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魔法を信じるかい? ― マッドサイエンティストの異世界旅行  作者: 黒々猫
■■■■■■ 第6章 やるならちゃんとやりましょう
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■■■ Step060 カレーと姫の暴走の末のマッドな事後対応

少女はおよそ15歳ぐらい。何も着てなかったのでシーツに包まってもらっている。

いや、意識がないので、包んでいるというのが正しいか。


再度廃墟を探索したが、もう死霊は現れず、何もなく確認出来た。

念のため、地下室がないか確認したが、地下室はなく、屋根裏も見たが何もなかった。


念のため熱源調査もしてみたが、何も見つからなかった。もちろん、カラーに魔力探知もしてもらう。が、何も探知できず。


あ、テクスも一応見てもらったが、魔力が消えそうらしい。

あそこまで燃やされて、しかも疑似聖剣で刺され、地中深く埋められたら身体の修復も出来ない。肉体を維持する事も出来ずに数日中に消滅するだろうとの事。

ならば安心だな。



この廃墟はアンデッドを引き寄せる可能性があるので、やはり燃やしてしまおうという事になり、私が魔法で火を放った。

あまりこんな所に居たくないので、火力を上げて燃やした。流石にスーパーノヴァは止めた。


廃墟は焼け落ち、あたりには焼け焦げた臭いが立ち込めている。

残り火で火事になると困るので、十分に水をかけてしっかりと消火をしておいた。


朝から対応したが、途中で昼食をはさんで夕方近くまでかかってしまった。


大きな屋敷だったから、やっぱり燃やすのに時間がかかったな。


トモニアに到着した時は、精神的にも肉体的にもかなり疲弊したようで、報告もそこそこに夕食を食べて早々に寝てしまった。



翌朝、村長の家にタニアとカラーを伴って向かう。

他のメンバーは一旦お留守番だ。


ちなみに、昨日は疲れていた事もあり、夜霧で寝たのだ。

一緒に夜霧で寝たのはタニア、キャリー、セミア、レミ、カリナ、カラー、そして少女だ。


リアとミーム、パストングは村長の家で休んでもらった。

というか、元々そうだったしな。


夜霧の女子部屋ベッドは4つしかないので、セミアとレミには一緒のベッドで寝てもらい、少女にはカラーに付いてもらった。

カリナは申し訳ないが寝袋だ。


まぁ本人はかなり気に入ったようで、「これ、いただけませんか?」と聞かれてしまった。

渡しても問題はないが、ちょっと待ってと言っておいた。


ケチった訳ではなく、もうちょっと良さそうなものを渡そうかと思っただけだ。



村長の家に行くと、すでに朝食が済んでいたようで、村長のサラさんが出迎えてくれた。

そこにはリア、ミーム、パストングも揃っている。


「昨日はかなり疲れていたようですが、大丈夫ですか?」

「はい。もう回復したので大丈夫です」

「それは良かったです。詳しい話を聞きたいのですが良いですか?」

「それは構いませんが、こちらの騎士たちも来てからの方が良くないですか?」

「あ、そうですね。ちょっと呼んできましょう」

「お願いします」


その後、関係者が集まったので一通り説明をした。

もちろん、そこに私のなんちゃって神官の能力は「魔法で作り出した光源にアンデッドが怯んで」とした。


ヴァンパイアについても報告した。テクスという100年程前の貴族だった事も含めてだ。「とにかく燃やした」と報告した。間違ってないしな。

あと、予定通り廃墟も燃やし、もうアンデッドが住み着く事はないと説明した。


「昔からアンデッドの巣窟になっていましたが、まさかこんな近くにヴァンパイアが居ただなんて...」


村長はかなり驚いていた。そりゃそうだろうな。

ヴァンパイア一匹で簡単に街が壊滅するからな。


「それで、ヴァンパイアの元に一人の少女が捕らわれておりました。年の頃は15歳ぐらいなのですが、心当たりはありますか?」

「いえ...最近は特に行方不明者は居なかったので...しかし、過去には若い娘が夜中に姿を消すという事件がありましたので...」

「それは...おそらくそういう事でしょう...」


