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魔法を信じるかい? ― マッドサイエンティストの異世界旅行  作者: 黒々猫
■■■■■■ 第3章 大阪の日常はただただカオス
27/56

■■■ Step021 日本に残っていた宿題はカオスの香り

新しい章は大阪編です

いきなりカオス状態になります

久方ぶりに家に戻る。

うむ。やっぱり自分の家は落ち着くな。


「ここがリョウの納屋なのか?」


タニアが堅牢の間を見回して聞いてくる。

そうか、あっちは納屋だもんな。


「いや。ここは堅牢の間と言って、危険な実験をする時に使う部屋だ」

「危険な実験?」

「あ~...危険な実験もあるからな。そういう時はこの部屋を使うんだ」


爆発するかもというような危険な実験は多くはないが、銃火器のテストやエンジンテストは基本堅牢の間で実施するな。


「この光の帯も危険な実験だったのか?」

「いや、これは危険はないはずなんだが、念には念を入れてだな」

「ふ~ん...そういうものか...あと、あの天井が光っているのはなんだ?永続的に光を灯す魔法がこの世界にはあるのか?」

「いや、あれは科学によるものだ。あと、この世界には魔法はなくて電気というものが世界を動かしているんだ」


と、ここで簡単にこの世界について説明をする。


科学というものが発展している事によって、魔法は全く浸透していない事。

魔力の代わりに、電気やガスが利用され、生活に活用されている事。

特に電気は生活の基盤となっていて、生活に欠かせないものである事。

電機を使用する機器が発展しており、この部屋のあちこちのものは電気で稼働している事。


タニアは特に電気と言う者に興味を持ったようで、部屋の中の機器について色々と質問をしていった。

全く予備知識がない者に、電気で稼働する機器を説明するのは骨が折れたが、タニアの驚異的な理解力のおかげで、おそらくリアに説明する労力の1%程度で済んだ。


「それにしても、この照明器具は素晴らしいな!ぜひ我が家にも欲しいものだ」

「確かにそうだろうな。夜は本当に暗いから大変だろうし、火を使うから火事の心配もあるしな」


江戸の街も火事は多かったしな。

中世ヨーロッパも石造りも多いが木造もあるだろうし、火事はやっぱりどこの世界でも脅威なんだろう。


「そうなのだ。街の中でも時々火事が出ているからな。その度に駆り出されてしまうのがちょっと億劫だな」

「火事に駆り出される?」

「水魔法が使えるから、消火にな...」

「なるほど~...」


魔法の便利な所だな。

あの世界だと、普通にバケツリレーとかになるんだろうな。

おそらく汲み置きとかもあるだろうが、とても足らないだろう。


「だから、その心配のない照明器具が本当にありがたいと思うぞ」

「だろうな。しかし、その為には電気を発電しなければならないので、まずはそこからだな」

「電気か...。さっきの話ではかなり大掛かりな施設が必要なんだろ?」

「そうだな。発電方法は色々あるのが...個人的にはこっちの技術をあっちに世界に一般化させたくは無いんだよな」

「どうしてだ?」


う~ん...魔力と関係しそうだからっていうのもあるんだが、それは想像の域を出ていないからな。

基本は現地の人たちが、そこに到達しなければならないと思うんだよな。

そうでなければ、与えられたものだと、ちゃんと使いこなせないと思う。

もっとも、それはこっちの世界でも同じではあるのだが...。


「タニアたちに使ってもらう分には良いんだ。でも、これは一般化するのは膨大な時間と膨大な労力が必要だからな。そんなのは私1人では賄えない」

「それもそうだな」

「そうそう、あの光のゲートもこの電気で稼働していて、電気が切れると光のゲートは閉じてしまうんだ」

「なに!?それは一大事じゃないか!!」


思わず私の腕に縋りつく。

まぁ、そうなったらタニアはこちらの世界で迷子になるようなものだからな。

もちろん、そんな事には絶対させないけど。


「そう。一大事だから、光のゲートの機械にはかならず電気が通るように、色々と工夫をしている。なので、よほどの事が無い限り、この光のゲートは閉じないよ」

