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魔法を信じるかい? ― マッドサイエンティストの異世界旅行  作者: 黒々猫
■■■■■■ 第8章 マッドは厄介事の代名詞
98/103

■■■ Step075 闇深き黒猫と罪深き港町

「思った通り、やっぱりこっちに来たわね」


カラーを捕まえ損ねたばかりだというのに、何事もなかったかのように話しかけてくるミフル。厚顔無恥にも程があるな。


「やっぱり...とは?」

「爆発と女の悲鳴だったら、あんたは女の悲鳴を優先するだろうってね」


本当は人手の関係でこうなったのだが、まぁ思い込ませておこう。


「じゃあ、さっきの悲鳴はミフルって事か?」

「おや?嬉しいね。私の名前を憶えていてくれたのかい?あら?そう言えば、名乗ったかしら?」


本当は、あんな可愛らしい悲鳴はミフルだったのか?という意味だったんだが、いちいちツッコむのも面倒だな。


「砦でテキナと対峙した時に、テキナがあんたの名前を叫んでたぞ」

「あぁ、あの時...よく覚えてたわね」

「3階のバルコニーから華麗に飛び降りて逃げ出した、黒猫のような女性は忘れないよ」

「あ~...だから、夜襲の時も私に気が付いたんだ」


嫌味のつもりで「逃げ出した」という所を強調して言ったんだが...ちっとも通じないとは...ニアラブ様以上にやりにくいな。


「最初の出会いの時に、手強い事は分かってたからな」

「あんたが弱いだけよ」


あんたが強すぎるんだよ!!

てか、舌戦でも分が悪いな...。


「...おっしゃる通り...で、どうして私が貧民街に来ると分かったんだ?」

「分かってたんじゃないわよ?あんたが駐屯所から出て、貧民街に入ったのを見たからね。それだけ」


なるほど。監視されてたって事か。


「じゃあ、ここからどうするつもりなんだ?」

「前も言ったけど、あんたは邪魔なの。そして、今はエバン様の仇でもあるわ」


確かに、ミフルから見れば私は仇だろうな。しかし、エバンは自分が何をしているのか分かっていた。国王に反逆したのだから死刑になる事は想定していたのだ。なんとなくだが、テキナもミフルも「責任」という事を理解していないのだろう。

だが...それを言ったところで通じないだろうな。だからこそ、私がエバンに、テキナとミフルに言い残す言葉が無いかを聞いた時、迷いなく「無い」と答えたのだろう。


それよりも確認しておかなければならない事がある。


「その為にわざわざカタランスまで?というか、どうしてカタランスで待ち伏せが出来たんだ?」

「それは教えてやれないね~」


じゃあ、こちらから種明かしをしてやろうか。


「...町長から情報が漏れた...のではない。エルセリア砦の兵士の中に裏切り者がいるんだ。そこからカタランスに情報が流れたんだ」


それを聞いてもミフルの声の表情は変わらない。が、気配が変わった。


「...へぇ~...じゃあ、砦の兵士を全員調べないとねぇ~...安心出来ないよ~」


現在エルセリア砦に常駐している兵士や騎士は約500名。この全員を調べるのは不可能だ。

だが、砦の中枢の情報に触れる機会のある騎士は限られている。なので、全員を調べる必要は当然ない。

なので、砦内に設置した防犯カメラを解析し、怪しい行動をしている騎士をピックアップし、そこから更に調査を行ったのだ。


「裏切り者は3名。キロト・ムクスホ。コバル・ネベプット。リクトル・ダワブ」

「...」

「この3名は元々テキナの直属部隊の騎士だった。もっとも直属部隊の騎士は他にも残っている。だが、あんたの夜襲の前後、そして今回のカタランス訪問で動き過ぎたんでな。尻尾を掴むのは簡単だったよ」