まさかヴァンパイアだとは思わないだろうしな。

それにしても、どうやってヴァンパイアになったのか...調べる必要があるな。

まずは、あの日記からか...。


「その少女は、トモニア以外の...マートーンやオクルの娘かも知れません。お探しになられますか?」

「そうですね。少女はまだ目を覚ましていませんので、各街で聞いた方が早いかも知れません。タニア、それで良いな?」

「それでも良いが、一度エルセリアに戻ろう。娘の容態改善が先だ。親探しはその後でも出来る」

「あ~...確かにそうだな。じゃあパストング、マートーンとオクルに少女の事を告げて、行方不明者がいないか確認してくれ」

「承知しました」


アンデッドと接触する事はなくなったので、いつものパストングになったな。

一応、アンデッドに強そうな指揮官も聞いておくか。エルセリアに戻ってからでも。


「他はエルセリアに一旦戻ろう。場合によっては...いや、今は良いか」

「何かあるのか?」

「あるけど、タニアに相談したい事だから、エルセリアに戻ってからだ」

「?...良く分からないが、承知した」

「すまないな」


考えたのは、最悪大阪に連れて行って病院で診てもらう...いや、先にユリに診てもらっても良いか。医療系ロボティクスを専攻しているから、下手な素人が診るよりも確実だろう。


「あ、そうだ、サラさん。例の廃墟の周辺って、狩りに適した場所なんですか?」

「いいえ?そんな話は聞いていませんが?」

「そうですか。だったら出来るだけ近づかないようにしてください。騎士も行かないように」

「確認はもう不要って事ですか?」

「そうだ。確認は私の方でするので、大丈夫だ。もう安全だとは思うが、何があるか分からないからな」


犠牲者が出てからでは遅いからな。


「リョウ、抱え込んでないか?」


タニアが少し睨んでくる。

あ~...はい。ご指摘はごもっともです。が、大丈夫です。


「あ~いや、そんな事はないぞ。あの屋敷のあった所は木々が無いから、監視しやすいってだけだ」

「なるほど。納得だ」


どうやら、スパイ衛星『千里眼』での監視と分かってくれたようだ。


「私は分かりませんが?」

「サラさんは気にしなくても大丈夫だ。こっちでちゃんとやるから」

「は...はぁ...」


納得出来ていない雰囲気だが、ここで説明するともっと大変だからな。ここはスルーだ。



簡単な打ち合わせをして、パストングと騎士たちはオクル、マートーンを回ってもらう事にし、私たちはリア、ミームと一緒にエルセリアに戻る事になった。


「この道をまたお姉様とリョウと一緒に行く事が出来るなんてね」


リアは上機嫌だ。


「そうだな。コボルド討伐の帰りみたいだな」


タニアが当時と同じように側車に乗っている。


「本当ね。違うのは人数と夜霧が増えた事ね」


ミームもなんだか嬉しそうだな。


今はトモニアからの帰り道で、電龍の左右に馬に乗ったリアとミームが陣取っている。


ある意味懐かしい...と言うには全然日数が経っていないんだがな。



他のメンバーは気を利かせてくれたのか、全員夜霧に乗り込んでいる。


「それにしても、リョウに会ってからあっという間だよね。まさかお姉様が領主になるなんて思わなかったわね」

「そうね。私もあの討伐依頼から、こんな事になるとは思っていなかったわね」

「私が領主になったのはリョウの責任だからな。リョウには最後まで責任をとってもらうつもりだ」

「おいおい。結局は自分で立候補したじゃないか」

「それはリョウの意見を尊重しての話だ。そもそもリョウが言いださなければ私はそんな事は言わないぞ?」

「そうよね~。あれはリョウが思いつきで言ったんだもんね~」

「確かにそうなんだが...あ~、もういいよ!私が悪かったんだよ!!」

「リョ...リョウ!怒ったのか!?」

「怒った!怒ったぞ!!帰ったらカレーを作ってやろうと思ったが、もう止めた!!」


と、ちょっと調子に乗ってしまったのが運の尽きだった...。


「それはいやだぁああぁぁあ!!」

「お姉様!?」

「え!?タニア!?」


タニアが絶叫し、リアとミームが驚く。

当然、私も大いに驚いた。


「ごめんなさいぃ!謝るから!お願いだからカレー作ってよ!」


そっちかい!!


