■■■ 【サブストーリー】葵 Step001 世界が違うと根本的な常識が違うのね
大阪3人娘の1人の葵のサブストーリーです。
葵だけが了の暗黒面を一瞬見ちゃってたんですね。
異世界からの訪問者、タニアさんはとても綺麗なお嬢さんでした。
事前にお兄様から聞いていましたが、本当に異世界からのお客様のようで、リビングに入って来た時の衣装は魔法使いそのものでした。
藍色のチュニック。紫のローブ。魔法使いの杖。全てがイメージ通りです。
それも物凄い美人なのに、地味な服装がとてもしっくりしている。かなりの凄腕って雰囲気が素敵です。
タニアさんがこちらに来られる前、前日の夜に輝お姉様とユリお姉様とは事前に話をしていました。
ちゃんと仲良くなりましょうって。
私たち3人の間では決まり事があります。
お兄様をめぐっての女の争いはしないって。
理由は簡単です。
お兄様を困らせたくない。
ただそれだけです。
でも、今となってはそれだけではありません。
少なくとも、私にとっては...。
私は輝お姉様もユリお姉様も大好きなんです。
ただ、負けない。というだけの話なんです。
なので、私たちはとても仲良しです。
近所の方々は誰も信じてはくれません。
が、お兄様とお兄様のご家族、私たちの両親はちゃんと理解してくれています。
なので、何も困ってはいません。
ともかく、朝からお兄様の家に赴き、今か今かとお兄様の帰還を待っていたのですが...。
なぜか予想外の人も混じってます。
ユリお姉様をチラリと見ると、両手を合わせて声も出さずに謝っています。
が、大丈夫です。これはお姉様の失態ではありません。
相手が上手...ではないですね。単に強引だっただけです。
そして、お兄様がタニアさんを伴って登場。
そして、お兄様たちが入口で固まる。
やはり、間違っていたのは智代おば様が一緒に居る事でした...。
想定通り、おば様が暴走し、お兄様が困っていますが誰も助けられません。
おば様は最強の善意の塊で最凶のトラブルメーカーです。
それはご近所でも有名で、誰か付けたのか「笑顔の簒奪者」という二つ名を持っています。
聞いたところによると、「トラブルで笑顔を奪う」というのと、「笑顔でトラブルを起こす」という二重の意味があるそうで...。
よく考えられていますよね。私、びっくりしました。
ただ、皆さん困ってはいますが、単に困るだけなのと、そもそも善意の塊なので、普通にご近所づきあいもされています。
おば様の困った話はお母様からの聞きますが、「ホンマに困るよねぇ」と笑顔で言うだけなので、どこまで困っているかよく分からなくなります。
でも、一番の問題はお兄様が絡むと一段と...その...問題が深くなります。
ユリお姉様が絡むからなんでしょうけどね。
ともかく、暴走するおば様をコントロールできるのはユリお姉様しか居ません。
お願い致しますね。
それにしても、お兄様は本当に無茶をするのですよね。
実験で出来たゲートを、最初に500円硬貨で通るのを確認したからって、次に自分の生身で行くなんて...。
時々、実験結果を嬉しそうに私たちに披露してくれますが、とても無邪気でいつも以上に陽気な雰囲気になられます。
その度に、私はあの日を思い出してしまいます。
あれは私が小学5年生の10月の時です。
私は誘拐されました。
自覚は全くないのですが、私は町内で一番の美少女らしいです。
なので、変な人たちに連れ去られてしまったようです。
夕方、お兄様の家を出て、自宅に帰る為に住宅街を歩いていたのです。
そうしたら、白いワンボックスの車が隣に止まり、ドアが開いてあっという間に車内に引き込まれてしまいました。
あまりにも急な出来事だったので、声も出せませんでした。
2時間程かかって連れていかれたのは見知らぬ一軒家。
車の中では怖くてずっと泣いていました。
なので、本当にここがどこか分かりませんでした。
どうやら、捜査を混乱させる為、あちこちを走り回っていたようで、同じ町内だったそうです。
私は小学5年生だったので、それなりに色々と知っています。
あの時ほど絶望した事はありませんでした。
男たちは全部で5人。
私にはどうする事も出来ません。
いよいよ...と、その時部屋に誰かが入ってきました。
お兄様でした。
「俺は『悪の科学者』だ。だから、俺以上の悪には消えてもらう!!」
5人はあっという間に...消えました。
なぜ消えたのか分かりません。
今も分かっていません。
ですが、お兄様が助けてくれた事だけは分かっています。
「ごめんな...葵ちゃん。こいつら走り回りやがったから、位置の特定が出来んかったんよ...近所で良かったわ...いや、良くはないか...」