ちなみに、ミフルの夜襲の際にはまだ防犯カメラは設置していなかったので、ここは個別に事情聴取をしたのだ。


「あんた...やっぱり優先的に消さないとダメね」


さらに気配...殺気が増した。そろそろ時間稼ぎも限界だな。


だが、種明かしの内容は合っていたようだ。

この3名については、まだ泳がせている。この後はどうしようか...。下手に騎士を解任すると後々面倒かも知れないので、思い切り肉体労働をしてもらおうかな。


「ん?気に障ったのか?意外と短気だな」

「ここまでちゃんとあんたの話を聞いてあげたんだ。気は長い方だと思うけど?」

「あ~...確かに」


時間稼ぎを分かっていて対応してくれてたようだが、実際にはお互いが情報取得をしてたっていうところだろう。


「さて、私は気は長いんだけど、騒ぎを起こしてしまったからね~。人が集まる前に終わらせようか!」


言い終わる直前に一瞬にして詰め寄って来る。が、そこにカラーが飛び出し、相対してくれた。


「邪魔!」


と、ミフルが叫び、ナイフを振るうが、それはカラーの鎧に阻まれる。

キーンという甲高い音を残し、ミフルがカラーと距離を取る。


いい感じに膠着してくれているな。


さて、こっちはミフルの仲間二人を相手しなければならない。


ミフルが動いたのを確認し、すぐに動き出す二人。身のこなしを見る限り、油断は出来ないと理性が告げる。

が、ミフルよりも強くはないハズ!


色々と事情を知っているであろうミフルは生け捕りにしたい。が、この二人は正直その必要はない。

出来れば、殺したくはないのだが、ここは戦場だ。戦場では「甘さ」が命取り。それは中東の戦場で身に染みて分かっている。

その教えに従い、冷静に拳銃を構え、狙いを定めて引き金を引く。

バン!という大きな炸裂音と共に発射される弾丸が、一人の頭部に吸い込まれ、悲鳴も上げずに血しぶきを上げながら倒れる。


「なに!?」


ミフルと、残った男が驚愕する。

そう言えば、ミフルも拳銃は初見だったな。


「魔法...じゃないね...弓矢のような飛び道具かい...しかも、かなりの威力だね...」

「その通り。これは拳銃っていうんだよ」


と言いながら、狙いを定められないように激しく移動をしていたもう一人の男の胸を狙い、引き金を引く。


「ぐあぁぁぁぁぁ!」


またしても、バン!という音と共に、男が胸を押さえて膝をついて倒れる。

まだ息が残っているのか、私を睨みつけてくる。が、肺に穴が開いているのだ。もう動けまい。


「まさか、その二人があっという間に倒されるとはね...拳銃だったかい...厄介だね」


倒れた二人を見やりつつ、無駄口を叩く。時間稼ぎかな...攻略を考えているのかも知れないな。


「小さいけど、殺傷力は見ての通りだよ」

「本当、油断できないね...その女の鎧も異常だし...」

「カラーは特別なんだよ」


鎧も含めてカラーは「製作者:神」だからな。色んな意味で異常だよ。


「やっぱり、あんたの女なのかい?」

「私はご主人様の女です」

「おい!カラー!!」

「じゃあ、そっちから!!」


そういうと、一気にカラーに詰め寄り、兜を被っていない頭部を狙ってナイフを突き立ててきた。

あまりにも素早い攻撃で、私もカラーも反応できず、ナイフはカラーの額に吸い込まれるように突き刺さ...らなかった。


「なにっ!!」


一瞬にして飛び離れるミフル。

私も一瞬焦ったが、カラーは神々の時代に神に作られた堅牢不滅型ゴーレム。神の力でなければ傷がつかないのだ。

実際、カラーの額にはナイフが当たった痕はなく綺麗なものだ。


「どういう事だ!?」

「さぁ?どういう事だろうね?」


わざわざ種明かしをする必要はないだろう。


殺気を纏わずにシレっと拳銃を構え、今度は足の甲を狙う。ミフルは生け捕りたいのだ。

バン!という音と共に地面に着弾する。ミフルが後方に下がって避けたのだ。


「本当に厄介だね!その拳銃ってのは!」

「あんたに負けない為には必要な武器だよ」

「あんた、弱いもんね」

「うるせえ!」


文句を言いつつ、さらに足を狙って数発撃つ。が、全て避けられてしまった。


「なんで避けるんだよ...」

「避けなきゃ危ないでしょ!」

「大丈夫。痛いだけだから」

「大丈夫じゃないわよ!!」


軽口を叩きながら、拳銃を撃ちまくる。それを華麗に避けるミフル。

困ったな...あと数発しか無いぞ?


