表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法を信じるかい? ― マッドサイエンティストの異世界旅行  作者: 黒々猫
■■■■■■ 第1章 異世界は光の向こう側
6/55

■■■ Step006 異世界の街をマッドが歩く

今回はギルドの話です。

ファンタジーの定番討伐依頼はスライム討伐ではなく、ゴブリンだったりするんですが、今回は...?


次回は2026年3月14日(土)15:00 にStep007を投稿予定です。

私は地球...自分の世界から持ってきたリュックを持ち、タニアの後ろについて歩く。

今度も勝手口から出て、そのまま建物の裏側に回って裏通りから道に出る。曰く、こちらが近いのだそうだ。


「そういえば...リョウってお姉様とはどういう関係なの?」


家に帰って姉に会ったら、知らない男が居た。というのがリアの認識だろう。まぁ、全く間違いではないのだが...さて、どう返答したものだろうか?

と悩むのも一瞬。すぐにタニアが答えた。


「親しい友人だ」


...をい!

「友人」というのは了承していたが、「親しい」とは聞いてないぞ?


「親しいって...あれ?アタシ、今日初めてリョウに会ったんだけど?」


妹よ、その認識は正しいぞ。

姉の親しい友人であれば、すでに顔見知りのはずというのは当然の認識だ。


「ふむ。今日、つい先ほど初めて会って、そして親しくなったのだ」


タニアもタニアで全く嘘もつかずに言い切る。

確かに親しくなったといえば親しくなった...と思われるのだが、しかし、それっていよいよ怪しいと思われないか?


「あ、そうなんだ」


と、リアは納得はいかず、問いただし...アレ?納得した?それで良いのか?妹よ...。


「ちなみに、リョウは私とは別系統の魔法使いで、魔術の研鑽の同志でもある」

「え...お姉様と魔術の研鑽?」


明らかに怪訝な表情で私の顔を見る。

タニアの事はよく分からないので、その表情がどういう意味のものかが全く分からない。


「リョウに務まるの?」

「そんな事は誰にも分からないだろ?」

「...まぁ、確かにそうよね...」


まだちょっと納得がいかないようなリアだが、それ以上は何も言う事は無かった。



そうこうしているうちに、タニアの屋敷よりも大きな建物の前に到着した。

どうやらここが目的の場所らしい。

入り口に掲げられている看板らしきものには「冒険者仕事斡旋所」と書いてある。


早速中に入るタニアとリア。私も彼女たちについていく。というか、付いて行くしか方法がない。


入り口付近はちょっとしたスペース...おそらくロビーなのだろう...になっており、色んな格好の人々が行き来していた。

こちらは女性2人にマントを羽織った男が1人という、おそらく珍しい組み合わせなのだろう。全員が通り過ぎた我々を目で追っている。

ロビー内の視線を感じつつ、タニアを先頭に歩を進める。


横に長いカウンターがあり、そこにおそらく受付嬢と思われる女性が座っている。こういうのはどこの世界でも同じらしい。

その中の1つ、「討伐依頼」という札のある受付嬢の所に2人は文字通り押し掛けた。

当然私もいるのだが、現状では2人に付いて来ているだけなのだ...。一歩後ろに下がった所から会話を聞こうという算段だ。


「トモニアの洞窟の討伐依頼はまだ来ているのか?」


いきなり本題に切り込むタニア。うむ、予想通り直球勝負のようだ。

とりあえず、トモニアってなんだろうな?近くの街の名前なんだろうか?


