表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法を信じるかい? ― マッドサイエンティストの異世界旅行  作者: 黒々猫
■■■■■■ 第5章 エルセリアの新たな始まりはマッド風味
PR
62/72

■■■ Step050 誓いと弔いと悲哀と救い

千里眼で確認しつつ、クラスタンプの兵士を大きく迂回する。

目標はテキナ達の後ろ、クラスタンプの兵士の先頭集団だ。


理由は簡単。

この集団は士官が多数居るのだ。

彼女たちの本当の仇はこの連中の誰かだと思っているので、最初に潰しておきたいのだ。


カラーが運転する電龍は、昼過ぎに国境ライン上に回り込む事に成功。

そして、クラスタンプ軍の先頭集団を視認した。


「ご主人様、いかがされますか?」


さて、どうしようか。

いずれにしても、これは戦争ではあるからな。


「まず、軍旗を掲げようか。我々は敵である事を知らせなければな」

「承知しました」


カラーは慣れない手つきでパネルを操作して軍旗を掲げるスイッチをオンにする。

パストングやファイに散々怒られたので、自動で軍旗を掲げる装置を追加したのだ。


電龍の最後尾のユニットから、スルスルとアンテナ状のポールが伸びていき、軍旗が掲げられる。


先頭集団が停止する。

向こうもこちらを敵だと認識したようだ。


さて、これで宣戦布告は完了だ。



距離にして約300mだな。丁度良い。


座席から立ち上がり、背負っていた愛用のアサルトライフル『飛燕』を構えスコープで覗く。

あちらは戦闘準備を始めたようだな。


士官が数名、ばらばらに指示を出しているようだ。

同格の士官が複数いるようで、命令系統が一本化されていないらしい。


ダメな集団の典型だな。


まぁいい。頃合いだ。


「カラー。しばらくはこのまま待機しててくれ。ここから奴等を攻撃する」

「仰せのままに」


アサルトライフルの安全装置を解除し、改めてスコープを覗く。

士官らしき人物が馬の上で周りの兵士に指示を出しているのが見えた。


照準を合わせてトリガーを引き絞る。


タァーン...


