■■■ Step030 国王からの要請と領主のマッドな思惑
やっと第3章が終わりました。
第4章から、また遺跡に行きます~
ですが、この後はサブストーリーが2話入りますので、少しお待ちください。
プルルルルル...プルルルルル...
夕食も終わり、いつものように3人で団らんしていた時だった。
タニアのスマートフォンが鳴る。
画面を見ると、リアからだ。
タニアが通話に出ようとしたので、私は一言断ってスピーカーモードにしてもらった。
前回の領主の件もある。全員で聞いた方が良いだろう。
もし個人的な話なら、その時に止めればいい。
『お姉様!大変な事が...』
いきなりの出だしで、スピーカーにして正解だったと確信した。
『どうした?』
『お父様と伯父様から、首都に来るよう要請されました…』
『私とリアがか?』
『いえ...お姉様と...リョウの2人です』
私?
思わずタニアと顔を見合わせた。
『私と...リョウ?なぜだ?』
『コボルド討伐の報告書が伯父様の所まで届いたらしくて...直接話を聞きたいと』
なるほど。そういう事か。
だが、伯父様とは誰だ?
『それは行かなければならないのか?』
『お父様はともかく...伯父様からの呼び出しは絶対ですね』
『どういう事だ?』
少し迷ったようにしてから、タニアが言った。
『...リョウにはあえて言ってなかったんだが...伯父様はジョーチェ法皇国の国王なのだ』
『...国王?』
思わず間の抜けた声が出た。
普通に思いつく範囲を超えているんだが?
え?あれ?国王?
『そして、お父様はジョーチェ法皇国の法皇なの』
法皇?
へ?
え!?ええええぇ~~~~~~!!
どゆこと~~~~~~!!
『...って事は、君たちは...』
『バルバクスの名を捨てたので今は姫という扱いではないが...まあ、実質は姫ではある』
『アタシとお姉様はバルバクスの名前を捨てて野に下ったの』
『私は14歳から従兄の屋敷...リョウも泊まったあの屋敷だが...そこで魔工師として暮らしている』
『アタシは2年前からお姉様の屋敷に住ませてもらって、冒険者をしてる』
は~...なるほど。
『かなり自由なお姫様たちだな』
かろうじて出てきた言葉がそれだった。
『まあ、色々あって我儘を通させてもらっている』
『とりあえず分かった。つまり国王の要請には応じないといけないって事だな』
『そういう事だ』
そこでリアが、少し困ったような声を出した。
『あと...伯父様の使者と領主の使者が鉢合わせして...』
『は?』
『国王からの呼び出しの話、領主にも知られちゃった』
マイガッ!!
『それ...面倒な事になる未来しか思いつかないな』
『領主の使いの人は女の人なんだけど、話がすごく上手なのよ。まるでリョウと話しているみたいだった』
それは警戒度が一気に上がる。
『リア、それはどんな人物なのだ?』
『三十歳くらい。黒髪で短髪。にこにこしてるけど、目は笑ってなかった』
...それは完全に諜報系だろ。
『他に特徴は?』
『左目の下にホクロがあった』
それだけ分かれば十分だ。
ともかく、監視手段を整える必要があるな。
『他には?』
『特に何も言わず帰っちゃった』
おそらく領主に報告するのを優先したのだろう。
ともかく、今回の件は早く対応するのが良さそうだな。
早々に国王に会って、すぐに領主の対応をするのが良いだろう。
今からこっちの準備をして、明日の朝に合流し、昼に出発。
順調なら明後日には首都だ。
問題はチェーベン川か。
あとでタニアと相談しておこう。
いや、それよりもだ。
『分かった。明日の朝そっちに行く。昼には出発するつもりだから準備しといてくれ』
『え?何の準備?』
『首都に行く準備だよ』
『誰の?』
『タニアとリアの』
『アタシも!?』
『え?』
『え?』
どうも話が噛み合わないな。
じゃあ、これでどうだ?
『じゃあ私とタニアの2人旅でいいのか?』
『ダメ!』
でしょうね。
『なら準備要るだろ?』
『ミームは?』
あ~...どうなんだろう?
同じチームだから来てもらっても良いけど、国王や法皇の前に出る度胸があるか?