この時に聞いたのですが、私にくれたネックレスにGPSが仕込まれていたそうです。
こんな事件が本当に起こるとは思っていなかったそうですが、本当に「念の為」ぐらいのつもりで私にプレゼントしてくれたそうです。
私は嬉しかったので、学校以外はずっと身に着けていました。当然今も身に着けています。
なので、私の反応が急に加速した事で異常事態のアラームが鳴って、すぐに対応したんだそうです。
まず、私の両親には「葵ちゃんが忘れ物しちゃって」と言って何気なく連絡をし、私がまだ家に帰っていない事に気づかせたそうです。
本当は大事にせず、何もなく解決したかったんだそうですが、すでに私が誘拐されているので、それは無理と判断して、まずは両親に連絡したんだそう。
次にユリお姉様と輝お姉様に連絡して、私が誘拐された事を教えたんだそう。
理由は、2人に私の心の支えになって欲しいからだそうで、その事をお願いされたそうです。
あとは、お父様とお母様の所に行ってもらい、それとなくサポートして欲しいと...。
そしてGPS反応を注意深く確認し、あちこちにあるカメラをハッキングしながら様子を確認。
運転手と助手席を見て、近所の男性だと特定。
そこから芋づる式に5人を特定し、5人の家の中から1人暮らしの家を選別し2箇所に絞り、どちらかに行くと判断して待機してたそうです。
その間、GPSもチェックして、遠くに行ってしまう可能性も考慮。
その時は裏技を使う予定だったと、かなり困った顔でおっしゃってました。
ともかく、車が町内に入った所で家から車で出て、目標の家に入った所ですぐに突入したそうです。
「あとごめん。ちょっとお願いがあるねんけど、かまへんか?」
そして、私は「隙を見て脱出した所でお兄様に見つけられた」という事になりました。
今もあの5人は見つかっていません。
普通は見つからない事は不安になるんでしょうが、私は見つからない事で安心できます。
ただ、それから小学生の間はお母様か輝お姉様、ユリお姉様やお兄様が私を学校までの行き帰りを一緒に歩いてくれました。
中学生になった時、特別にスマートフォンを持って登校する事を許可されましたので、付き添いはなくなりました。
寂しいですが仕方ありません。
ちなみに、ペンダントは「お守りです」と言って、事件以降は学校に行く時も着けても良いと許可をしてもらいました。
冗談抜きで本当のお守りです。本気で泣いて、学校の先生たちを困らせましたが安全には代えられません。
なので、小学校の時も中学になってからも、ずっと身に着けています。
さて、おば様はユリお姉様が連れて帰りました。
仕方ないですよね。おば様の圧に耐えるには訓練が必要です。
私でさえ、時々圧に負けてしまうんですから...。
お兄様が翻訳機を用意するって話で、タニアさんと輝お姉様と私の3人になってしまいました。
言葉が分からないというのは本当に不便ですね。
どうしたものかと思案していたら、輝お姉様が動きました。
「ねぇタニアさん」
『?』
自分の名前を呼ばれたので、タニアさんが反応します。
「ごめんね。僕が言ってる言葉が分からないだろうけど、了はすぐには戻らないと思うんだ」
ボディーランゲージを混ぜて...って、あれは普通に手話じゃないですか?
輝お姉様、手話も出来たんですね。
異世界に手話があるとは思えないですが、手話は言語ですので、なんとなく分かる動作があります。
それに託しているんでしょうね。
「で、ただ待ってても面白くないので、今の内にちょっとだけ日本語勉強しない?」
そこまで言ってタニアさんを見ます。
私もタニアさんを見ます。
タニアさんは、私たちを見て、次に上を向いて考え、しばらくしてから輝お姉様の顔を見て、一言。
「ギィエーナルオ」
とおっしゃいました。
当然、私たちはタニアさんが何を言ったのかは分かりません。
ですが、おっしゃった時に軽くお辞儀をされましたので、おそらくふわっとでも分かっていただけたと思いました。
そこからお兄様が戻ってくるまでの間、部屋の中の物の名前を言ってはタニアさんが復唱するという、第一回日本語講座を実施しました。
その後、お兄様の翻訳機のおかげでちゃんと会話が出来るようになり、一気に親密度が上がりました。
やっぱり意思疎通が出来るのは良いですね。
お兄様の家はかなり大きい家です。
おじ様とおば様は優秀な科学者で、いくつもの特許を持っていて、その権利で生活しています。
いわゆる不労所得ですね。
ちなみに、お兄様もいくつか特許を持っていて、同じようにその権利でお金を稼いでいます。