この世界では聞き慣れない音だろうが、私には聞き慣れた音だ。


スコープの中で士官が馬から落ちた。

狙いが外れていなければ即死のはずだ。


この集団にいる兵士はざっと300名ほど。

クラスタンプ兵は約800いるので、ここであまり時間をかけるのは避けた方がいいだろう。


セミオートからフルオートに切り替え、再度照準を合わせてトリガーを引く。

こちらに向かって走り出した兵士達が、銃弾を浴びてその場に倒れこんでいく。


弾倉が空になったので、次の弾倉をセットする。


構え直すと、敵兵は驚いて立ち止まっている。

指揮官を失い、さらに得体の知れない遠距離攻撃を受けた事で、集団は完全に統制を失っていた。


逃げ出す者。

伏せる者。

仲間を盾にする者。


もはや軍としての体を成していない。



この世界の戦争であれば、魔法にしても剣や弓矢にしても、目に見える武器や現象での戦闘になる。

なので、銃のような武器は、訳も分からず倒されてしまうといった恐怖があるんだろうな。


本来であれば当初の予定通り、昨晩のようなドッキリで驚かせて終わりのつもりだったのだが、俺を怒らせたのだから諦めてもらおう。

なによりも、これはお前たちが始めた戦争だ。


いまだに残る仄暗い炎のおかげで、頭は冷静だ。

空になった弾倉を交換し、混乱する集団を無情に打ち抜いて行く。


結局、アサルトライフルで先頭集団の半数を倒した。

弾は沢山用意しているが、このままだと時間がかかるな。次に進もうか。



飛燕を背中に担ぎ直し座席に座る。


「カラー。あの集団を左から囲うようにして周りを走ってくれ。そうだな、夜霧2台分ぐらい離れてくれれば良い」

「承知しました」


すぐに電龍を発進する。

何かにぶつかって電龍が壊れるのは嫌なので、今回もエアクッションを前方に展開しておいた。


先程までの狙撃で、逃げようとする者は全て打ち抜いている。

残っているのは塊となっている約150の集団。


再度立ち上がり、トランクから手榴弾を取り出してピンを抜き、集団に向かって放り投げる。

走りながらなので正直難しいが、なんとか集団の中に入った。


とたんに爆発が起こる。


逃げ出そうとしているが、周りを周りながら連続して投げ込んでいる。

次々と起こる爆発に、集団はあっという間に壊滅した。


残っているのは火薬の臭いだけだ。



「ご主人様。後続の集団が立ち止まっています。こちらも囲うように走れば良いですか?」


距離にして約300mの所に200ぐらいの集団が、手榴弾での爆発を見て立ち止まったのだろう。


千里眼で確認すると弓矢の準備をしている。

ちょっと面倒だな。


「そうだな。いや、ちょっと試したい事があるからこのままで良い」

「先ほどの細長い物を使われるのですか?」

「いや、そう言えば俺も魔法が使えた事を思いだしたんだ」

「...それは...今更な話ですね...」


軽くディスられてしまったが気にしない。


まずは行動不能にする為に、電撃の絨毯で包み込んでやる。

だが、ちょっと間に合わなかったようで、20本ぐらいの矢が飛んできた。


慌ててカラーの背後で小さくなる。


カンッ!カンッ!カンッ!