仕方ない。


弾丸1発を残し、おもむろに拳銃を上に向けて構える。今まで足元を狙っていた所を急に狙いが変わったので、ミフルが戸惑っている。

よし!今の内だ!


「ファイア!!」


銃弾でなく、火炎魔法を頭上に打ち出し、花火のように破裂させる。


「なに!?」

「これで、騎士がこっちに来るだろう。さっきの爆発に向かっていた騎士もいるだろうが、二手に分かれるだろう。すぐに増援が来る」

「...考えたね...だが、こっちはあんたさえ殺せれば!!」


ナイフは左手に構えたまま、右手で腰のブロードソードを抜き放つ。


やべぇ...ミフルが本気になったようだ。いや、元々本気だったが、余裕がなくなったって事だろう。


「ご主人様。こっちはお任せを...」


弾丸残り一発なので、どうしようかと悩んでいたら、カラーが左側に立ってくれた。


「そうか...あんたも居たんだったわね」


助かった。

慌ててマガジンを交換する。

これで15発。勝負になるだろう。


「じゃあ、最後の勝負と行こうじゃない?」


2対1の不利な場面なのに、不敵に笑うミフル。何かおかしい...。


背後から嫌な気配がする。本能の命じるままに横に飛びのきつつ、振り返る。

さっきまで立っていた所をナイフが通り過ぎていった。


胸を撃たれた男が最後の力を振り絞って、ナイフを投擲したらしい。


「残念...」


私の顔を睨みつつ、前のめりに倒れこむ。

どうやら、まだ甘さが残っていたようだ。私は死ぬわけには行かないんだ。心を殺し、頭に狙いを定める。


「させるか!」

「行かせません」


と、ミフルが私に突っ込んできたが、カラーが立ちはだかる。

本当にカラーの存在は助かるな。女神イスフォーンに感謝を...。


ともかく、再度倒れた奴の頭に狙いを定めて撃つ。これで確実に死んだ。


「くそっ...悪運のいい奴!!」


カラーを排除しようと、ブロードソードで攻撃していたが、堅牢不滅型ゴーレムのカラーには何一つ傷を付ける事が出来ない。髪の毛一筋さえも切れないのだ。いや、本当に堅牢だな。