おじ様とおば様は、最近海外での活動が多くなっていて、家をいつも空けています。
おかげでお兄様の家は私たちの第二の家状態です。
ユリお姉様なんて、部屋もあります。
今ではこの家にほぼ住んでいる状態です。
お兄様と同棲しているのと全く変わりません。
羨ましい...。
まぁ、それは仕方ありません。
ユリお姉様はもう大人なので、そこは自由です。
いいなぁ~...。
そうそう、ユリお姉様も医療工学系で特許をいくつか持っているそうです。お兄様には敵わないけど...とおっしゃってはいましたが。
あと、輝お姉様も大学に行く頃には部屋を貰う事になっているそうです。
名目は、お兄様の助手として。
私も部屋が欲しいのですが、工学系は正直苦手なので難しいかもです。
今考えているのは、経理関係でお兄様を助ける事が出来ないか?ですね。
その為、今は日商簿記3級を目指している所です。
基本的には仕分けや科目を覚えれば難しくないようで、目下科目を学んでいます。
覚えるだけなのですが、正直面倒ですね。
話が逸れました。
お兄様の家はかなり大きいので探検するには持ってこいです。
輝お姉様と一緒にタニアさんに家を案内します。
まずはお手洗い。
さっそく使っていただきました。
すごく目が輝いています。
『どうにかして、これを我が家に...』
とおっしゃってました。
気持ちは非常に分かります。
その隣にお風呂があります。
まだユリお姉様はいらっしゃってないので、中に入って簡単に説明します。
ここでも目を丸くされていました。
あとで一緒にお風呂をするので、その時の反応が楽しみです。
その後お兄様の部屋、おじ様たちの部屋、ユリお姉様の部屋、トレーニングルーム、娯楽室、コンピュータ室、客間、実験室、ガレージと案内してリビングに戻りました。
テレビを観てものすごく驚いていましたし、クーラーを体験して物欲しそうにされたり、ガラスを見て非常に感心されたり、窓の外を見て街並みに感動されたり...。
私たちが見慣れたものは、やはり異世界の人から見ると驚くものばかりなのでしょう。
中でも一番驚愕されていたのが「本」です。
どうやら、あちらはまだ活版印刷はないそうで、新聞や書籍を矯めつ眇めつ眺めていました。
『そう言えば、リョウから印刷の事を聞くのを忘れてた...』
って言ってたけど、聞かなかった事にしましょう。
それはともかく、逆に私たちがタニアさんの世界に行ったら、それはそれで驚きの連続になるんでしょうけど。
キッチンではユリお姉様がお昼の用意をしていました。
良い匂いがします。定番のカレーのようですね。
「あら~おかえり。こっちの用意はほぼ終わっているから、みんなでお風呂に行こか?タニアさんの着替えは用意しているけど、二人は自分で用意してな」
「「は~い」」
私と輝お姉様は着替えのあるユリお姉様の部屋に取りに行き、お風呂に直行。
お風呂ではユリお姉様がタニアさんと話をしながら服を脱いでいました。
...2人とも大きいです...。
お兄様の嗜好はまだ分かっていませんが、少なくともユリお姉様、輝お姉様、私の3人とも平等に見られています。
かなり控えめにされていますが、私たちは分かります。
ちなみに、私が一番小さいです。
次の大きいのが輝お姉様で、その次はタニアさん。
やはりユリお姉様が一番大きいですね。
タニアさんは今までお風呂に入った事はないらしく、聞くとお湯を張った大きな桶の中で身体をこする程度だったようです。
なので、みんなで洗ってあげました。
髪の毛もかなり傷んでいるようで、ユリお姉様が優しく洗って、トリートメントをしてあげてました。
大きな鏡がお風呂に設置されていて、タニアさんが非常にビックリしていました。
あちらにも鏡はあるそうですが、ここまで綺麗に見える事はないのだそうです。
お風呂の中にゆっくり入って、物凄くリラックスしていました。
やはりお風呂は異世界の人も虜にしてしまうようです。
ちなみに、お兄様の家のお風呂はかなり大きいです。
私たち4人が同時に入っても大丈夫なぐらいです。
おじ様とおば様がかなりのお風呂好きなので、出来るだけ広いお風呂にしたんだとか。
それにしても、この広い家を管理しているユリお姉様は本当にすごいと思います。
私にはちょっと難しいです。
あ、この家はかなり広いので、ちゃんとお掃除ロボが稼働してます。
それも、おじ様お手製の高性能な機械が。
なので、基本的にこの家は清潔なのです。
お風呂から上がり、ドライヤーで騒いで、化粧水で驚き、下着でひと悶着して、リビングに向かいました。
お家探検やお風呂でタニアさんとはかなり打ち解けたと思います。
タニアさんとは仲良くなれそうです。




