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魔法を信じるかい? ― マッドサイエンティストの異世界旅行  作者: 黒々猫
■■■■■■ 第5章 エルセリアの新たな始まりはマッド風味
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■■■ Step047 マッドサイエンティストが目指すもの

夜になり、広場の天幕でパストングとファイを交えて情報共有と会議を行う事になった。

天幕には私とパストングとファイの他、当然タニア、リア、ミームとカラーが居る。


ちなみに天幕の外と砦の外では、今日戦闘に参加した兵士達がまだ騒いでいた。


「それにしてもファイが来るとは思っていなかったから驚いたよ」


会議を始めようかと思ったら、パストングがファイに話しかけていた。

同期と聞いていたから、まぁ仕方ないか。


「俺は一応タニア様の事は聞いていたからな。だが、タニア様と一緒に来たのは副官殿とは思っていなかったな。てっきりお前が来るものだと思っていたぞ」

「いや、流石にそれは無理だな。領主が突然変わってこっちはかなり混乱したからな」


同期二人が揃うと、話も弾むようだな。

まぁ、会話の邪魔をするつもりはないので、黙って聞いていたのだが、急にファイがこちらを見る。


「副官殿は本当に...こう言ってはなんだが、変な人だな。あの乗り物もそうだが、戦い方が極端だ」

「それはどうも...」


褒められている感じはしないな。

本当に「変な奴」と思われている気がする。


「お前に見せてやりたかったぞ。あの領主交代劇を...」


無理矢理話を変えようとしたのか、天然なのか、パストングが暴動阻止の場面を話し始める。


「その話はそちらの兵士達から聞いた。だが本当なのか?国王陛下が現れたという話は」

「本当だ。ほぼ全ての兵士が見たんだぞ。当然私も見た。あの神々しいお姿は正に神の代理人であったぞ」

「それ程のものであれば俺も見てみたかったな」


何時でも見せる事は出来るんだけど、流石にそれは禁じ手だよな。

機会があれば見せてあげても良いけど、きっと機会はもうない。


さて、このまま二人の話を聞くのは時間がもったいないので、ここらで止めよう。


「そろそろ今後の話を少ししたいんだが、良いかな?」

「あぁ申し訳ありません。思わず懐かしくて話し込んでしまいました」

「いや、それは良いんだが、まずは今後の話をさせてくれ。その後思う存分話をしてくれ」


放っておいたら夜通しでも話をしてそうだな。まぁ、明日は急ぐ用事はない。

明日の昼過ぎぐらいまでは放置しておこう。


「で、まずクラスタンプ軍だが、私が確認した所では約半数がコープル村に到着したようだ。まだ到着していないのは単純に足が遅いか、力尽きたかだな」


とにかく負傷者が多かった。なので、移動はかなり遅かった。

軍の指揮官も重症だったようで、馬に括り付けられて移動しているのが千里眼で確認できた。


追撃をすれば全滅させられたと思うが、それでもこちらに被害が出てくると考えると躊躇したのだ。


「毎回思いますが、その情報はどうやって取ってきているんですか?ぜひ教えていただきたいのですが」


パストングがしかめ面で聞いてくる。

個人的にはその気持ちは良く分かる。が、これは教える事は出来ない。


少なくとも、今はね。


「それは秘密だ。私の情報は私とタニア達に関わる事以外では使わないし、使わせない事にしているんだ」

「それは国王陛下も...という事ですか?」

「タニアが関係しなければ、国王陛下にも情報提供はしない。私はタニアの部下だが、国王陛下の部下になったつもりはないからな」

「それ...良いのですか?」


パストングが凄い顔で睨んでくる。

そりゃそうだろうな。自分の国の国王を蔑ろにされた気分だろうから。


「いや、本当はダメだろう。別に陛下を蔑ろにするつもりではないんだ。だけど、譲るつもりはない。例えそれが国王陛下でもな」

「分かりました...今はとても助かります。しかし、これだけ確認させていただいても良いですか?」


今度はファイが聞いてきた。


「どうぞ」

「その情報、信憑性は?」


まぁ、そこは気になるよね。


「君たちがオクルに居た事を知って、今日接触をした。これが全てだろ?」

「確かに...信じざるを得ないですね」


自分の体験は嘘ではないからな。