「はい、少々お待ちください...これは...先日の依頼は既に対応されているようですね。まだ討伐報告は来ていませんが...」

「あ、それ受けたのアタシたちで、討伐終わったよ」

「そうでした。リア・ソフリート様ですよね。まずはいつものように確認をさせていただきますね」


と言うと受付台から鏡の付いていない手鏡のようなものを出してきて、リアの顔に近づける。対するリアは何もせずに立っているだけだ。

しばらくすると、確認が終わったのか受付嬢は手鏡もどきを受付台に収めた。


「リア・ソフリート様で確認できました。お仲間のミーム・グラウド様は居られませんか?」


手鏡もどきはどうやら、個人を特定する為のものらしい。

そうか、これが魔道具...「魔工」と呼ばれる物、なのだろう。


「ミームはまだ自宅に居るんだよね。だから今はアタシだけなんだ」


ミームというのはリアの相方なんだろう。

以前の「アタシたち」という事の謎は解けた訳だ。


「念のためにお伺いしますが、亡くなられたわけではないですよね?」

「冗談!!コボルドなんかで死んでられないでしょ?」


さっき「自宅に居る」って言ってたんだけどな...。


「確かにそうなのですが、これも業務の一つですので...」

「まぁ、そうだよね」


マニュアル業務、ってやつか。


「討伐報告はおひとりでも問題はありませんが、報酬はどういたしましょうか?」

「いつものように2人で折半するから、ミームが来てから貰うようにするよ」

「承知いたしました」


と、そこに男性職員...だと思われる人物が受付嬢に近づいてきた。


「お話し中の所、申し訳ありません。ちょっと失礼いたします。...これ、新たな討伐依頼がきましたので、よろしくお願いします」


と、手に持っていた書類を受付嬢に渡す。


「はい、承知しました...あ、これって...」

「そう。またなんだよな」


受付嬢と担当者の反応を見る限り、我々が想定していた事が起こったようだ。つまりは...。


「その討伐依頼の内容はひょっとして?」

「あ、はい。これはリア様が完了された依頼の再依頼になります」


やはり、またコボルドが住み着いたようだ。


「トモニアの洞窟のコボルド討伐依頼か?」

「はい。そうなりますね...あら?」


と、受付嬢が書類の記載で何かに気が付いたようだ。


「ん?何か変わった事でもあるのか?」

「はい...ちょっと別の魔物も確認されたようで...」

「別の魔物?」


ゴブリンとか狼とかだろうか?まさかアンデッド?