「なんなのよ、こいつ!全然切れないじゃない!!」

「私は女神イスフォーン様に創られた、堅牢不滅型ゴーレムです。神の一撃以外で傷つく事はありません」


あ、バラしちゃった。まぁいいか。どうせ調べれば分かるだろうし。


「なにそれ!?絶対勝てないじゃない!!」

「そうだよ~」


と、返事をしつつ、ミフルを捕らえる為に足を狙って撃つ。


「それ邪魔!!」


文句を言いつつ、避けるミフル。かなり連続で撃っているのに当たらない。

華麗なステップで後退する。


残り弾数8発。


「おい!ミフル!!」


ミフルの背後から3人走って来る。倒れている男と同じような服装だ。ミフルの名前を呼んでいるので仲間だろう。


しかし、3人の後ろから更に5人が走ってきている。あれは...騎士だ。

あの3人がここに来るには少し時間がある。騎士たちも頑張って走っているが、鎧を身に付けているので、さらに時間がかかりそうだ。


「カラー!すまんがミフルの相手を頼む!残りはこっちで対処する!」

「わかりました」


カラーは攻撃出来ないが、相手を捕まえる事は出来る。両手を広げ、ミフルを逃がさないというアピールをする。


「本当に面倒だね、あんた!」


カラーを睨みつけ、ブロードソードとナイフを構える。

ミフルがカラーに集中した瞬間、足首へ照準を合わせて引き金を引く。歩けなくなれば十分だ。


「あんたは厄介!!」


今回も綺麗に避けられた。


「あんたも十分厄介だよ」


このままだと、乱戦になるな...だが、ミフルを逃せば後々面倒な事になるのは間違いない。

さて、どうしたものか...。


悩んでいる間にミフルの仲間が合流。騎士はまだ到着しないな...。

しかし、これで挟み撃ちになったので、かなり有利な状況だ。


「ミフル!騎士に見つかった!」

「見りゃ分かる!奴の拳銃は飛び道具だ!気を付けな!」


ミフルがあからさまに機嫌が悪くなった。

なんとなくだが、この連中はちゃんとした仲間ではないのだろう。


殺された奴に対しても、必要以上に感情を出さなかったからな。

もっとも、黒梟にも所属していたらしいから、感情を表に出さない訓練も積んでいる可能性は高いが...。


「あんなのがですかい?」

「そこの仲間はそれで死んだよ」

「うぇ~...冗談だろ...」


まぁ、拳銃なんてこの世界には無いものだからな。


「一応言っておくが、お前たちを逃がすつもりはないぞ?」

「だよねぇ~...」


会話の間にも騎士が迫る。なのに、行動を起こさないミフルが変だ。ひょっとして騎士が到着するのを待って、乱戦にして逃げるつもりか?

だったら、それに付き合ってやる事はない。


改めて拳銃を構える。狙いは全員の足だ。


「チィッ!!全力で逃げな!!」


言うが早いか、ミフルは騎士に向かって走り出す。


残りの3人は顔を見合わせて、慌てて逃げ出そうとしたが、遅い。


3回連続で引き金を引き、拳銃で3人の足首を砕いた。この5m程度の距離で外す事はない。


「ぐあぁ!」

「がぁっ!」

「ぐぅっ!」


これで3人は簡単には動けない。

本当であれば殺すべきなんだろうが、ミフルを取り逃がしそうな今、こいつらからでも色々聞きたい事があるしな。


「カラー!ミフルを追いかけるぞ」

「はい」


3人を放置し、ミフルを追いかける。もうミフルは騎士と接触しようとしていた。足が速い。


さすがにここから拳銃は撃てないな。外したら騎士に当たっちゃうから。おそらくミフルはそこまで考えて騎士に向かっていたのだろう。


ミフルが迫ってきているので、騎士たちが立ち止まる。が、ミフルはお構いなしに突っ込む。

騎士たちが驚いている間に、ミフルは1人の騎士に蹴りを入れ、その勢いのままに飛び上がり、向こう側に着地して走り去っていた。


なんとも、華麗で強引な逃走術だ。



「いや、してやられました。取り逃がしてしまい、申し訳ありません」


汗を拭きつつ、40代ぐらいの騎士が謝罪してくる。


「いや、あちらの方が一枚上手だっただけだ。こっちに死傷者が出なくて良かったよ」


ミフルが交戦するつもりだったら、数人の死傷者が出ていただろうからな。


「で、先ほどの女性は?」


知らんかったんかい?


「ミフルだ」

「おぉ...あの女性がミフル殿でしたか」

「知っているのか?」

「エルセリア領内の騎士で彼女を知らない者は居りませんよ」


よく考えれば、エバン統治下では表立って動いていただろうしな。知ってて当たり前か。


「ちなみに、どういう話になっているんだ?」

「曰く、彼女とすれ違っただけで絶命するとか...」

「どんだけ怖いんだよ!」


いや、ミフルに夜襲された時はそんな状態だったけどさ。


「曰く、目を付けられると数日後には行方不明になるとか...」

「それ、事実なのか?」


本当に怖いんですけど!?


「さぁ...あくまでも噂でしたからな。ですが、実際剣士としては非常に腕が立ちます。エルセリア領内で彼女に太刀打ちできる者は、五人とはおりますまい。それほど脅威的な女性です」

