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魔法を信じるかい? ― マッドサイエンティストの異世界旅行  作者: 黒々猫
■■■■■■ 第1章 異世界は光の向こう側
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■■■ Step005 最初の冒険はマッドな予感

女性...少女が飛び込んできた所からのお話です。

さて、少女は誰で、どうして飛び込んできたんでしょうね。


次回は2026年3月7日(土)15:00 にStep006を投稿予定でしたけど、気が変わって第一章を全部投下します!

あまりにも突然...いや、廊下を走ってくる足音には気が付いていたのだが、まさかこの部屋に飛び込んでくるとは思っていなかった。

あの勢いだと間違いなくこの部屋を通り過ぎるはずなのに...


で、ドアを勢いよく開けて乱入してきた人物...見る限り少女と言ってもよさそうな年頃に見える...が、私の対面に座るタニアのそばに走り寄る。

当然、私の方にも気が付いたのだが...なぜ驚く?ビックリしたのはこっちの方だ。しかし、タニアに似ているな。かなりの美少女だ。


少女の一連の行動を見ていたタニアは額に手を当てて難しい顔をしている。そんなに額にしわを寄せると癖になるぞ?


「...リアよ...客人が来ている事は侍女のシャインから聞いておらぬのか?」

「いいえ全く...って、お姉様!彼...男!?」


私が女にも見えるって事か?


「...姉として妹の言いたい事は分かるが...それ以上リョウに失礼な事を言う事はゆるさん。まずリョウにきちんと謝りなさい」


妹の言いたい事が分かるんかい?

タニアってどういう女性なんだ?


と、私の心の叫びは届く事はなく、タニアはさらに眉間のしわを深くしつつ、言葉もかなりきつめだ。まるで親のような対応だな。


よく分からないが、この姉妹の年齢はそれほどかけ離れているようには見えない。

乱入してきた少女...妹のリアをよく見る。かなり動きやすそうな白い服装...聖職者を彷彿させるような印象だが...

で、先ほどまで外に出ていたのだろう、うっすらと埃にまみれている。


「あ...ごめんなさい。彼...お姉様の男じゃないんだ...?」


謝ってきたが続く言葉で台無しだな。

予想の範囲内の言葉だが...タニアは貴族だったよな?その妹のリアも貴族のはずなんだが...言葉が悪いな。


「リア!!リョウに失礼でしょう!!」


あ、マジで怒ったようだ。リアが非常に驚いた顔をしている。


個人的には『タニアの男』と言われても全く気にはしないので、ここは大人の対応をしておこう。

もっとも、こちらの対応を間違うと私がタニアの地雷を踏む可能性はあるのだが...。


「タニア、そんなに怒らなくても良いよ。私は別に気にしてはいない」


とりあえず、姉妹の間に入って仲裁しよう。ここでは私が最年長だしな。


「よく分からないけど、タニアが男性と親しく会話をしているのが、妹から見たら珍しいという事なんだろう?」


もっとも、私には何が珍しいのかが全く分からないのだが...