「はい。サイクロプスが山から下りてきたと...」


私はタニアと顔を見合わせる。

受付の空気が一段重くなった。



とにかく、今は情報の整理がしたい。それにミームの意見も聞く必要がある。

タニアが受付嬢に「依頼書を控えとして写させてもらえるか」と頼み、一旦席を外すことにした。


ちょうど昼どきだったので、近くの飲食店で食事をしながら...という話になった。


ともかく、施設の対面にある飲食店に入り、タニアにお任せで注文をした。

理由は簡単。私はこの世界の貨幣を持っていないからだ。


ウェイトレスが注文を聞いて下がったので、タニアが椅子に深く腰掛けながら今回の討伐依頼についての疑問を口にした。


「サイクロプスはこの辺では山岳地帯に生息していて、そういう意味ではベールナル山脈に居るはずなんだが...」

「そうよねぇ...まさか、洞窟の近くの森の中で見かけるとは思わないもんね」


相槌を打つリア。


先ほどの討伐依頼の内容を確認してみる。

洞窟にはコボルドが住み着いている事、森の中でサイクロプスが発見された事、トモニアという村に近い所だったので、同時に討伐して欲しいというものだった。



しかし、サイクロプスかぁ...。

一応知ってはいるが、私の知っているサイクロプスと一緒かどうかが分からない。


「リアはサイクロプスに出会ったらどうするのだ?」

「そうねぇ...ミームと一緒でもまずは逃げるかなぁ...2人とも接近戦が主体だから、巨人族のサイクロプスには分が悪いもんね」

「そうだな。個体にもよるがリアの3倍はあるだろうからな。戦士のミームでも歯が立たないだろう」

「アタシなんか肉弾戦だからね。こっちの攻撃を当てる前に殴られちゃうよ」


リアは肉弾戦で戦う聖職者で拳闘士なんだそう。


「確かにな。そこら辺の木で殴られたら一撃で死ねるな」

「本当!!あの一つ目で睨まれたらそれだけでも震えちゃう!」


死ねる話を和気あいあいと話す美女と美少女。シュールだな。


とりあえずはこちらの世界のサイクロプスは私の知識とあまり変わらないようだ。

いつまでも黙っていると変に思われそうなので、聞いてみたい事を聞いてみようか。


「そもそも、そんな所にサイクロプスがいるのはなぜなんだ?」

「それは分からない。ただ、普通は平野部にではなく山間部、この場所からだとベールナル山脈の方にいるのだが...」


なるほど。私の知識では生息地までは知らなかったが、ここでは山の方なんだな。

まぁ、そうかも知れないな。巨人族という事なので、森の中では動きにくいだろうし、単純なイメージとしては平原にいるような感じがしない。

ともかく、もうちょっと考えてみよう。


「簡単に考えて、サイクロプスよりも上位のモンスターが山で暴れていて、サイクロプスが山から下りてきた」

「確かに可能性の一つとして考えられるな」


でも、自分で言ってても、これは可能性は低い気がするなぁ...。

そもそも山にサイクロプスよりも上位の魔物がいる可能性はあるだろうが、それだと山の方の異常が先に発見されそうだし。

そういえば、山から下りてくると言えば、日本では食い物が少なくなって熊や猿が町中に現れたりしていたな。


「少し捻って、山間部でのサイクロプスの食い物が少ないので、山から下りてきた」

「...そういう発想はなかったが...なるほど、そういうのも可能性としては考えられるな」


まぁ、この世界では自然破壊や環境問題のような事は発生していないだろうからな。私の世界はやはり色々と問題があるのだろう。

それは置いておくとして、食べ物が少ないかどうかは別にして、こうは考えられないか?つまり...


「もしくは、コボルドが増えたからサイクロプスが下りてきた」


サイクロプスが草食とは思わなかったので、思わず思いつきで言ってしまったが...サイクロプスがコボルドを喰っている...うむ、見たくはないな。


「なるほど...それも考えられるな。しかし、ここで考えてみても、現状ではサイクロプスが下りてきた原因は分からない」

「とりあえず、行ってみれば何か分かるかもね」


そうだよな。それしかないだろうな。

そうなると結局あの依頼を受けるという事になる。それはそれで良いのだが...私はどうしようか?

と、そこに料理が運ばれてきた。美味しそうな匂いがしているので、食べてから考えよう。



料理は期待通りとても美味しかった。

こちらの料理の事は全く分からなかったので、タニアのお薦めというのを頂いた。

タニアやリアとは違う料理で、ハンバーガーのようなものを頼んでくれたようだ。


この料理だが、何の肉かは分からないが、かなり噛み応えのあるジューシーな肉料理だった。

香辛料が効いているので、少々ピリッとしているが、私は少々辛いカレーが大好物なので問題はない。

思わずがっつくように食べてしまった。御馳走様でした。


そして、食後のデザートが秀逸であった。

見た目は単なるヨーグルトのようなもの。もっとも白くはなく少々黄色く見える。恐る恐るレンゲのようなスプーンですくいあげて口に運ぶ。

...甘い!!ちょっと酸味があるのがアクセントになっていて、非常に美味である!!

出されたコーヒーのような飲み物も、このデザートに合っており、かなり堪能できた。


「で、どうするのだ?この依頼は受けるつもりなのか?」

「ミームと相談しなきゃだけど、さすがに今回のは無理かなぁ...」


サイクロプスだもんな。


「今回の依頼、受けるなら私も手伝うぞ?」

「ほんとに!?」


ちょっと驚いたようだが、とても嬉しそうに反応する。


「あぁ。しかも今回はもれなくリョウも手伝ってくれるそうだ」


ちょうどコーヒーを飲みかけていたので危うく噴き出すところだったが、事なきを得た。

いや、それよりも...


「をい!ちょっと待て!!いつ私がそんな事を言った!?」

「なんだ?友よ、手伝ってくれないのか?」


と、さりげなく「友」を強調して、拗ねたような表情を作る。

色んな意味で卑怯だ。


「手伝わないとは言わないが、口に出して「手伝う」と言った記憶がないのでな。驚いているだけだ」

「手伝うつもりもあるし、驚いているだけなら問題ないだろう?」


個人的に反論が出来ない事をさらりと言う。

内心で「この娘...恐ろしい娘」と白目になっていたが、それは顔に出さずにちょっと不機嫌そうな顔をして、腕を組み、無言でタニアを睨んでやる。

すると、タニアが薄く頬を染めながらちょろっと舌を出してこちらを見る。いわゆる「てへぺろ」という奴だ。


元の世界でも「てへぺろ」は見たことがあるが、ここまであざとくやって、ここまで可愛いのは見たことがない。

一瞬にして睨んでいた顔が緩みそうだ。しかし、私にも多少は意地がある。頑張って緩みそうになる顔を維持する事に総力を挙げる。

そんな我々のやりとりを、にんまりと笑いながら眺めていたリアが、ふと私の顔をみて質問してきた。


「ところで、リョウって...戦えるの?」


ナイス質問!!