「おいおい...」

「分かった分かった!!帰ったら作ろう」

「本当か!?」


と側車から身を乗り出し、私に縋りつこうとする。


「危ない危ない!側車から身を乗り出すな!!」

「約束だからな!絶対だからな!」


ちょっと危なかったので、一旦停車してタニアを宥める。


「とりあえず私は怒ってないから安心しろ」

「本当だな?怒ってないんだな?」

「私は多少の冗談は言うが、嘘は言わない。それは知っているだろう?」

「あぁ...そうだな...すまなかった」

「いや、私もちょっとキツイ冗談を言ったみたいだからな。こちらこそすまなかったな」


こんなに不安定なタニアは初めてだな。

何が原因か分からないが、エルセリアに戻ったらちょっと休ませないとだな。


まぁカレーを作る約束はしていたから構わないと言えば構わない。今はタニアのフォローが優先だな。



その後、他愛もない話をしながらエルセリアに戻った。

リアもミームも先ほどのタニアを見ていたので、何の打合せをしていないがちゃんと空気を読んでくれたようだ。



夕方前に砦に到着した。早速、少女を空いている客室に運び込む。


そうだ、カリナにも部屋を割り当てないとダメだな。だが、すぐには用意が出来ない。


「カリナ。すまないがこの客室をしばらく使ってくれないか?」

「えぇ!?この部屋ですか?」


カリナが非常に驚く。そして、チラチラと少女を見る。


あ~...ヴァンパイアの犠牲者と一緒っていうのが引っかかっているのか。

そこは仕方ないか~...。


「急に準備できなくってな。今日だけでも良いから」

「わ...分かりました...」


納得はしてないようだが、了承してもらえたな。

とりあえず、明日には用意しなきゃだな。


セミアとレミに少女に服を着せるように指示をして、一旦執務室に入る。


「さて、まずは情報共有をしようか」


タニアは執務机、私とリア、ミームは執務机前のテーブルに着いた。カラーとキャリー、シャインは立っている。座っても良いと言っているのだが、聞いてくれないんだよな。

そして、いつものように私が会議進行を進める。


「パストングがいないけど?」

「パストングには戻り次第でいいだろう。戻るのに2、3日かかりそうだしな」


リアの疑問に答える。

緊急で連絡するような内容はない認識なので、戻ってからでも良いだろう。


「まず聞きたいんだけど、タニアと私がエルセリアを離れている間に起こった事は、昨日のトモニアの廃墟ぐらいかな?」

「そうだね。それ以外では特にないかなぁ...」


ミームが思い出そうとしているのだろう、天井を見ながら答えてくれた。


「思い出せないなら大丈夫だろう。あったとしても大きな事ではないだろうし」

「ん~...思いつくのは、タニアが居ない間はリアが寝坊してたってぐらいだからな」

「ちょっと!!」


ミームの言葉にリアが激しく反応する。

その顔は真っ赤だ。


「まぁまぁ...とにかく何もなくて良かったよ。でも、ちゃんと起きような、リア」

「う~...」

「じゃあ、首都での事だが、ちょっと色々あってだな...」


と、首都での出来事を掻い摘んで説明した。



「へぇ~...ルーヴにもコレを渡したんだ...」


リアがスマートフォンを弄びながら、流し目で私を見る。

何が言いたいんだ?


「仕方ないだろう?それにタニアが領主になったんだから、連絡は大事だしな」

「ま、良いんじゃないか。ルーヴって娘がどういう人物かは知らないけど、タニアも了承しているんだろ?」

「そうだな。人選としては良いと思っているぞ」


ミームは現実的だな。

タニアもうんうんと頷いているし、問題はないだろう。


「じゃあ、良いか!あ、アタシたちもルーヴと話が出来るって事よね?」

「あぁ。みんなのスマートフォンの連絡先にルーヴを追加しているから、会話はいつでも可能だぞ」

「やった!」


なぜかリアが喜んでいる。ルーヴと仲が良いのだろうか?まぁ、女の子同士の仲は良く分からないからな。


「あと、クウィルお兄様の武器を作る事になったのね」

「そうだ。まぁこれは私の趣味の一環だと思ってくれ」

「趣味?お兄様みたいなのが趣味なの?」


言い方!!