3本ほどカラーに当たったようだ。


「大丈夫か?」


カラーの堅牢さは知ってはいるが、やはり心配だ。

もっとも、カラーの背中に隠れている時点で、偉そうなことは言えないが...。


「問題ありません」


軽く確認したが、全くの無傷だ。流石、神が創造せし堅牢不滅型ゴーレム。


よし、カラーは問題ないとの事なので、改めて集団に目を向ける。


先程の電撃の絨毯を被って、全員がその場で崩れ落ちていた。

よくテレビで、静電気を喰らって倒れこむ芸人を見た事があるが、全員あんな感じになっているな。


そう言えば、俺はこの世界で全力の火炎系の攻撃魔法を使った事がないな。


ちなみに、炎系の魔法は、思ったほど魔力を使わない。

燃える条件さえ整えれば、あとは空気が勝手に仕事をする。と考えられる。もっとも実際は分からない。


逆に氷系は炎系よりも魔力消費は若干多めだ。


両手を前に付きだし、呪文らしき言の葉を唱える。


「獄炎陣!」


瞬間、集団を覆いつくす白に近い色の火柱が立ち上がる。

言葉を発する間もなく、兵士達は焼き尽くされたようだ。


思った以上の威力だな。


今回は範囲は限られているので、火力重視でイメージしたのでかなり高温の火柱になったようだ。

弔いの炎も白かったので、どうやら感情によっても威力が変わるのかも知れないな。


火柱が消えた後には、真っ白な灰だけが残っていた。

どうやら、急激な温度変化で骨も残らなかった感じだな。


「ご主人様。後続の集団が立ち止まりました。どうやら先ほどの火柱を見ての事だと思われます」


カラーが示す方向に大きな集団がいる。

怪我人を移送している集団だ。


「分かった。あ、そういえば次の集団は...」

「はい。少女が二人、捕らわれたままですね」


今回の殲滅作戦を始める前に、しっかりと事前確認を行ったのだ。

そうすると、怪我人を移送している集団の中に、健気に働く二人の少女を発見したのだ。


この二人は必ず救出する。


正直、彼女たちが介抱をしている兵士には罪悪感を感じるが、俺は俺の誓いを優先させてもらう。

許せ...とは言わない。これは最初から言っているように俺の我儘だ。


「よし。今回も電龍で左から周りつつ、拳銃で攻撃をしよう」

「拳銃?」

「これだよ」


と、右手に持った拳銃「コンシールドキャリー SIG P365」をカラーに見せる。


「そんな小さなもので大丈夫なのですか?」

「俺はこれが一番扱いやすい武器なんだよ」

「わかりました。では、左側から仕掛けます」

「任せた!」


カラーが操る電龍は、宣言通り向かって左側から回り込んでいく。


下手に電撃を浴びせると少女たちも喰らってしまうので、すれ違いざまに荷馬車の上の兵士を狙う。


「こいつ!!怪我人を狙うなんて!!」

「しかも敗走している所だぞ!!」


そんな罵倒が聞こえてくるが一切無視だ。

そもそもの話、お前たちが非人道的な事をしたからではないか。


実際の所、下手人は数人で士官だろう。なので、こいつらは無関係と言えば無関係なんだよな。

だが、本当の所は一切分からない。


なので、少し揺らいだ心を敢えて押さえつけ、拳銃で撃ち抜いていく。


何度も弾倉を替え、一人一人を倒していく。



俺は悪の科学者なんだ。

恨まれる事、呪われる事はすでに覚悟しているのだ。


ただ、俺以上の悪を許さない。



気が付けば、少女二人以外は全て動かなくなっていた。


荷台の上では少女たちが抱き合って震えている。

それは仕方ない事だな。

周りの人間が突然命を削り取られていく現実は恐怖でしかないだろう。


そして、それを行ったであろう人物が近づいて来るのだ。


「た...助けて...」

「まだ死にたくないよぅ~...」


出来れば怖がらせたくは無かったんだがな。


「大丈夫よ。私たちはあなた達を助けに来たのです」


カラーが進み出て彼女たちに声を掛けてくれた。

鎧姿だけど、美人のカラーであれば緊張を緩和できるだろう。


予想通り、最初はびっくりしていた二人も、少しずつ落ち着いてきた。


「あなた達、ひょっとして奴隷なのですか?」

「...はい...私たちは軍の最高指揮官だったアブマーク様の奴隷です...」

「他にも女の子は居ませんでしたか?」

「居ました...他の子達はまだあの村にいるはずです」


なるほど。じゃあこの二人だけか。

どうやって伝えるべきか...いや、今はまだ伝えるべきではないな。

心身ともに憔悴しきっている所にショックな事は良くないだろう。


カラーと軽く目を合わせ、首を振る。

それを見たカラーが頷いてくれた。


「なるほど。全員が最高指揮官の奴隷なのですか?」