「あ...いや...まぁ、そうなんだが...」


タニアが何気に言いづらそうにしている。言いたくない事は無理に聞く必要もあるまい。

それを見て我に返ったのだろう。リアがこちらを向いて頭を下げてくる。


「ごめんなさい!私、タニアお姉様の妹でリアと言います。姉をどうぞよろしくお願いします!!」


この子は天然のトラブルメーカーだな。ますます地雷を踏んでいるぞ。

が、ここはあえてスルーだな。タニアがリアを睨んで口を開こうとしている。

このままにしておくと大変な事態になりそうなので、慌てて話題を変えてやる。


「それよりも、慌てていたようだが、何かあったのかい?」

「あぁ!!そうそう!ちょっと困った事になってて、お姉様に相談しに来たんだ」


あっという間に素に戻ったのか、年相応のしゃべり方になってタニアに向かって話を始めた。


「困った事?」


まだその顔を険しくしていたタニアだが、すこし怪訝そうな顔にしながらリアに話の続きを促す。

タニアの反応を見る限り、この手の『相談』は頻繁にあるものと推察できる。


「以前からコボルドがトモニア近くの洞窟に住み着いたりしてたんだけど、その間隔が短いの」

「間隔が短いというのはどれぐらいなのだ?」

「えっとね、討伐しても数日...2日ぐらいでまた新しい奴らが住み着いてしまうみたいなんだよね」


私でも、数日でコボルドが住み着くっていうのは早い気がするぞ。


「おかげでちょいちょい稼ぐことは出来るけど、奴らの討伐って面倒なんだよね」


最弱の妖魔の一種であるコボルドとは言え、危険がないわけじゃないだろうしな。

もっとも、私の認識のコボルドと一緒であれば...だが。


「あいつら弱いんだけどさ、数が多ければそれはそれで脅威だし、それ以前に奴らは気持ち悪いんだよね」


貴族であるタニアの妹のリアも貴族のはずだろうに、冒険者のような生活をしていて、それで稼いでいるらしい。

非常によく分からない状況なのだが、これが異世界なのだろう。

それよりも、問題を解決する方向で考えるか。

その中で分からない事があるので、リアに聞いてみる事にする。


「ちょっと聞いていいか?」

「なぁに?」

「その洞窟にコボルドが住み着くなら、その洞窟を使えないようにしてしまうっていうのはダメなのか?」

「え?...えっとえっと...それって、どうなんだろ?やっちゃっていいのかな?」


それを私が聞いているのだが...とりあえず、私の質問を補足しておこうか。


「街でその洞窟を利用しているというのであればダメだが、そうでないならコボルドが住めないように入口を塞ぐとか方法はありそうだが?」


リアは私の質問には答える事が出来ないようで、姉であるタニアをチラチラと見ている。

それを見ていたタニアが苦笑いをしながら私に答えてくれた。


「確かにリョウの言う事にも一理あるが...たぶんダメだな」

「それはどういう理由だ?」

「街では公には利用はしていないが、冒険者ギルドの依頼の中には『薬草採取』なるものが度々あるんだ」

「なるほどね。じゃあ次だ。コボルドが何故洞窟に住み着くのか?」

「そんなの簡単だよ。奴らは暗い所が好きなんだよ」


リアが即答で答えてくれる。まぁそうだとは思うし、まずはそういう回答があると続きの疑問を考えやすい。


「明るかったら住み着かない?」

「えっと...どうなんだろ?」


リアは答えられない。そうなるとタニア先生が回答をしてくれる。


「コボルドは確かに洞窟のような暗い場所に住み着く習性はある」

「洞窟は森の中にある?」

「森の中というよりも、森の外れだな。そしてコボルドは森の中にも居る」

「と、言う事は洞窟のコボルドを退治しても森から次々にやってくる。っていう推論が立つわけだな」

「そういう事だ」


タニア先生は私の回答に満足してくれたようだ。


「じゃあ、次だ」

「まだあるの?」

「何を言う、まだ推察は始まったばかりではないか」


リア君は授業が嫌いなようだが、問題の当事者なのでしっかりと聞いていてもらおう。


「推察って何!?」


あえて聞こえなかったことにした。


「そもそも、コボルドが繁殖力が高いとは言え、いままではそんなに頻繁に洞窟のコボルド討伐はなかった...そうだな?」


と、リアに聞く。先ほどの質問に答えなかったのが気に入らないのか、可愛く頬を膨らませたまま頷くだけで返事をする。まぁ、よかろう。


「そうだとすると森の中のコボルドも多くはなかったと思われる。森の中のコボルドが増えた原因はなんだ?」

「単純に繁殖力が上がったっていうのも考えられるが、現実的ではない。おそらく森の中のコボルドの個体数が増えた...だろうな」


さすがタニア。よく分かっている。


「そうだな。で、単純に個体数を増やすには...他所から入ってくる事が考えられる。おそらくこれが今回のコボルドが増えた原因だと思うが?」


もっとも、これは私の推察ではなく、色々読んだファンタジー小説からの知識なのだが...


