずっと欲張りだと知ることになった。


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