ミームはありそうな気がするけど、巻き込むのも可哀そうな気がするな。
『さすがに国王に呼ばれた件に関しては関係ないだろ』
『一緒に討伐したじゃない』
それは考えたんだが、う~ん...。
私は異世界の常識が分からないからな。
ここはタニア先生にお伺いを立ててみよう。
『タニア、ミームの件はどうだろうな』
タニアが少し考えてから言った。
『今回は私たち3人で良いだろう。今からミームに準備させるのも大変だ』
『じゃあ決まりだな。準備よろしく』
『分かった』
やっと理解してもらえたようだ。
そうそう。これも言っとかないとな。
『それと、今回はお馬さんはお休みしてもらうよ』
『え?』
『全員電龍で行く』
側車を2つ付けるのは無理だが、夜霧を牽引するので基本そっちに乗って貰えば良いだろう。
そっちの方が乗り心地は良いしな。
どっちにしても「電龍で行く」という事も間違ってはいない。
『え!?アタシも乗っていいの!?』
『問題ない』
『やったー!!』
乗りたがってたしな。
タニアも乗りたいと言うかもだが、その時はタニアと交代で側車に乗ってもらおう。
『じゃあ明日の朝な』
『うん、じゃあねー』
通話が切れた。
...まさか、国王からの呼び出しとはな。
とりあえず、明日の朝からまた異世界だ。
今回は国王の要請に、領主の不可解な動き。
どう考えても、平穏な旅にはなりそうにない。
総じて不穏だ。
「了くん...一体どうしたん?」
ユリが心配そうにこっちを見ている。
雰囲気から、ただ事ではないという事を嗅ぎ取ったのだろう。
「ユリ、明日朝から異世界に行く事になった」
「え?」
『すまないユリ。ちょっと私の事情にリョウを巻き込んでしまったようだ』
タニアが頭を下げながらユリに謝る。
タニアが謝る事ではないと思うが、そこはそれだ。
「とりあえず、詳しく教えて」
ユリはかなり不安そうな顔だが、努めて冷静な声で訴えてきた。
「もちろんだ」
と、さっきのリアの話の内容を説明する。
「それ、かなり大変なんじゃないん?王様の事はともかく、例の領主の動きが変やん」
「一番の問題はそこなんだよな~」
ホント、そこが一番の問題なんだよな。
「なんか考えてるん?」
「今は何も」
「嘘!!」
ユリの大声にタニアも驚くが何も言わずに黙っている。
「そんなに怒んなや。相手の事が全く分かんないから、現状考えても無駄って思ってるだけや」
領主側の情報がほとんどないからな。
おそらく、魔石を使った魔物を集めるという行為を領主が行っている。という予想はあるが、予想はあくまでも予想だ。
「で、なんもせぇへんの?」
「んな訳あるかいな。ちゃんと監視するに決まってるやん」
「監視だけなん?」
「今はな」
「なんでよ?」
ユリがここまで食いついてくるのは正直珍しい。
まぁ、こっちは平和な世の中だからな。
心配なのは分からなくもないのだが。
「事を運ぶにはちゃんと順番があるって事や。まずは領主の目的を確認する事が先」
「やから、監視だけで大丈夫なん?」
「無法の異世界でもきちんと対応しておかないと、後で手痛いしっぺ返しが返ってくる」
私は「悪の科学者」ではあるが、道理に合わないことはしない。
それが私のポリシーだ。
「確かにそうやけど...」
それに、あの世界は人の動きを隠す事は出来ないからな。
まずは千里眼で監視するのが一番だろう。
「ユリが心配してくれてる事はよう分かっとる。けど、大丈夫や。今から準備するし、おそらく今回の件で一番危ないのはタニアだ」
「...確かにそうね...」
やっと落ち着いたか。
もっとも、心配事がタニアに行っただけで、ユリとしては心配事が減った訳ではない。
その証拠にユリの顔がさっきよりも苦痛に歪んでいる。
「やから、俺が行く。みんなを護る為にな」
さっきまで以上にユリを安心させなければな。
だが、これ以上の言葉を俺は知らない。
「...分かったわ。気を付けてね」
「任せろ」
昔のように右拳を出す。
それを見たユリはふっと表情を崩し、同じように右拳を突き出し、俺の拳と合わせる。
何年ぶりだろうな。
このやりとり。
ユリとの会話の間、タニアは黙って聞いていたが、ここで前に出てきた。
『ユリ。私も約束しよう。リョウを無事にこの世界に帰すと』
「タニアちゃん...うん、お願いね」
『任せてくれ』
先ほどの私と同じようにタニアが右拳を出す。
一瞬ユリが驚いたが、真面目な顔になり、先ほどと同じように右拳を合わせた。
そして、同じタイミングで笑い合う。...よし。
「じゃあ、私も用意せんとあかんわよね」
と、背中を見せてリビングから出ようとする。
「用意?なんだ?」
「お気遣いなく。じゃあ、了くんたちも準備しないとダメよ~」
と、言いながらリビングを出ていく。
おそらく自分の部屋に行くんだろう。
さて、私も明日の用意をする為に一旦実験室に行こうか。
あ、タニアに夜霧の説明もあるから、タニアも連れていかなきゃな。
夜霧を完成させておいて、本当に良かった。
ちなみにこの後、ユリが連絡して輝と葵を自動車で迎えに行ったそうで、緊急パジャマパーティーが開催された。