「ふむ。私もその考えに異論はない。しかし...」

「なぜ増えたのか...が、分からないな」


もちろん原因が確定した訳ではないが、原因としてはこれが一番確率が高い。


「アタシもよく分かんないよぉ~...」


リア君はもうちょっと考えようね。

ともかく、リアにも分かりやすいように話をまとめよう。


「単純に考えるなら、他所で生息できなくなって逃げてきた...というのが単純だな」

「コボルドは妖魔とはいえ最下級の存在だ。いくらでも脅威となるモンスターはいるからな」

「しかし...そうなるとコボルドよりも脅威となるモンスターが街の近くに潜んでいる可能性もあるという事だ。これは大問題だぞ!?」


そこまでの推察を聞いた時点でタニアの顔が曇る。


ここは異世界だ。

警察のような役割を持つ騎士もいると考えられる。

が、本当にいるかは分からないので、その辺はあやふやにしなければならない。これがなかなか大変だ。


「この街を守る...組織は無いのか?そこに事情を説明して、警備を強化するなりする事は出来ないのか?」

「このエルセリアには騎士が駐屯していて、騎士が警備や治安維持などを行っている」


やはり騎士は存在しているらしい。


「しかし、それを統括する領主は隣の街に住んでいて、騎士を動かすには領主に話を通さなければならない」


騎士がどこに所属しているのか?っていう事だな。


「一番は冒険者ギルドに話を通して冒険者に対応してもらう事だが...依頼するにはある程度の情報を提供する必要がある」


依頼に関してはそうだけど、それには問題があるな。情報を揃える時点で被害が甚大だ。


「今までのはあくまでも考えをまとめただけの言わば『机上の空論』でしかない」


案を1つ出したらこれだけの回答が返ってきた。さすがタニア先生だ。

リアは?というと、先ほどのメイドさんを呼んでお茶を頼んでいた。しまった。私の分もお願いしようと思っていたのだが...。


ともかく、リアはタニアの隣に座り、タニアの話を聞いている。もっとも、理解しているようには見えない。色々残念な美少女だ。

リアは置いておき、私とタニアの会話は進んでいく。


「コボルドが頻繁に洞窟に住み着いている。というだけの事実では難しいという事か」

「そういう事だ」

「実際に森の中にコボルドが溢れている...という事実だけでも確認しなければならない...という事か...」

「少なくとも、それは必要だろうな」


ここまで話をした時、さきほどのメイドさんが部屋に入ってきてリアにお茶を差し出していた。

次いでタニアのカップにもお代わりを注ぎ、私にも注いでくれた。いやぁ、よく出来たメイドさんだ。

一口飲んでのどを潤す。はぁ~...美味しい。

いや、和んでいる場合ではないな。


「しかし、『普段はこれぐらいの個体数だ』というものがあるわけではないのだろう?」

「そんなものは存在しない。基本的には見つければ討伐隊が組まれ、ある程度討伐されれば終わる」


そんなもんだろうな。


「そういう意味では通常は『森の中にコボルドは存在しない』ということになってしまうが...頭からそれを信じているものはいない。普段の個体数はそれゆえに『分からない』というのが答えだな」


森の中のコボルドについては、これ以上は何もなさそうだな。


「では次だな。洞窟は森のどこら辺にあるんだ?」

「洞窟は、街から1日ほど北西に歩いた先にある。洞窟は森...ベールナル大森林の東の端にあって、森林の北側にはベールナル山脈がある。洞窟はその山脈を成す山の麓にあるのだ」


かなり詳細な情報だな。

ひょっとして?


「タニアは行った事があるのか?」

「私も何度か冒険者として洞窟に行った事がある。もっとも、その時は薬草採取の依頼をしていたがな」


冒険者の経験があるのか。それは非常に助かるな。

リアからの話が当てにならない感じだからな。


「その時の話でも良いが、そのあたりで脅威となるモンスターはいたのか?」

「ベールナル大森林の中は正直分からないな。ただ、聞いた話では森の奥深くには誰も住まない屋敷があり、そこはアンデッドの巣になっているとか...」

「あ、その話はアタシも聞いたことがあるよ」


突然リアが会話に入ってきた。つい先ほどまで、私とタニアの会話が面白くなかったのか、お茶を飲みながらうつらうつらしていたはずなのだが?


「なんか100年前ぐらいに変わった領主がいてね、森の中に避暑地として館を建てたんだって。で、そこに住んだ時にね、領主の事が嫌いだった隣の領主が突然館に攻めてきてみんな殺しちゃったって言ってたよ」


なんだ、その話は?普通にめちゃくちゃだな。


「その話は私も聞いた事があるな。が、自分で言っといてなんだが、この件には全く関係ないだろうな」

「どうして?そのアンデッドがコボルドを追い回しているかもしれないよ?」

「それは難しいぞ。そもそもアンデッドはむやみやたらに歩き回ったりはしない。館の外に出る事はないはずだしな」

「...じゃあ、なんでその話をしたのよ...」


またしても可愛く頬を膨らませる。どうやらこれは癖のようだな。


「正しい情報整理をする為には、違うなら『違う』という事で整理しておく必要があるからさ。『違う』という事も立派な情報だぞ?」


それを聞いてさらに頬を膨らませる。どうやらこれは『リア』ではなく『リス』のようだな。

と、くだらない事を考えていたら、タニアがさらに情報提供をしてくれた。


「ベールナル山脈にはハーピー等の鳥類のモンスターやオーガ等の大型のモンスターもいる。あとは狼とかかな...。どれもコボルドにとっては脅威だが、これらは昔から存在しているからな...。今更脅威になった...とは考えにくい」