「うわぁ~...もう絶対会いたくないな」

「いやいや、副官殿はミフル殿と剣を交えて生きておられるのでしょう。それはとても凄い事ですぞ?」

「剣なんか交えてないよ。それこそ願い下げだ」

「いや、しかし...」


実際にはカラーが盾になってくれただけだからな。私は何もしていない。


「ともかく、ミフルがとても強い剣士という事は改めて分かった。ありがとう。で、この者たちについてだけど...」

「はい。この者たちは適当に処分致します」


実は、ミフルを追っている間に、動けなくなった3人は自害していた。

ここまで徹底するのは狂気を感じるが、この世界では普通なのだろうか。会話をしていた騎士は眉も動かさずに他の騎士に指示を出している。


「適当というのは?」

「身元を確認し、身ぐるみを剥いで魚の餌ですな」


世知辛い世の中だな。しかし、郷に入っては郷に従えと言うしな。そもそも私は余所者だ。


「分かった。任せるよ」


3人はそれぞれ手にしたナイフで、互いに別の仲間の心臓を刺していた。なので、正確には自害ではないのだろうが、そういう問題でもないか。


ふぅ~...疲れたよ...ともかく、駐屯所に向かおう。



「お帰り。結局事件が発生したようだな」


駐屯所に着き、応接間に行くとタニアが出迎えてくれた。ため息と一緒に...。


「あぁ...ホントに疲れた。が、まだやらなきゃならない事があるんだ。ちょっと待っててくれ」

「あぁ、分かった」


タニアに一言断りを入れ、ソファーに沈み込んで一息つき、目の前の紅茶を一口すすってからスマートフォンを取り出す。


「あ~...カリナ、どうだった?」

「あ、はい。ミフルは町長の屋敷に入りました」


実はカリナには電龍に備えていた偵察用ドローンを操作してもらい、町長の屋敷を監視してもらっていたのだ。

ミフルを取り逃がした後、カリナに連絡を入れてミフルの事もお願いしていたのだ。


絶対に町長の屋敷に向かうと思っていたからな。


「やっぱり町長と繋がっていたって事だな」

「そのようですね。先ほど、町長の部屋で話をしていました」

「話の内容は?」

「この『盗聴』というのは凄いですね...あ、内容ですが『失敗したので匿え』、『クラスタンプに戻る』、『船は7日後』という話が聞こえました」


偵察用ドローンには、聴診器のような有線マイクが装備されていて、例えば窓とかに射出してくっつけて、部屋の会話を拾う事が出来るのだ。

操作は難しいのだが、カリナは頑張って色々操作が出来るようになっているな。優秀優秀。


「分かった。7日後に船だな。助かったよ」

「いえ。ところで、そろそろこちらに戻られますか?」

「そうだな...一休みしたらカタランスを出るよ」

「分かりました。ドローンを戻しますね」

「うん。よろしく」


さて...今度は7日後か...時間はあるから対応を考えておこう。



しばらくしてドローンを戻したとカリナから連絡を受けた。

今回の視察は終わりとして、ちょうど戻って来たブルフと少し会話をした。


町長がクラスタンプと密接につながっているという事。ミフルが襲撃してきた事。カタランスから怪しい物品を仕入れており、それを使って貧民街の者たちを奴隷としてカタランスに売っている可能性がある事。そして、7日後に船でミフルが脱出する事。