「気持ち的に信じられないと思うのは分かるよ。だけど、タニアの副官として嘘の情報は出さないから信用して欲しい」

「分かりました...ところで、パストングはどうやって信じたんだ?」

「国王陛下のお姿を見た時からさ。あれを見た後だったら副官殿の異常は納得出来る」

「やっぱり異常なんだな...私は...」

「それ、今更よね」


と、ツッコミを入れたのはリアだ。

有難いツッコミだが、この際無視だな。


それに無意識に同意したかは分からないが、ファイが普通に質問をしてくれた。


「話を戻して、コープルに入った約半数と言われるのは、どれぐらいでしょうか?具体的な数字は分かりますか?」

「約800名だな。元々2,000だったのが半数以下になった」

「それは...凄まじいですな...」


その「凄まじい」はどういう意味か分からないが、単純に今回の戦闘結果が敵を半減させた現実を指している気がするな。

通常、敵の戦力を半数にするのは、かなりの戦果となる。

大抵の場合、3割も叩けば大勝利と言われるのだ。


「数としてはまだ脅威だが、集団としては役に立たない気がするな。もうこのまま国に帰って欲しいんだけどな」


個人的にはこちらの損害を出したくない。

このままフェードアウトしてくれるのが一番良いんだけどな。


「追撃しないのですか?」

「コープル村の家屋を損傷させたくないんだよ。村人を元に戻してやる時に修理しなければ住めないっていうのは...ちょっと困るかな」

「そこまで考えておられるのですね」


パストングが目を丸くして驚く。

見ると、タニアも含め全員が驚いているようだ。


そんなに変な事を言ったつもりはないんだけどな...。


「コープル村の住人には、出来るだけ早く日常に戻ってもらうのが一番だからね」

「分かりました。ですが結局どうされますか?おそらく追撃しなければならないと思うのですが...」


そうなんだよな。

傷が癒えるまで居座られても正直困るんだよ。


「追い出す為には追撃しないとダメだろうね...ま、今夜ぐらいはゆっくり休んでもらって、明日には出て行ってもらえなければ追撃しよう」

「お優しいのですね」

「違うよ。自力で帰ってもらうのが一番楽だからさ。死体の処理をするのも大変だろう?」


殺すだけなら今からでも私が出向いて、銃を乱射するだけで十分だ。

だが、復興をするなら出来るだけ面倒な事はしたくない。


「...確かにそうですね」

「出来るだけ、楽になる方法を考えているだけさ」


本当に全員無事に自国に帰って欲しいんだよね。

甘いのは承知の上なんだけど、結局の所、兵士は国の意向に振り回されているだけなのだ。


それよりも気になる事があるので、ファイに質問をぶつけてみた。


「ところで、クラスタンプの士官は何かしゃべったかい?」

「命の確約をしたら色々としゃべってくれました」


比較的傷の浅い、だが満足に動けず放置すれば確実に死ぬ状態の士官を選んだそうで、割と簡単だったそうだ。

まぁ、命あっての物種だからな。


7人の自白内容には多少の幅があるが、基本的には同じ内容との事。


要は、エルセリアを落とした後に、さらに3,000の兵士を派兵して、マートン、オクル、トモニアを占領する予定なんだそう。


エルセリア軍800、先遣隊2,000、そして本隊の3,000で5,500の軍隊だ。

大部隊という訳ではないが、かなりの人数が派兵される事になる。


「クラスタンプは大きな穀倉地帯がないので、昔からトモニアを狙っていました。今回も最終目的はトモニアだと思います」


ファイがクラスタンプの事情を説明してくれた。

やはり、いつの時代も食料確保が国の一番の命題になるんだな。


「まぁ、食べ物が豊かである事が国の豊かさに繋がるからな。クラスタンプとしても穀倉地帯がどうしても欲しいんだろうね」

「こちらとしては大迷惑ですがね」


違いない。


「クラスタンプの情報はそれぐらいかな?」

「そうですね。他には魔石を使った作戦っていう話も聞いてますが、ちょっと良く分からない話で...」

「魔石?どういう作戦なんだ」


パストングの言葉に、今まで黙って聞いていたタニアが驚いたように会話に割って入って来た。

コボルド討伐の際に見つけた魔石の件があるからな。確かに興味がある。


「なんでも、魔石を2つエバン殿に渡したそうで、それを使って魔物を集めるとかなんとか...」


おいおい...2つって事はあと1つあるって事か?


