■■■ Step022 お嬢様の服を買わなきゃならない
大阪での生活の為の買い物回になります
タニアが色々振り回されます
「なるほどね~...そんなんあったんや~」
一通り話を聞いて、ユリが腕を組みながら頷く。
そう。そんな事があったんですよ。
『あの光の帯からリョウが現れた時は、こんな危険な奴は私が始末しなければならないと思ったものだ』
「でしょうね~」
私、始末されそうだったんですね。
輝が嬉しそうに頷いている。
なんで嬉しそうやねん!!
が、しかし...、
「そん時は、ここで向こう側に行ったら、危険人物に認定されるっていう自覚はあったんやけど、どうしても止められへんかったんや...」
『それは分かる。私でもそうすると断言出来るな』
タニアが笑いながらフォロー...にならないフォローをしてくれた。
「お兄様とタニアさんは良く似たもの同士なんですね」
「ん~思考は似てるとは思うけどな~」
『確かに、考え方は良く似ている気がするな』
あ~...そこの意見もタニアと一緒になるのね。
「で、その光のゲートって、あの部屋にまだあるん?」
「あぁ、あるで」
「ちょっと見てみたいねんけど?」
ま、特に輝は気になるよな。
「いずれ見せたるけど、その前にタニアに色々と教えてあげて欲しいんやけど?」
「そうよね~...まずはお手洗いとお風呂かしらね~」
さすがユリ。大事な事をよく分かっている。
「じゃあ、先にお手洗いの説明をして、それから一緒にお風呂に入って、ついでに着替えてもらうとか?」
「あら、いいんじゃないかしらね。じゃあ、みんなで入りましょうか」
「賛成!」
葵の提案に、ユリも輝も賛成のようだ。
これで仲良くなってくれれば、私としても非常に助かる。
私は色々と知識があって、タニアの世界にも適応出来たが、タニアはそうも行かないはずだからな。
「了くん、お風呂はダメよ~?」
「当たり前や!」
ユリが艶っぽい、媚びるような恰好をして私に注意するが、んなもん分かっとるわ!
『お手洗いは分かるが、お風呂とは?』
「あ~ともかく、女性同士での交流をしてくれるととても助かる。さすがにデリケートな事は説明でけへんからな」
「ですよね~」
タニアの質問は、さすがにここではお答えできん。
すまんが、輝や葵にゆっくり聞いてくれ。
「う~んと...そうやね、ちょっと色々時間がかかりそうやから、まずは輝ちゃんがお手洗いの説明をしてあげて。私はお風呂の準備をするわ」
「私は?」
「輝ちゃんと一緒にタニアちゃんをお願いしようかな。お風呂は時間かかるから、その間に了くんの家の案内を輝ちゃんと一緒にして欲しいの」
「合点承知の助!」
ユリがテキパキと指示を出す。
こういう家庭的な事に関しては、さすがに一日の長があるんだろうな。
それはともかく、葵よ...、
「お前、いつの時代の人間や?」
そのネタは、私の親よりも前の世代だぞ?
『色々と手間取らせてすまない』
「いえいえ~お気になさらずに~」
「そういや了、このスマホは防水なん?」
輝が念のためだろう、確認してきた。
「あぁ、完全防水やから、お風呂も問題ないぞ」
「さすが!じゃあ、みんなでお風呂だ!」
まだ午前中なんだけど、みんなお風呂好きだねぇ~。
日本人だもんな。
と、そういえば?
「お前ら、着替えは?」
「え?ここにいくつか置いてるから大丈夫ですわよ?」
と、葵。
え?まじ?
「あ、僕も」
「私も置いてるわ」
輝もユリもかいな?