それを伝えると、ブルフは驚き、一瞬怒りの表情をして、すぐに思案顔になった。


「なるほど...分かりました。では7日後にミフルを取り押さえれば良いのですね」

「そうだ。その時は私も来る。ミフルは強敵だからな。万全の体勢で挑むぞ」

「承知しました。こちらも色々と想定しておきます」

「よろしく頼む」


ブルフと簡単に今後の打合せをして、タニアとカラーを電龍に乗せて帰路に就く事にした。


それにしても、超大変だった。

一応、エリーには千里眼で町長の屋敷を監視するようにしておいた。

エルセリアに戻ってから、ドローンを準備して、騎士駐屯所に設置出来るようにもしなきゃだな。


この帰り道に襲撃されるのは嫌なので、事前に千里眼で確認をしたが、問題はないようだ。が、安心は出来ないからな。注意しつつ、急いで戻ろう。


「それにしても、今回は本当に大変だったな」


いつものように、電龍を運転する私の後ろに座ったタニアがどこか楽しそうに話しかけてきた。

いや、本当に大変だったんだから、楽しそうに言うのはやめて欲しいんだけどな。


「本当だよ...町長の事だけでも大変だったのに、ミフルまで出てきた時には、回れ右して帰ろうかと本気で思ったよ」

「本当に手強かったですよね」


側車に乗っているカラーが会話に参加してきた。


「カラーもそう思ったかい?」

「はい。彼女は手にした剣を投げつけようとしてまで、ご主人様を殺そうとしていました」

「そうなの!?」


それは知らなかった。


「えぇ、私は出来るだけ彼女とご主人様の間に入るように動きましたので、そうはなりませんでしたが...」


あ~...そう言えばカラーの言っている通り、私とミフルの間には常にカラーが立ち塞がっていた。


「それは私が別の奴と対峙している時だな」

「ご主人様がミフルを拳銃で狙っている時に間に入ると、私が撃たれてしまいますからね」

「いや、今回は本当に助かったよ...」


本当にカラーの働きには感謝したい。


「リョウ、今後は絶対に一人でウロウロするんじゃないぞ?」

「そうだな...必ずカラーかカリナを連れて行くよ」


砦内はほぼ安全だからな。外にいる時はこの二人の内どちらかを連れて行かないとダメだろう。


「是非そうしてくれ」

「カリナは忙しいでしょうから、必ず私を連れて行ってください。私は絶対傷つきませんし」

「そうだなぁ~...仲間が怪我するのは嫌だしな」


カリナは少なくとも弱くはないが、傷つかないカラーと比べると安心感が違うからな。


「しかし、戦力としてカリナは有能だろう。あとは私、リア、ミーム、一応キャリーも戦えるぞ?」

「タニアは領主なんだからダメ。あと、キャリーは主な仕事は侍女なんだから、彼女もダメ」

「むぅ~...」

「それに、リアとミームはタニアの護衛をしてもらわなきゃだし、特にリアはお姉様の護衛をしたいだろうしな」

「う~む...」

「ま、私も別に弱くは無いから大丈夫」


少なくとも魔法も使えるし、拳銃もある。予備として星砕丸もあるから、簡単には負けないはずだ。


「ミフルよりも弱いと聞いたぞ?」


うるさいな。てか、それをどこで誰から聞いたんだよ!!


「ミフルは特別だよ。あそこまで強い奴はそうそういないだろうし」

「そう言えば、ミフルに対抗できるような騎士はいないのか?」


あの騎士はエルセリア領内にも5人はいないと言ってたな...。


「それは...誰になるんだろう?パストングとカリナに聞いてみようか」

「そうだな...それが一番だろう。場合によっては、その者をリョウの護衛に付けても良いだろうしな」

「聞いた話では、上級騎士と同等だと聞いたぞ?」

「それは...すごいな...」


タニアが背後でものすごく驚いている。


「上級騎士って...そもそも少ない?」

「大隊長以上は全て上級騎士だ。もっとも、武力ではなく特殊な技能を評価されて上級騎士になる者もいるが、それはごく少数だな」


てことはパストングも上級騎士なのか。


「流石にパストングを私の護衛にする訳にもいかないが...」

「そうだな。ともかく、リョウの護衛は上級騎士になってしまうな...」

「無理じゃないか?」


大隊長クラスを護衛にするのは...無理があるな。


「うむ...難しいな...お爺様に相談しておこうか?」

「あ~...いや、今はカラーが居るし、私の護衛は一旦保留しておこう。私の方でも対応を考える」

「具体的に、どうするつもりだ?」

「...星砕丸を使えるようにする...」


せっかくの武器だからな。せめて型練習ぐらいはしていかなければダメだろう。


「気持ちは分かるが、時間がないぞ?」

「分かっている。だが、最終的には自分の身は自分で護れなきゃならないからな。銃や魔法も当然鍛えるが、刀もちゃんと使えるようにしておきたい」

「そうか...では、パストングやミームに鍛えて貰えばいい。彼らは剣の達人だからな」


それは良い考えだな。パストングは忙しいだろうから、ミームにお願いしよう。


「そうだな。やっぱり教えてもらわなきゃ上達はしないか。じゃあ、戻ったら早速頼もうかな」

「私は切られ役をします」


なんでやねん!


「いや、カラーを切ろうとしたら絶対に刀が刃こぼれすると思うぞ?」

「確かにな」

「私は傷つきませんが?」

「だから、刀が傷つくんだって!」


楽しくない内容を楽しい会話にしながらエルセリアへの帰路を急ぐ。



まだまだ問題は山積みだけど、エルセリアの中だけは絶対に平和にしていきたいな。

さて、明日は黒梟の4人が来るし、もうひと踏ん張りだな。

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