「なんでそうなるんだよ!武器作りが趣味って事!!」

「あ、そっちだったんだ...」


なぜ残念そうな顔をしているんだ!


「ちなみに私も最初はそっちだと思っていた...」

「タニア!」

「そうよね、お姉様。軍関係の人からはそういう話を聞くもんね」

「待て待て!君たち、どこからそういう話を聞くんだ?」

「えっと...色々?」


こういう話は女子は好きなのだろうな。腐女子という言葉もあるぐらいだし。


「あ~...もういいよ...ともかく、武器作成はこっちでやるから気にしなくても良いよ」

「というか、リョウしか出来ないからな。そこは丸投げさせてもらおう」

「賛成!」


と言う事でクウィルお兄様の件は私が勝手に進める事で了承された。


「あとはマリアの件だな。引っ越ししてくるまでに部屋を用意しないとだな」


タニアが話を切り替えてくれた。


「彼氏くんと一緒の部屋にすれば良いんじゃないか?まだ部屋はあるだろう?」

「あぁ、それは大丈夫だ。あとマリアの仕事はここでしてもらおうと思っているんだが」

「それで良いんじゃないか?今後の活動はお金が関係する事もあるだろうし」


それに、マリアとは話がしやすいかも知れないからな。

タニアのガス抜きが出来るかも知れないしな。


「ま、仕事に関しては実際にマリアが来てからでも遅くはない。部屋の準備だけはしてもらおう。ちなみにどこの部屋にするんだ?」

「彼氏くんは軍関係者だから、士官用の建物に...とも思ったが、今回はマリアがメインだからな。この建物の2階の部屋を用意するつもりだ」

「そうだな。この4階はあまり部屋が空いてないし、良いんじゃないか」

「じゃあ決定だな。シャイン、そのように頼む」

「承知しました」


砦の管理は最近シャインがしてくれているからな。こういうのはお任せで大丈夫だろう。


「あと彼氏くんだが、こっちに着いたら色々確認して、パストングに引き渡そうと思っているんだが...」

「確か、管理するのが得意とか?」


そんな話をマリアからは聞いたが、確認は必要だからな。


「どこまでの事が出来るかを確認して、倉庫管理とかも任せて良いかもとか思っている。出来れば人員管理をしてくれると、パストングの負担が減るんだけどな」

「とにかく、こっちに来てからだな」

「そういう事だ」


さて、首都での話はこれで良いだろう。


「領内の事は特に問題は起きてないんだろう?」

「そうね。そこは騎士たちが対応してくれてて、パストングの副官のエリーズが動いてくれているわ。何も聞いてないから大丈夫だと思うわね」


ミームが考えながら報告をしてくれた。

なるほど、安定してきているようだな。


「じゃあ、ヴァンパイアに囚われていた少女を診に行こうか。もう服を着せているだろうしな」

「確かに心配だからな...」


そういう事で、みんなで少女を寝かせている部屋に移動した。



部屋に入ると、キャリーとセミアとレミが部屋に居た。


「リョウ様。彼女はまだ目を覚ましません。心臓はちゃんと動いていますので、生きているのは間違いないのですが...」

「ありがとう。ちょっと私も確認してみるよ」


そう言って少女の手を取って脈を診て、首筋を観察する。

少女の首筋には二つの傷があり、これはヴァンパイアの噛み傷だと思われる。

なので、テクスが言っていたように、奴の食料だったようだ。ヴァンパイアの性質上、どうしても血を吸う必要があるとしても、許せないな。

顔色は白い。テクスのような気持ち悪い白さではなく、若干赤みもある。体温もレミとかに比べても低いが、冷たい訳ではない。

まだ完全な眷属にはなっていないハズだ...。


「私の知識だとヴァンパイアに噛まれた人間は、ヴァンパイアの僕になり、言いなりになってしまう。解放するにはそのヴァンパイアを倒すしかないという事なんだが、合っているか?」