「実は私たちがコボルド討伐の際に魔石を拾ったのだが...」

「そうなんですか?」


パストングがかなり驚いている。

パストングが知らないって事は、エバンはかなり情報統制を敷いていたようだな。


しかし、そういう事ならエバンにも色々と聞いておきたい所だ。

話してくれるかどうかは不明だけどな。


「あぁ。魔石を取り込んだと思われるコボルドが居て、かなり強力な魔物になっていた。そしてコボルドも大量に集まってきていたぞ」

「それ、トモニアの洞窟の奴ですよね。噂話は聞いた事があります。あれ、タニア様が討伐されたんですね...って、あれ?サイクロプスも居たはずでは?」

「そうだ。サイクロプスが2体現れたので、それも討伐したぞ。コボルド50体、サイクロプス2体を一日で討伐したんだ。あれは本当に大変だった...」

「え?どうやって倒したんですか?ぜひ教えていただきたいのですが!!」


ファイが食い気味に聞いてくる。

いや、話が脱線しまくるな。ちょっと修正しなければ。


「その話も後にしてくれ。話が進まないぞ」

「あ、申し訳ありません」


魔石の件は、後で詳しく洗う必要があるな。

だが今は、軍の動きが先だ。


「で、我が軍の本隊がコヨンに到着している。今日はコヨンで一泊するんだろうが、正直引き返してもらわなきゃなだないだろうな」

「もう敵は居ないですしね」

「クラスタンプから追撃があるかもだが、すぐには来ないだろうし、こちらの追撃は騎馬が300もあれば十分な気がするしな」

「それほどなのですか?」

「あぁ。指揮官は大怪我のようだし、他に勤まる者がいないようだ」


千里眼で確認すると、統制が取れているようには見えない。

一応村の中では食料はあるようだが、怪我人に対する資源が足りていないようだ。


治癒を担当する神官も当初は数名見られたのだが、今は確認できない。

おそらく、今回の戦闘で倒れたのだろう。


「ともかく、クラスタンプ軍はすぐに対応を考える必要はないので、本隊への対応を先に考えよう。本隊には歩兵もいるからな。おそらく明日はハブに移動して一泊、明後日は平原で一泊、明々後日にエルセリアだろう」

「こちらの勝利も伝えないとダメですね。明日早馬を出しましょうか」


早馬か。それも必要だが、本t内がどこを移動しているかを知るのは私だけだから、私が移動するのが一番だ。

クラスタンプ軍を撤退させた今、タニア...いや、リア達も連れてちょっと遠出をするのも良いかもな。タニアのストレス解消にもなるだろうし、本隊の指揮官であればタニアの知り合いの可能性もあるしな。