やはり、私の意図を分かってくれたようで、別の話題を振ってくれた。


「そうです。ただ、アブマーク様は最初の戦闘で亡くなられたとの事で、他の指揮官の方々が私たちを...その...」

「なるほど。わかった。無理に言わなくても良い」


彼女たちがとても言いにくそうにしている事で、逆に奴等の事が良く分かった。

やはり、クラスタンプ兵は許してやる必要はなさそうだな。


「ひぃぃぃいぃ!!」


あ...しまった。

私の言葉と態度に怒気が含まれていた事を敏感に感じ取ったのだろう。彼女たちが怯えてしまった...反省...。


とたんにカラーが一瞬私を物凄い表情で睨む。

その顔には「空気を読めないんですか!!」と書いてある。


すまん!!という顔をすると、今度は「もう...仕方ないですね...」という顔になった。

いや、本当に申し訳ない。


カラーは二人に顔を向け、限りなく優しい声で語り掛ける。


「大丈夫ですよ。ご主人様はとても優しい方です。私が保証してあげますよ」

「...あなたも奴隷なのですか?」


恐る恐ると言った感じで返事の代わりに質問をしてきた。


「いいえ。私は奴隷ではありません。私は自分の意志でご主人様に仕えています。そもそも、ご主人様は奴隷を持っておりませんよ」

「私たちは...どうなるのでしょうか...」


そこでカラーが私を見る。

確かに、その話になると私が判断するしかないよな。


「あ~...まず最初に言っておくが、君たちに何かしたい訳ではないんだ。このお姉さんと話をして分かったと思うけど、君たちを助けに来たんだ」

「助けに...ですか?本当...?」

「あの...あの!すみません!私たちを助けてくれるのでしたら、お願いがあるんです!!」

「みんなを...村に残ったみんなを...助けてくれませんか?」


このお願いは想定出来ていた。


「願いは分かったよ。だけど、分かっていると思うけど、私たちは今クラスタンプと戦っているんだ。ちょっと待ってもらえるかな?」

「分かり...ました。あの、無理を言ってごめんなさい...」


彼女たちに嘘を言うつもりは無いけど、申し訳ないが本当の事も言わない、ちょっとずれた返事をする。

彼女たちも多少の違和感を感じたんだろうが、悲しいかな奴隷の身ではそれ以上の事を言う事が出来ない。


「いや、構わないよ。だけど、戦う所に君たちを連れていけないので、ちょっと離れた場所で待ってて欲しいんだけど良いかい?」

「それは良いですけど...」

「よかった。じゃあ、狭いけど、ここに二人で乗ってくれないかい?」


と電龍の側車を示す。


「...これに乗るんですか?」

「そうだ。あ、カラー、悪いが二人を乗せてやってくれないか?」

「承知しました」


男の私が彼女たちに触れるのは流石に気が引けるので、カラーに任せる。

村の少女たちの件もあるので、カラーは素直に対応してくれた。


見ると、次の集団が近づいてきているので、一旦下がろうか。

先程火炎魔法を実行した所ぐらいまで下がろう。



周りに死体があるとよろしくないので、そこから離れた場所に二人を降ろす。


「ごめんね。ちょっとここで待ってくれ。そうそう、ここに飲み物と食べ物を置いておくよ。それと、こいつも置いておくので、安心してくれ」


そう言って、星蛍ベースを起動させる。


「こ...これは何ですか?」


見た事もないものなので、ちょっと興味があるようだな。

今はそれが有難い。


「これは私の使い魔...みたいなものだ。中から小さな虫みたいなものが出てくるけど、気にしないでくれ」

「はい。わかりました...」

「あの...これ、食べても良いんですよね?」


彼女たちを確認した後、急遽用意したので簡単なサンドイッチしかないが、お腹は普通に満たせるはずだ。


「あぁ、少ないかも知れないが食べてくれ。味は保証するよ」

「ありがとうございます!!」


よし、二人はもう大丈夫だろう。

改めてクラスタンプ兵の対応する事にしよう。



後続の兵士達は全員対処した。

アサルトライフルで撃ち抜いていったので、そこそこ時間がかかったが、これで誓いは果たせた。


だが、はっきり言って、これは私の勝手な行動で、彼女たちが望んでいた事ではないと思う。

一時的な感情で動いてしまったと思っているが、後悔はしていない。


さて、二人を待たせているからな。迎えに行こう。



戻ってみると、彼女たちは星蛍ベースから出てきた星蛍を追いかけて遊んでいた。


こうやって見ると年相応に見えて微笑ましい。


「あ、ごめんなさい...」


星蛍と遊んでいた事を言っているのだろうか?