「合っているな。もっとも、言い伝えや古い文献でしか記載がないから、本当の所は分からないけどな」

「そうですね。私も詳しい事は知りませんが、ご主人様のおっしゃっていた内容で合っています」


タニアとカラーの認識は私と一緒のようだな。


「私が聞いた話では、ヴァンパイアの被害者は助からないし、最終的にはヴァンパイアになるから火刑にするそうだ」

「アタシも火刑にするって聞いたわよ」


ミームとリアの認識は違うようだが、おそらく対応としては大枠間違っているとは思えない。

知識がなければ眷属になっているか、なんて分からないだろうしな。


「文献にも記載があるって事は、解放する方法はおそらく合っていると思う。で、リアやミームの聞いた話っていうのは、そういう文献を確認する事が出来ない地域とかでの話なんじゃないかと思うんだけど、どうだ?」

「あ~...確かに地方の村とかで聞いた話だったな」

「そうね、アタシも村で聞いた話だったよ」

「やはりか。まぁ、そういう村とかだと知識が入ってきにくいからな。村人たちも苦渋の決断で対処しているんだろうし、村が絶滅するよりも...という判断なんだろう」

「そうよね...ヴァンパイアって怖いもんね」

「特に眷属になってたら一大事だしな」


さて、問題の眷属化したかの確認だが...。

そうだ。この方法があったよな...。


懐から鏡を取り出し、少女が写るかどうか確認をした。


...よかった...ちゃんと写っている。


「ご主人様、それは?」


カラーが不思議そうに私を見ている。

見ると、周りも不思議そうにしているな。


ひょっとして、「鏡での確認方法」って知らないんだろうか?


あ、この世界の鏡って、写りが悪いんだった...。


「あぁ、これは私の国に伝わるヴァンパイアや眷属の確認方法でな、鏡に写らなければヴァンパイアや眷属で、写れば人間って判断出来るんだ」

「そうなのか?それは初めて聞いたぞ?」


タニアが非常に驚いている。まぁそうだろうね。


「タニア、私の国って言ったぞ」

「え...あぁ...そういう事か...いや、おかしいぞ?あっちにはヴァンパイアのような魔物はいないはずじゃないのか?」

「そうだ。タニアの言っている事は正しい。だが、なぜか分からないがヴァンパイアの話は私の国でも読み物として存在しているんだ。不思議な事にな」

「そうなのか?」

「不思議な話だが、サイクロプスやコボルド、ゴブリン等の魔物の事を私は知っているんだ。実際には存在していないけど、そういう書物に出てくるんだ。その書物を読んだ知識として知っていて、なぜかこっちの世界では実在している...不思議な話だが、今はとりあえず置いておこう。ともかく、私にも知識があるという事だけ覚えておいてくれ」

「じゃあ、ワイバーンとかスライムとかグリフォンとかオークとか知っているって事?」

「あ~、それらは知っているぞ?」

「すごいな...」

「あくまでも知識だけだがな」


リアの質問してきたが、それらはファンタジーの世界では有名なモンスターだからな。当然知っている。

ミームが驚いているが、ファンタジー小説とか異世界物とか、D&Dやソードワールド、ルーンクエスト等を嗜んでたら当然の知識だ。


あ、異世界物はかなり特殊だったな...。


「ともかく、眷属化はしていないのに、眠ったままというのはどういう事だ?」


タニアが疑問を口にする。

確かにそこが分からないんだけど、考えられる事はある。


「恐らくだけど、テクスがまだ完全に消滅していないので、呪縛がまだ解けていないんじゃないかな。あと数日は眠ったままの可能性がある」


一番可能性のある事を口にした。口にしてみると非常に納得できる理由だと思えた。こんな事なら早々に消滅させておけば良かった...。


「なるほど。そういう事か...」

「まぁ、本当かどうかは分からないが、一番可能性があると思う。カラー、彼女の中の魔力の状態とか分からないか?」

「魔力ですか?...あ、首筋の傷から魔力がゆっくり抜けていますね。呪縛が弱まっているのかも知れません。本人の魔力はちゃんとあるので、問題はないかと」


魔力の有無で生死判断が出来るとは思わなかったが、この娘はまだ大丈夫という事が分かっただけでも有難い。


「そうか。じゃあまだ呪縛が解けてないで正解なんだろう。問題は...呪縛が解けるまで身体が持つかって所だな」

「え?どういう事?」


リアがびっくりしたようにこっちを見る。

せっかく助けたのに死なれちゃったらね...。


「飲まず食わずでは人間は生きてはいけないからな。そこを対処しないとダメだし、目が覚めても急には食事を摂る事は出来ないからな」

「そうなの?」

「しばらく食べ物を食べてない場合、胃腸が弱るんだ。そこに急に食べると命に係わるんだ」

「本当なの?」

「あぁ本当だ。だから、事前に準備しておかないとダメなんだよ」

「準備?」

「あぁ。ユリをこの世界に連れてくるよ」


普通に話をしただけなのに、なぜか空気の温度が下がった気がした。

一番冷えている方を見ると、タニアが青い顔をして立ち尽くしていた。


なぜだ?