「なんでやねん。そもそも洗濯は?」
「ここでしてるけど?」
「マジか?」
「大丈夫よ。おばさまには許可を貰ってるから」
おかあ~さ~ん...僕、聞いてないですが~...。
いや、聞いてなくても、ユリが洗濯物をしているのは見ている。
たまに輝も使っていたな。
普通に、私が聞いてないだけだったようだ。
「そういや、どういう訳かユリの部屋があるんやったな」
「おじさまとおばさまがしょっちゅう家を空けるから、ユリちゃんお願いね?って言われてね~」
ユリが大学に行き始めた時に、「ユリちゃんの部屋を作ったわよ」ってお母さんから突然言われたんだよな。それも3階の私の部屋の隣...。
それも事前に智代おばちゃんと幸司おじさんにも許可を取ったとか...。
ま、大事な一人娘の部屋を勝手に用意するって言うのは、色々と問題があるだろうしな。世間的にも...。
そう言えば、ユリはちょいちょい我が家に泊まっていた。
それこそ小さい時は一緒に寝た事も、お風呂にも入っていたのだが、さすがにユリが小学4年生ぐらいにはね...。
「了は家事が出来ないからね」
「じゃあ、お風呂の用意してくるから、輝ちゃんと葵ちゃんはタニアちゃんの面倒見ててね」
「「は~い」」
ユリの号令の後、輝と葵が元気に返事する。
輝がタニアの手を引っ張り、部屋から出ようとする。
「じゃあ、洗面所から行こうか」
『よろしくお願いする』
それに葵がついて行く。
ユリが部屋から出ようとする3人に声を掛けた。
「案内が終わったら連絡してね~。お風呂の用意が終わったらお昼は用意をするから、ゆっくり案内してくれたらええよ~」
「「は~い」」
改めて輝と葵が返事をして、タニアを含めた3人はリビングから出ていった。
ユリと私がリビングに取り残される。
「で、了くんはどうする?」
「俺は...ちょっと色々と確認や準備をしなきゃなんで、実験室に行くよ。ユリはどうする?」
「私は料理の材料を確認してから、お風呂の掃除に行こうかしらね~。じゃあ、お昼に呼ぶわね~」
「あぁ、よろしく頼むよ」
さて、色々と考えてた事をしておこうか。
お茶を飲み干してから私もリビングを後にした。
さて、実験室戻って、まずは魔波通信実験の結果を検証する。
なぜ異世界ゲートが出来たのかは分からない。が、ゲートの仕様についてはいくつかの事が分かった。
千里眼からの異世界の惑星情報が手に入ったので、精査する作業が各段に進んだのだ。
これは予想外の結果だが、こういう情報は無駄にはならないもんだな。
他にも気になる事の確認や仕込みをしていたら、あっという間にお昼の時間になった。
相変わらず実験していると時間が分からなくなるので、ユリから「お昼出来たよ~」と連絡を貰い、改めてリビングにやってきた。
リビング中に漂う香り。これは定番のアレだな。
食卓を見ると、すでに輝も葵もタニアも座っており、雑談をしている。
そして、タニアは魔法使いルックではない。
黒のロングTシャツにベージュのズボン。
数年前のユリの部屋着だったはず。
地味な服装だが、タニアがそもそも派手なのでバランスが取れている気がする。
そして、3人とも髪の毛がしっとりと濡れているな。
本当にみんなでお風呂をしたらしいな。
料理の匂いの他、淡い石鹸の匂いがしてとても心地よい。
「タニア、家の中だけど、どうだった?」
『ここは凄いな!色んな便利なものが沢山あったぞ!!』
めちゃめちゃ興奮しているな。
「電気の存在からビックリしてたわよ~?」
「水道なんかはめっちゃ驚いてたもんね」
あっちは普通に水を汲まなきゃならないからな。
そういえば、タニアの屋敷には井戸があったよな?
「予想通り、やっぱりあっちの世界にはお風呂という概念はなかったみたいだしね~」
「濡れた布で拭くか、水浴びをするかだそうで、僕には耐えられそうにないね」
「ちなみにタニアさんは、護身用にってナイフをお風呂に持ち込もうとしてましたわ」
もろもろ予測通り...いや、ナイフはダメだろ?