まぁ、星蛍そのものは自動回避システムを組み込んである。少女が追いかけた所で捕まる事はない。


逆に楽しんでもらえたのなら願ったり叶ったりだ。


「ん?問題ないよ。じゃあ、暗くなる前に行こうか?」


とたんに二人はお互いを抱き合い、震えだす。

あ~...しまったな...もうちょっと言葉遣いを気を付けないといけないな。


「行く...どこへでしょうか...」


とても恐れているのが分かる、震えた声で聞いてくる。

だが、伝える事は伝えないとな。


「一緒に、みんなのいる村に行こう...」


怖がっているが仕方ないな。目的を教えてあげれば落ち着くかも知れないし。

案の定、彼女たちは震えが止まり、笑顔になった。


その笑顔を見て、私は胸を締め付けられた。



今度は私が電龍を運転し、カラーが後ろに座った。

彼女たちは先ほどと同じく、側車に座ってもらう。


村に戻る道中で彼女たちに説明をした。

いつまでも黙っている訳にもいかないし、そもそも説明をするつもりでもあったからな。


ただ、彼女たちはそれ程驚かなかった。

私たちの態度を見て、何となく察していたんだろうな。



そろそろ夕方になろうという時間に、コープル村に到着した。


すでに誰も居ない村なので、物音ひとつしない。

彼女たちも村に到着してからは、一切しゃべらなくなった。


電龍を静かに停車させ、二人を促して祭壇跡まで誘導する。



そこに残っていた灰は風に飛ばされてかなり減っていたが、まだ残っている。

そして、彼女たちの遺骨も...。


「...燃やし...ちゃったんですね...」


遺骨を見て、少女が...セミアがポツリと呟く。

彼女は少女たちの中でも年長のようで、正確な所は分からないが、おそらく16歳ぐらいだろう。


もう一人はレミという名だ。

この子は少し年少でおそらく14歳。


二人とも茶髪で肩口で切りそろえている。

顔立ちも似ているので、姉妹なのかも知れないな。


まだ、詳しい事は何も聞いてはいないのだが、とりあえず名前だけは聞き出したのだ。


「すまないな。私の国では亡くなった人は火葬にするんだよ。クラスタンプでは違うのかい?」


この世界の弔いの方法は分からないからな。


「そうですね。普通はそのまま埋めちゃいます。ですが、高貴な人は燃やすって聞いた事があります」

「だから、燃やしてくれたことにちょっと驚いちゃいました」


村に来る途中で花畑があったので、そこで花を摘んできた。

今、彼女たちは九つの灰に、それぞれ一つずつ花束を置いていっている。


それを私とカラーが見守っている。


「チャム、ミリ、スー、アミーナ、フェシー、テロン、バミー、ルル、ポリィ...みんな分からなくなっちゃったね」

「また会おうねって言ってたのに...」

「でも、優しいお兄さんに会えたんだね。そこだけは本当に良かったね。私も会えたよ。でも、ごめんね...私たちだけ...」

「ごめんね...ごめん...ね...」


静かに立ち尽くす二人を黙って見守る事しか出来ない自分が腹立たしい...。

と思っていたらカラーがゆっくりと二人に近づき、胸に抱き寄せる。


「お姉ちゃん...」


二人が驚いた顔でカラーを見上げる。


「全ての事象は流れに沿って起こっている出来事。あなた達はその流れに乗っただけ。流れの先は分からない。例え神であっても全ての事象は把握出来はしない。ましてや、たかが人間が未来を見通す事は絶対に出来ない。だから、あなた達は全く悪くはないわ」


朗々と語るカラーを、不思議そうに見つめる二人。


「神様でも分からないの?」

「そうよ。だから神様は戦争を起こして、みんな居なくなっちゃったの。それが分かっていたら戦争なんてしなかったはずよ」

「うん...でも...」

「そうね。悲しい事は悲しいわよね。だから泣いて良いの。ここには私たちしかいない。だから、今は泣きなさい」

「はい...う...うぇ...うぇぇぇ...う゛ええええぇぇぇええぇぇええ!!」

「あ゛ああぁぁぁあぁああ!!」


二人はカラーの「泣きなさい」で心を解放し始めた。


泣きなさい...か...。


俺も今の内に泣いておこう。



日が暮れてしまった夜道を、急がずに電龍を進める。

二人の少女は側車の中で泣き疲れて眠っている。


結局彼女たちは1時間程泣いていた。

その間、カラーは彼女たちをずっと抱きしめていた。

泣き疲れて、カラーに体を預けるように寝てしまったので、側車に起こさないように一人ずつ乗せたのだ。


今度も私が運転をし、後ろにカラーが乗り込む。


特に会話をする事もなく、エルセリアに到着した。



砦の入り口にはタニア、リア、ミーム、キャリーが待っていてくれた。

戻る前に事前に状況を連絡しておいたのだ。


「おかえりリョウ。連絡の通り準備をしておいたぞ」

「ただいまタニア、ありがとう。悪いが彼女たちを頼む」

「あぁ、任せろ」


見ると、カラーが二人を優しく起こそうとしている所だった。

彼女たちはカラーに慣れているから後は任せよう。


「カラー、悪いがその子達を頼む」

「承知しました」


昨日から一睡もしていない状態だったのが祟ったのか、急激に睡魔が襲ってきた。

他にも何人も居るようだが、もう気が回らない。


重い足取りで砦に入った。


気が付けばキャリーが私に肩を貸してくれていた。

そんなに危ないのかな?うん、ちょっと判断が出来ないぞ...。


時間がかかったが、やっと自分の部屋にたどり着いた。

もう、今日は疲れたよ。


それにしても、あの二人を助けられた事で、救われたな。

生き残ってくれてありがとうって、伝えるの...忘れて...た...。


ベッドにたどり着く前に意識がなくなった事だけはわかったが、どうでも良かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