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第二部:共有の物語 ―内省が言葉になる― 第11話 「公園のベンチで」

秋のある日曜日、沙織は公園のベンチでスケッチをしていた。紅葉が始まった木々、散歩する親子、ボール遊びをする子供たち。いつものように、通り過ぎる人々を何となく眺めている。


隣のベンチに、一人の老人が座っていた。背中が少し曲がり、手には古びた杖。彼はカフェ「あおい」の方を見つめている。


「……あのカフェはな」


沙織は顔を上げた。老人は誰に話すでもなく、穏やかな目で遠くを見ている。


「昔はな、ここは噂の村って言われてたんだよ」


「噂の村?」


「呟いたことが、誰かに届く。それが噂になって、また誰かに届く。だから昔は、そんな場所を訪れる人もいたらしい。あの辺だったかな」


杖でカフェ「あおい」の方を指す。


「あの場所、昔は神社だったんだ。戦争で焼けたらしいけどな。そんな話を聞いて、来る人もいるとか、いないとか」


杖で地面をつつく。


「でもな、全員がそうなるわけじゃない。逆に響くこともある。何も起きないこともある。なんだろうな……呟いて、立ち去る。それだけなのに」


沙織は尋ねた。「おじいさんも?」


老人は少し微笑んだように見えた。


「さてと」


立ち上がり、ゆっくりと去っていく。沙織はその後ろ姿を見送った。

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