「あ~...タニア、明日は一緒にハブに行こうか?」

「よし!行こう!!」


かなり食い気味にタニアが応じる。

それを聞いたパストングは、眉間を軽くつまみながら顔をしかめている。

見ると、ファイも渋い顔だ。


「タニア様...まぁ、クラスタンプ軍がほぼ壊滅しているので問題はないか...分かりました。ではお願い致します」

「すまないな、パストング。私とタニアだけなのは問題があるので、護衛としてリア、ミーム、カラーも一緒について来てくれ」


電龍に側車を取り付け、夜霧で牽けばそれなりの人数で移動できる。


「分かった!」

「承知」

「承りました、ご主人様」


リア、ミーム、カラーが返事をする。


「はぁ~...仕方ありませんね。では、そちらはお願い致します」

「朝から移動して、遅くとも夕方までには帰ってくる予定だ」


さて、明日の行動はある程度決まった。


まず、エルセリア軍と先遣隊は戦闘の傷を癒し、戦意を向上させる事。

私たちは本隊に話を付けて一旦ハブに留まってもらう事。エルセリアまで来てもらうのは無駄になりそうだからな。

逆に先遣隊には、クラスタンプ軍が引き返すまでエルセリアに留まってもらう事とした。


クラスタンプが後続の軍を派遣するようだったら、本隊にも頑張ってもらわなきゃなんだが、出来ればそこまでの事態にならないようにしたい。

その為にも今コープルに居るクラスタンプ軍をどうやって撤退させるか...なんだよな。


構想はあるが、とりあえず今は後回しで良いだろう。



闘いに勝ち、盛り上がっている兵士達を置いて、私たちは砦に戻る事にした。

パストングはファイと色々と話をするそうで、今日は天幕で一泊するそうだ。


旧交を温めるのは良い事なので、了承しておいた。



砦に戻るとシャインとキャリーが出迎えてくれた。


「タニア様、お帰りなさいませ。皆様もお疲れ様でした。お食事はいかがされますか?」


執事風の服を着ているが、シャインは女性だ。タニアにとっては姉のような存在らしい。

彼女は今までタニアの屋敷を取りまとめていたのだが、タニアが領主になった際に一緒に屋敷から離れた。

今は砦の中の取りまとめをする役を担ってもらっているのだ。


「まだ何も食べていないんだ。食事を頼む」

「承知いたしました。用意はすぐに出来ると思います」

「分かった。執務室に居るので準備が出来たら呼びに来てくれ」


シャインが離れて行ったので、まずは執務室に向かう。


当然とばかりにキャリーがついて来た。いつまで護衛をするつもりなんだろうな...。

まだクラスタンプ軍が出て行ってないから、もうしばらくはくっついていそうだな。


「そういえば、エバンが食事をしたそうですよ?」


と、執務室に向かう道中、私の後ろを歩いていたキャリーが教えてくれた。


「それは本当なのか!?」


私が反応する前にタニアが反応した。


やっぱりまだ気にしていたようだな。

もっとも、私も気にはしていたが、正直食事をするとは思っていなかった。


なんでも、夕方に食器を下げに行った兵士の話では、お粥は空になっており、その後熟睡しているとの事。

久しぶりの食事を摂ったので、身体が休息を欲したんだろう。


その話を聞いたタニアは、執務室に向かって歩き出したが、足取りは軽いように感じた。



翌日、朝の会議を済ませた後、タニアとリア、ミーム、カラーを伴って、共にハブに向かった。


道中はみんな夜霧で会話をするって事で、珍しく一人で電龍を運転する事になった。

背中が寒いと思ったのはナイショの話だ。


本隊はコヨンから川を渡たり、ハブに向かって移動を開始した所のようだ。

本隊は1,500の大所帯であり、歩兵も居るので、移動はかなりゆっくりだ。


合流地点をハブの手前5kmぐらいを想定して電龍を進める。



千里眼で確認しつつ移動していたので、予定通りの地点で本隊を発見する。

今度はちゃんと軍旗を掲げ、スピードを落として集団に近づいて行った。


すると、本隊の行軍が停止し、集団から5騎ほどの騎馬が近づいてきた。

おそらく、本隊を率いる指揮官と副官なんだろう。


大きな身体の武将が3人、魔法使い風の服装が2人。

魔法使いのうち1人は女性のようだ。


こちらも電龍を停止させ、タニアに連絡を入れて夜霧から出てくるように伝える。


「タニア。どうやら向こうの指揮官が近づいてきたようだ。停車するので降りてきてくれないか」

「わかった。すぐに行く」


その言葉通り、タニア達はすぐに夜霧から出てきた。


「あれか。なるほど、確かに指揮官だな」


こちらに向かってくる騎馬を見て、タニアは納得した顔をしていた。


「知っているのか?」

「もちろん」


と、しゃべっていると、騎馬が到着した。

馬から降りてこちらに使づいてくる。


ひと際大きな身体の武将がタニアを見て、腰を折りながら挨拶をしてきた。


「お久しぶりですな、タニア様。陛下から話を聞いた時は驚きましたぞ」

「久しぶりだな、ローディス。私がエルセリア領主のタニア・ソフリートだ。こちらが私の副官のリョウ・カダヤ」

「よろしくお願いします」


ローディスさんという大柄を見上げつつ、タニアが私を紹介する。


「おぬしが噂のタニア様のご友人殿か。儂がこの部隊の指揮官、ローディス・セイクリッドだ」


なんか私を睨んでいるように見えるな。

それにしても、その「噂」っていうのは王家からの話だろうな。

出所は...お爺様かな?