『そもそもお風呂っていうのも初めてだ!』
お風呂の概念が無いんだから、そうでしょうね。
「はいはい。おしゃべりは食事中でも出来るから、まずはいただきますをしましょうね~」
と、面々の前にカレーライスが並べられた。
『さっきから美味しそうな香りがしていたが、これはなんだ?』
「これはカレーという料理よ~。了くんには悪いけど、初心者がいるので甘めになってんよ」
「僕は助かるよ」
「私も。お兄様の辛さだと、一口も食べられませんもの」
一般的な5倍カレーが私の普通なのだ。
だが、ここで「甘い」とかを言うつもりはない。
「さすがの私も、ここで我儘を言うほどお子様ではないから大丈夫だ」
そもそも甘くても食べれるので問題ない。
「では、いただきま~す!」
「「「『いただきます』」」」
ここでもユリの号令でいただきますをして、食べ始める。
タニアは周りがどういう風に食べているのかを確認して、最初の一口で目を丸くした。
『なんだこれは!?』
一言、そう言った後はしゃべる事なく、一気にカレーを食べてしまった。
タニアは自分の前の空になった皿を見つめ、私の顔を見て、また皿を見た。
「あ~...ユリさんや、タニアにお代わりをお願い」
「はいはい。任せて」
こうしてタニアは3杯カレー食べた。
おしゃべりする間が無かったな~。
食事があっという間に終わり、ユリがキッチンで洗い物をしている中、タニアについて話をする事になった。
「タニアさんの元のお洋服、ちょっと問題よね?」
「こういうのはちゃんとしないとダメだよ!」
今タニアが着ているのは悪いものではないが、どちらかと言うと部屋着だ。お出かけ用の服はない。
ユリはお出かけ用の服を持っていない訳ではないが、あいつの事だ。「ちゃんとタニアに合うものを」と思っているのだろう。
「江坂に行く?エキスポに行く?」
吹田だと、買い物するならこの2か所だろうな。
「服以外にも色々揃ってるのはエキスポだから、エキスポに行きましょう」
「葵が行きたいだけでしょ?」
「そうですけど、選択は間違ってないですよね?」
「そうね~」
そんな訳で、エキスポに行く事が確定。
あ~...さすがに私もこの恰好じゃダメだろうな~...。
私服に着替えておこう。
エキスポシティへはモノレールで行く方法もあるが、タニアも居るので自家用車で行く事にした。
家にはちゃんと車検の通った自家製の8人乗りの自動車がある。
ちなみに、我が家はほとんどの物が自家製なのだ。
運転席には私服に着替えた私。助手席にはユリ。私の後ろにタニア。その隣に輝。その後ろの座席には葵が座る。
タニアは午前中の屋内案内で、ここも見ていたようだが、実際に自動車には乗ってなかったので、今はすごく興奮しているようだ。
走り出しても、ずっと輝と葵に見えるものを聞きまくっている。
『自動車?が沢山あるが、馬はいないのか?馬車はないのか?』
(ないです)
『この自動車という乗り物、すごい静かなんだが?』
(EVだからね)
『あの赤と黄色と緑に光るのはなんだ?』
(緑ではなく青です)
『道が黒いぞ?』
(アスファルトだからね)
『すごい...色んなものが整理されているようだな...』
(いや~結構ごちゃついてるよ?特に大阪はね)
『なぜ並んでいるのだ?右側が空いているではないか!』
(そっちは対向車用です)
と、まぁ、こんな感じで質問しまくりだった。
初日に買い物はハードルが高かったかも知れないな。
だが、衣類は早急に準備しなきゃだからな。
『そう言えば、これはバイクではないのだな?』
「あれ?タニアちゃんはバイクは知ってんの?」
さすがユリ。鋭い洞察力だ。
『リョウが私の世界に持ち込んだものがバイクだと聞いている』
「了!ひょっとして電龍をあっちに持って行ったん?」
「こっちじゃ乗れへんからな」
「え?待って?昇竜も積み込んでたやん?」
異世界に持ち込んだと聞いて、輝が喰いつく。
電龍のAI開発には輝も一枚嚙んでいる。それ以上に千里眼、昇竜の基礎理論は輝のアイディアが色々と詰め込まれているのだ。
もっとも、魔法技術については、全くノータッチだ。
『あ~、あの凄い勢いで飛んで行ったアレだな』
偶然だが、昇竜2機の打ち上げに立ち会ったタニアは、あの時の轟音を思い出したのが、ちょっと遠い目をしていた。
あの時は何も説明しなかったもんな。
「え?タニアさん、アレの打ち上げ見たん!?」
『打ち上げ?あ~、リョウがそんな事を言ってたな。あぁ、確かに見たぞ』
「羨ま!!僕も見たかったのにぃ~!!」
気持ちは分かるが、そもそも日本では打ち上げは無理だ。
最初、この自動車に取り付けて打ち上げをしようかと思ってもいたが、最近の色んな技術だと正直身バレしそうなんだよな。
なので、実験を諦めていたのだが...。
「輝。今度は気象衛星を打ち上げる予定だから、その時に立ち会わせてやるよ」
「マジ?了!?やった~!!」
そんな話をしていたら、エキスポシティに到着。
駐車場に止めなきゃね。
女性の服については、全く分からないので、ここは全てユリに丸投げする。
もっとも、ユリの方も分かっているようで、「じゃあ、行きましょうね~」と言って歩き出す。
まずは下着からだそうだ。
当然、そんな所に同行出来るはずもなく、私は近くの休憩スペースに座り込んだ。
しばらくすると、真っ赤な顔をしたタニアを連れて、4人が戻ってくる。
そういや、しばらく前に店からタニアの「きゃ~!!」という声が聞こえたような、聞こえてないような?