タニアも話をしながら情報整理をしているようだ。まぁ、私の経験上こういうものは複数人で進めるのが一番効率が良い。


「森の中と山脈は原因になるようなものは無い。という事だな」

「そうだ。あとは森の南側だが...隣国クラスタンプだな」

「あ~、そういえばあの国、またちょっかいを出そうとしているみたいだね。なんか国境近くで大規模な軍隊の練習をしていたみたいだよ?」


それを聞いた私とタニアは思わず顔を見合わせた。

そしてすかさずタニアが聞く。


「リア、それはいつの話だ?」

「いつ?軍隊の練習がいつって事?」

「そうだ」

「えっと、それはちょっとわかんないね。アタシもそれを聞いたの今日だもん」


この世界での情報の伝わるスピードは分からない。

だが、リアが「今日聞いた」という事は、割と直近に演習があったという事だろう。


「という事は...噂の回り方を考えると、一月前から三月前ぐらい、って所か」


演習場所の正確な位置も規模も分からない。

...地形図が欲しい。次にこちらへ来られるなら、最優先で手に入れよう。


「そうだろうな。普通は隣国の情報は簡単には入ってこないのだが、ここは昔クラスタンプ領だったせいもあって、意外と隣国との人的交流がある。従って軍隊の練習というのは本当だろう。もっとも規模的なものは分からないが...」


タニアも私の予想に頷く。

とりあえず、これが原因だと考えた方が一番スッキリする。


「洞窟のコボルド退治の依頼の頻度が増えたって言ってたけど、リアが感じたのはどれぐらい前から感じたんだ?」

「ん~っと...それを思ったのは今日なんだけど、なんとなく多いな~って思ったのは...5日前ぐらい?」

「5日前にコボルド退治をして、今日もその依頼があった?」


「違うよ。5日前にコボルドを倒して、そういえば最近はちょくちょくこの洞窟に来てるなぁ~って。で、翌日にこの街に戻ったらまた討伐の依頼があってね。『しまった、打ち漏らしたか』って思って急いで洞窟に行ったら、今度は前よりも増えててね。苦労して今度はきっちり倒して今日この街に戻ってきたんだ。で、ギルドに行くのがちょっと嫌だなぁ~って思って。でも、これはお姉様に相談した方がいいなぁ~って思って...」


どちらにしても、軍事演習の後にコボルドが増えている――可能性は高い。


「森の中のコボルド討伐という依頼はギルドにはないのか?」

「え?それもあるけど、アタシたちはそれはやらないなぁ...だって、森の中だと広くてなかなか大変だもん。それにその依頼はず~っとあるからね」


『アタシたち』という単語が気になるが、それ以上に気になる事があるぞ。


「ずっと?」

「うん。えっと...ひと月ぐらい前からずっと?」


なぜそこで疑問形になるのか分からないが、ひと月ほど前から森の中のコボルドが倒しても倒しても減らない、という事なのだろう。


「そのひと月ぐらい前から洞窟には何回行っているんだ?」

「えっと...8回ぐらい?」


だから、なぜ疑問形になるんだよ!!それはともかく、8回も行く前に気が付けよ!!

見るとタニアも同じ事を思ったのだろう。額に手を置いて天井を見上げている。


しかし、ギルドへの依頼に関しては領主も知っているという話になっている。

だとしたら依頼の頻度が上がっている事も知っているはずなのに、ここの領主は何をしているのか...。


なんとなくだが...きな臭いな...。

とりあえず、リアには情報収集をしてもらった方がよさそうだな。


「リア、悪いが今からギルドに行って依頼がどうなっているか見てきてくれないか?」

「いや、私も一緒に行こう。リア一人だと心配だ」


確かに心配だよね~。


「リョウも付いて来てくれ。私では気が付かない事もあるかも知れない。すまんが頼む」

「あ...えっと、わかった」


どうやら、まだ自分の世界に戻る事が出来ないようだ。

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