「ローディスはこの国の騎馬隊の軍団、『騎馬兵団』の将軍だ。そしてその隣は...」


タニアが補足説明してくれた。そして、隣は年齢的には智代おばちゃんに近そうなお姉様だ。


「私は魔法兵団の将軍のフリュリー・エレコート。元気にしてた?」

「はい。お師匠様もご健勝のようで喜ばしいです」

「お師匠様?」


と言う事は、魔術学校の教師とかだろうか?


「フリュリー師匠は私の魔術師としてのお師匠様なんだ」

「昔は学校の教諭をしていた事もあったのよ」


あ、やっぱりそうだったのね。


「そこでタニアは貴女に師事していたという事なんですね」

「そういう事よ」


という事は、この人はかなりの使い手だと言う事だろう。


「して、タニア様がこちらに来られたのはどういう事ですかな?」


そうだった。

今回の目的は、クラスタンプ軍を撃退した事を伝えるという目的があるんだった。


「報告がありまして。実はクラスタンプ軍は先遣隊と協力して撤退させました」


それを聞いた将軍二人は顔を見合わせる。

半分は予想をしていたような、それでも信じがたいというような、いわゆる「半信半疑」という感じだな。


「確かエルセリアには800程の兵があったな。それと騎馬500騎なら敵軍2,000を撃破するのは難しくはないか」


確かにそう考えるのは普通なんだろうけど、どうせファイの報告が国王の元に届くのであれば正確に伝えるべきだろうな。


「いえ。先遣隊の500とこちらの騎馬300騎でですね。突撃を3回かけて、勝ってしまいまして」

「は?どういう事だ?」


そこで、詳しい話を二人の将軍に話す。


「なんとまぁ...かなり無茶な作戦を決行なさいましたな」


ローディス将軍が呆れた顔で批評してくれた。

そんな事は分かっているんだが、あの時は兵力差もあったからな。無理だろうが、無茶だろうが、無謀だろうが、やらなきゃならなかったんだよ。


「ですが、効果的な作戦ですね。突入前に弓兵を無効化する為に電撃の魔法を仕掛けるなど、思いつきとは言え理に適っています」


フリュリー将軍は頭の中で軍隊の動きをイメージしているのか、ブツブツ言いながら考え込んでしまった。


「一気に前衛の歩兵を無力化させ、本隊を一気に前後から挟み撃ちにするか。それも敵軍を回り込むのではなく、両端をそれぞれ突破するなど考えも付かんわい」

「今回は騎馬だけとは言え、敵の半数以下になるので、出来るだけ敵を混乱させる必要がありました。無我夢中でしたので...」


本当はそんな事は無いのだが、ちょっと謙遜してみる。

そういや、この世界では謙遜は美徳なんだろうか?