タニアを睨む事に疲れてきた顔を緩め、ちょっと思案する。

まぁ、たしかにサイクロプス討伐の手伝いといえば当然、戦力としての手伝いとなるだろう。

私自身は体を動かす方もできなくはないが、言うほど得意ではない。

なので、自分が研究開発した武器を使用する事になるだろう。実際、手持ちのリュックの中には護身用にと持ってきたものもある。が、これでは物足りないな。


「...近接の戦闘力はないが、遠距離からならば...」

「あぁ、そうか。リョウも魔法使いだったのよね」


まぁ、最初にそんな話をしていたからな。しかし、今回は魔法よりも開発した武器のテストも兼ねて、色々と試したい。


「いや、今回は遠距離武器で戦わせてもらう」

「え、遠距離武器?...弓矢とか?」

「それよりももっと強力な武器だ」

「...どんな武器よ...」

「見てのお楽しみだ」


おそらくだが銃に対しての知識が無いと思われるので説明を省いた。いや、説明をしても良いのだが、コーヒーも飲み終わったので店を出るタイミングでもあったのだ。

間違っても面倒だと思ったのではない。



食事が終わり、我々は飲食店の外に出た。

そして、対面の施設に再度入り、依頼を受ける事を告げる。

そこで私も依頼を受ける為に、冒険者としての登録を行った。

ちなみに、タニアはずいぶんと前に登録を済ませていたんだそうだ。


登録には名前と年齢と職業を書けば問題ないらしい。なぜかタブレットのようなものにそれらを記載する。

次に行うのは個人情報の取得のようで、例の手鏡のようなものを顔にかざされる。これが一体どういうものなのかが非常に気になるな。

手続きも終わり、これで私が登録された事になった。なお、登録料は無料なんだそうだ。


冒険者証とでも言うのだろうか、非常に硬い小さな石板。大きさは名刺程度だ。そこに私の登録情報が書かれていた。


区分:冒険初心者

名前:リョウ・カダヤ

年齢:25歳

職業:魔法使い助手

   悪の科学者


ゲーム等でよく見る「レベル」というものは存在しない。そりゃまぁ、そうだよな。

その代わり、「冒険初心者」「冒険者」「上級冒険者」の3区分があり、これらは仕事の貢献度から斡旋所にて指定される。

当然、私は「初心者」で、タニアやリアは「冒険者」。この施設で登録されている冒険者には「上級冒険者」はいないとの事。


ちなみに、いくつの依頼をこなせば「冒険者」になれるのか、というのは決まった定義はないが、難易度が低くても魔物討伐をいくつか完了すると「冒険者」にランクアップするそうだ。

なので、討伐以外の簡単な依頼...例えば薬草の採取のような戦闘を行わない依頼ばかりを受けていたら、いつまで経っても「初心者」から抜け出せないとの事。

今回はかなり難易度の高い「サイクロプス討伐」なので、これ1回で「冒険者」にランクアップする可能性があるそうだ。


それよりもだ。

個人的には「悪の科学者」が「魔法使い助手」の下になっているのが気に食わない。が、この世界では「科学者」なる職業が存在していないので、一番目に書けないのだそうだ。残念。

こうなれば、この世界で「悪の科学者」を世に知らしめようではないか!!


「じゃあ、アタシは今からミームの所に行って依頼の話をしてくるよ」


そんな私の葛藤も知らず、リアは依頼受諾の話を相方のミームに知らせに行くという。


「ミームはこの依頼に参加すると思うか?」

「アタシたち2人だと受けないけど、お姉様が協力してくれるなら問題ないと思うよ。ミームも依頼を受ける事になったら、2人でもう一度ここに来るつもり」

「そうか。では出発は明日の早朝としたいので、ミームには今夜は我が家に泊まってもらうようにしてくれ。それで問題はないか?」

「そうだね。ミームにも言っておくよ」


そういうと、走り去っていった。

元気の良い娘だ。思わず近所の女子高生を思い出してしまった。


だが、胸の奥の違和感は消えない。

コボルドの再発...それだけなら、まだ『予想通りの話』で済む。サイクロプスが混ざった瞬間から、不穏な気配を漂わせてきたのだ。


簡単な話ではすまないよな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