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第二部:共有の物語 ―内省が言葉になる― 第12話 「光莉のゼミ発表」

数日後、光莉は大学のゼミで発表を行っていた。テーマは「言葉の連鎖とその影響について」。彼女はカフェ「あおい」で出会った人々のことを話した。名前は出さずに、ただ、言葉が誰かに届き、誰かを動かし、また誰かに届く——その連鎖の仕組みを、静かに語った。


「私はずっと、『わからない』ことを放っておけませんでした。答えを出さないと気が済まなかった。でも、この数ヶ月で学びました。『わからない』まま、そこにいることも、誰かの支えになる。言葉を受け止めるだけでも、意味がある。そして——」


彼女は少し間を置いた。


「その『何か』は、もしかしたら、私たち自身なのかもしれません。ここで話した言葉が、誰かに届いて、また戻ってくる。その繰り返しで形になったもの。個人じゃない。誰か一人の『核』じゃない。ここに来た人たちの、言葉の集合体。それが——」


教授が口を開いた。


「興味深い仮説ですね。証明は難しいでしょうが、人は誰かの言葉に触れることで変わる。それは事実です。あなたの言う『連鎖』は、実際に起きていることなのでしょう」


光莉はうなずいた。そして、少し躊躇いながら続けた。


「私はこれまで、研究という名目で、人の言葉を『分析』してきました。でも、それは『受け止める』こととは違うのかもしれません。分析は、どこかで相手を客体化してしまう。でも、Eさんは、私の言葉をそのまま受け止めてくれました。答えを出さずに、ただそこにいてくれました。


 私は、研究することと、人を受け止めることの両立を、これから探していきたいと思います。わからないことを放っておけない自分を否定せずに、でも、誰かの言葉を『分析』だけで終わらせない——そんな研究者になりたい」


教授は優しく微笑んだ。「それが、あなたの『核』の新しい形かもしれませんね」


光莉は、少しだけ胸が軽くなった気がした。

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