「ともかく、状況は分かった。だが、まだクラスタンプ軍はまだ国内にいるのだろう?」

「それについては対応を考えています」

「大丈夫なのか?」

「確認しました所、村に残っているのはほとんどが怪我人でして、戦闘にはなりません」

「それは本当なのか?」

「はい。もっとも絶対ではないので失敗する可能性はりますが、最低でも半分は追い出す事が出来ると思っています」

「なるほどな。では、それが確認できるまではこの先のハブで駐屯しておこう」

「そうですね。それが良いでしょう。エルセリアは大きな城塞都市とは言え、この数の兵士を受け入れる事は難しいようですし」

「ありがとうございます」

「そうだ。エバンは捕らえていると言ったな」


ローディス将軍が話を変えてきたが、確かにエバンの件は国の問題だよな。


「はい。砦内にて拘禁しております」

「首都に誤送するようにと仰せつかっておるのでな。ひと段落したら我が隊に連れてまいれ」

「承知いたしました」


さて、本隊に対してはこれで良いだろう。

ハブで駐留するというのは心強いしな。


問題はエバンだが、もう少し体力が回復してからが良いだろうし、クラスタンプ軍を追い返すのにはあと数日はかかるだろうからな。


「それにしても、タニア様が領主になられるとは驚きましたぞ」

「だろうな。私も驚いている」

「そうでしょうな。しかも、そこの副官殿が陛下に進言して決まったと聞きましたぞ」

「そうなのだ。リョウが言ってくれたので私が領主になったのだ」

「よくもまぁ、タニア様もそんな話を承諾されたものですな」

「そうだな。だが、私はそれで良かったと思っているよ。結果としてエルセリアは無傷だからな。だが、リョウが言わなければ、助けてくれると言ってくれなければ、私は領主にはならなかっただろうな」

「タニアはそれほどまでに副官殿を信じているのね」

「もちろんです、お師匠様。リョウは私にとって本当の友人で、かけがえのない人でもあります」

「かけがえのない人!?」


フリュリー将軍が驚く。

いや、ローディス将軍も目を丸くしているな。


逆に、リア、ミーム、カラーはニヤリと笑っている。

てか、カラーってそんな顔出来るんだ。ゴーレムだから基本無表情だったはずなんだけど?


「あ、いやぁ...男性の友人は今まで居ませんでしたので...」


タニアが非常に慌てている。

タニアは地球で言う所の「欧州美人」だから、普通に色白なんだけど、今は首までピンク色に染まっているし、耳も真っ赤だ。


あ、私は...無表情です。


「そうですね。魔術学校では特定の女子以外は誰も相手にしていませんでしたしね」

「あの頃は、その...私の考えが幼稚だったので...」

「そうかも知れませんね。でも、今は幼稚な考えはないのでしょ?それで良いのでは?」

「あ...ありがとうございます」


そんな会話をしつつ、エバンの件などをもう少し確認した後にエルセリアに戻る事になった。


ちなみに、帰りの道中はタニアが後ろに座って来た。

スタイルの良いタニアが引っ付いてくるのは男として嬉しいのだが、色々困るんだよな。


それに、リアとミーム、カラーは夜霧に乗っているので、側車が空いているんだけどな...。



エルセリアに戻り、早速パストングとファイを交えて状況説明と相談をする。


「結局、コープル村からは奴等は動かなかったんですね」

「そうなんだよな...おそらく、本当に負傷で動けなかったんだろうけど、居座られるのも困るんだよな」

「じゃあ、この際討伐しましょうか」

「とりあえず、今夜ちょっと襲撃をかけてみるよ」

「え~...一応私には説明頂けるんですよね?」

「それはもちろん。ていうか、意見を聞きたいと思っているんだけど?」

「分かりました...まずはお伺いいたしましょう」


作戦を皆に説明をした。


カラーを護衛に連れて行くけど、基本私の方で作戦を実行する内容だ。

だが、作戦を実行するのは私だ。


「リョウ...それ、大丈夫なのか?」


ミームが半信半疑のようだ。

まぁ、その反応は普通だ。同じようにリアも難しい顔をしている。


「作戦に絶対はないけど、大丈夫だと思うよ」

「確かにその作戦だと誰も傷つかないし、上手く行くようにも思えるな」


と、これはタニアだ。

おそらく、このメンバーでは一番作戦の内容を理解しているはタニアなので、タニアが問題なしと言うなら大丈夫だろう。


「だろう?それに、すでに仕込みは出来ているから、成功する可能性はかなりあると思っているんだ」

「あ~...確かにそうですね」


と、これは一緒に戦場にいたファイだ。


「それに、あの魔法ですか。確かに効果抜群でしょう」


パストングも納得してくれたようだ。


「じゃあ問題はなさそうだな」

「そうですね。こちらにも被害はありませんし、副官殿も安全だと思いますので、良いのではないでしょうか」


パストングの言葉に全員が頷いてくれた。


よし!これでクラスタンプ軍を追い出すぞ!!

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