手には大きな紙袋が2袋。
ユリには「必要なものは必要なだけ買って良い」と言って、財布ごと渡してある。
そもそも数日はこっちの世界に居る事になるし、必要であればあっちの世界に持って行っても構わないと思っているので、沢山買って良いと伝えておいたのだ。
「ちゃんと測ったら、タニアさんはEカップやったわ~」
「やから、そういう情報はいらんて...」
なんで、こいつらは私に胸のサイズを申告してくるんや?
いや、興味はあるで?あるけど...う~む...。
で、次は靴だ。
今履いているのはお母さんの靴だ。
サイズ的にはちょっと大きいので、正直よろしくない。
スニーカー2足、パンプス、ヒールと購入した。
スニーカーの1足はすぐに履いてもらった。
その方が安全だ。
あ、当然今回のお金は全て私が出す。
輝と葵には白い目で見られたが、あっちの世界では全てタニアに出してもらったと素直に言ったら、「仕方ないですね~」と折れてくれた。
ん?なんでこいつらが折れるんだ?
ちなみに、私もいくつか特許を持っており、企業から使用料を貰っている。
なので、お金は全く苦労していないのだ。
そして、小物。
バッグや財布、ちょっとしたアクセサリー等を購入。
タニアは遠慮していたが、こっちの世界では持っていないと逆に浮くので、「これは必要なもの」という事で納得してもらった。
もっとも、これもユリが「必要」と言うからで、私には全くわからないのだが...。
あと、筆記用具も買った。
タニアは私と一緒で色々とメモを取るとの事なので、慣れているであろう万年筆と、システム手帳を買ってあげた。
ちょっと手荷物が多くなってきたので、また一旦車に戻り荷物を入れる。
この後に服を買うので、今の内に身軽になっておくのが良さそうな気がしたのだ。
そして、まずは普段着から。
タニアは普通に美人なので、シンプルなものが良さそうだと思い、飾りの少ないものを色々と購入。
もちろん、コーディネーターはユリ、輝、葵の3人。私は見ているだけだ。
次にちょっとおしゃれなものを選ぶ。
これはタニアも自分の意見を言いつつ、輝と葵が検討。結果をユリがまとめて決めるという流れ。
今から気温はどんどん上がっていくので、春物、夏物を買っていく。
私は工業的なデザインは出来るが、服飾は全くの素人なので、すべてお任せである。
『なぁ、リョウは私にどういう服を薦めるんだ?』
ふいにタニアが聞いてくる。
え~...私に聞くのか?それ...。
「了くん。ちょっと考えてあげたら?」
私がこういうのが苦手な事を良く知っているユリが笑いながら私を促す。
「了が選ぶんだ...良いなぁ~」
「お兄様、次の機会には私の衣装も選んでくださいね」
どんどんハードルが上がっていく。
が、タニアには本当に世話になったからな。ちゃんとしたものが選べるか分からないが、考えてみようか。
しぶしぶ、と言った体で店内に並んでいる服を見ていたが、合いそうなものがあった。
店の中に飾ってあったマネキンが着ていた服。
藍色のセーラー服のような衿が付いた、裾の長いワンピース。なんか、お姫様みたいなデザインだな。
さっき白いヒールも買っていたから、なんとなく合いそうな気がする。
黒のパンプスも合うかもな。
「これ、良いんじゃないか?」
「あら?本当ね。似合うと思うわよ?」
『そうなのか?ちょっと、可愛すぎないか?』
「タニアちゃんは元が美人だから、意外と合うと思うわよ?」
『なるほどな。しかし、これだとさっき買った踵の高い靴じゃないと合わないのでは?』
「そうね~。じゃあ、お家に帰ったら、歩く練習をしてみましょうね?」
『う~む...そうだな。よろしく頼む』
はぁ~...。本日最大の任務が完了して良かったよ...。