「ユリを...連れてくるのか?」

「そうだ。この娘を助けるにはユリが必要だ」

「どうしてなんだ?ユリは魔法も使えないぞ?そもそもリョウが居れば大丈夫なんじゃないか?」

「私にも出来る事と出来ない事がある。ホーリーライトではあの娘を助けられないし、肉体を維持する為に栄養を与える事は出来ない」

「栄養を与える?食事が出来ないからそれは無理だろう?他に方法があるのか?」


この世界では「栄養」というのは食事以外では摂れないからな。


「栄養は基本食べ物でしか摂れない。だが、眠っている人間に食事をさせる事は出来ない。なので、別の手段...点滴をするしかない」

「点滴?それはなんだ?」

「栄養を体に直接入れる方法だ。これが出来るのはユリしかいないし、私には出来ない」

「そう...なのか...」

「そうだ。分かってくれたかい?」

「あぁ...分かった...後は任せるよ...」


力なくタニアが部屋から出る。

リアとミームが一瞬顔を見合わせ、次に私を見る。その顔は不安そうだ。


今はタニアを一人にするのは危険な気がする。


「リアとミームはタニアを追って。絶対にタニアを一人にしないようにしてくれ。多分領主になって色々あったから疲れが出たんだろう。出来れば今日と明日、明後日ぐらいはゆっくり休ませてやってくれ。あとは私が対応しておくから」

「うん、分かった。リョウ、お願いね」

「何かあったらすぐ連絡するから。タニアは任せろ」

「うん、よろしく」


二人が慌てて部屋を出る。

ともかく、タニアはあの二人に任せるしかないが、どうしたもんだろうな...疲れているというのは分かるんだが、あの反応は極端だよな...。


正直、タニアからは好意を向けられているのは分かってはいる。もちろん友としてだ。

そこから考えられる反応としては逸脱しているんだよな...。どういう事だ?


「リョウ様。ユリ様というのは?」


キャリーが少し心配そうな顔で聞いてきた。

さっきのタニアを見て心配になったんだろう。


「あぁ、ユリは私の国の幼馴染だ。色々あって医療系ロボティクスを専攻している関係で、点滴も出来るようになったって言ってたからな。普通は出来ないハズなんだが、この際助かる」


思わず「医療系ロボティクス」や「点滴」って言ってしまったが、誰も気にしてないな。今はそれどころじゃないか...。


「名前の響きから女性ですか?」


今度は眉をひそめている。

何を気にしているのかちょっと分からないな。ひょっとして、こっちの世界ではユリという名前の人は居ないのかもな。


「ん?そうだ。私よりも2歳年下だな」

「タニア様はユリ様の事をご存じなんですよね?」

「あぁ。タニアが私の国に来た時に紹介したし、今では友人のような関係だと思うぞ?」

「...そう...なんですね...」


顎に指を当てて考え込む。いや、考え込む所があるのか?


「ん?どうした?」

「なんでもありません。今からユリ様を呼ばれるんですよね」

「そうだな。素人目にもこの娘はかなり衰弱しているからな。早めに対処しないと危ない気がする」

「はぁ...分かりました。ここは私が見ておきますので...」

「分かった。すまんが任せる」


部屋を出るとカラーが付いて来る。カラーは私の侍女であり護衛でもあるからな。

ついでにユリに紹介しよう。


ユリの事だ。この時間はもう家には帰っているハズだし、状況を伝えればすぐにでも動いてくれるハズだ。


問題は色々出ているが、物事は上手く進んでいる。進んでいるハズ...なんだが、なんだろうな...この言いようのない不安は...。


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