「...分かった。リョウの事を信じているぞ...」


と言いながら、私の腕をつかむ手には力が入っている。

自分の能力では絶対にどうにもならない事は承知していて、全ては私の行動による事になる。

私を信じていない訳ではないだろうが、不安になるのは仕方がない事だろう。


「そんなに心配しなくても大丈夫だ。光のゲートの作り方はちゃんと記録してあるので、同じものを作る事は難しい事じゃない。何かあればもう一度つくれば良いんだ」

「そうなんだな。いや、すまなかったな。そもそもリョウもそういう問題が分かった上で私たちの世界に来ていたはずだからな」


と、頭を下げて謝って来た。

いやいや、そんな事は求めてないんだが...。


「いや、頭を上げてくれ。私たちは同志じゃないか」


タニアの肩に手を置いて、頭を上げさせる。

まだちょっとタニアの顔が優れない。


瞬間、その顔が彼女と重なる。

それを無理矢理引きはがす。


「大丈夫だ。そして約束する。ちゃんとタニアをリアの元に送る。私もまだまだタニアの世界で色んな事をしたいからな」


自分でも似合わないと思うが、努めて明るい口調でタニアを励ます。


「あの千里眼みたいな事をまだまだしたいって事だな?」


今度はタニアの顔はちょっと困った顔をしている。

どの部分で困っているか、さすがに分からないんだよな。


「当然!!」

「困った奴だ。だが、それならば私もこっちの世界で楽しませてもらおう」


無意識につかんでいた私の腕を、無意識に離しいつものように腕を組む。

その笑顔は私を試すようなものであり、からかっているようにも見える。

やっといつものタニアらしくなったな。


「もちろん。十分楽しめるハズだ。私が保証するよ」

「よろしくな」

「では、改めましてようこそ!我が世界に!貴女を歓迎いたします」

「うむ。よきに計らえ」


同時にお互いの顔を見つめ、そして同時に大声で笑い合った。



さて、こんな実験室では味気ないので、家のリビングに案内しよう。


あちらでは紅茶を美味しくいただいたので紅茶を...と思ったが、あれ程美味しい紅茶を毎日飲んでいるので、さすがに恥ずかしいか。

では、自慢のコーヒーを飲んでもらおうか。


地下の実験室から1階のリビングへの道中、タニアはあちこち見回している。

ま、分かるけどね。


と、思いながらタニアを案内してリビングのドアを開ける。


「了!!」


おっと、どうやら輝が来ているようだ。


「了くん、戻ってきたんやね」


ん?ユリもいるのか?


「お兄様!寂しかったです!!」


え?なぜ葵がいる?


「あら、了ちゃん。ちゃんとご飯食べてた?お昼は何が良い?」


なんで?智代おばちゃんも居るの?



「ユリがね、今朝からソワソワしてたんよ。やから気になって聞いてみたんよ。そしたら、何?了ちゃんが女の子を連れて家に帰ってくるって言うやん!」


何も聞いてないのにしゃべり始めるおばちゃん。

私とタニアはリビングの入り口で立っているしかなかった。

もっとも、タニアは私が止まったので動かないだけだろうが。


それにしても一番の危険人物の事を失念していたのは正直痛い。

悪い人ではないし、方向性としては非常に良い人なんだけど、免疫がないとダメな人なのだ。


「ちょっと、お母さん。その話は後にして、とりあえず座ってもらわへんと」


さすがユリ。

実の親なので遠慮なく言ってくれるので助かる。


「そうやね。ま、座りぃな」


あの~...ここは私の家なんですが?

あかんわ...完全におばちゃんのペースやわ...。



リビングのソファーに腰を落ち着ける。

タニアは人見知りとかではないはずなのだが、大阪パワー...特におばちゃんに恐れをなして私にくっついている。

さすがの「紫紺の魔女」と言えど、おばちゃんには勝てないようだ。


そんな訳でタニアは私の左隣に座る。


いつもは左に陣取るユリは、今回は右隣に座り、私の正面には何故かおばちゃん。向かって右に葵、左に輝と並んだ。


目の前にはいつの間にか用意されたお茶。

色合いから見て玉露だな。


きっとユリが用意してくれたんだろう。ありがたい。


湯飲みを両手で持って、一口飲んで一息吐く。


ふぅ~...。

しかし、戻ってきていきなりカオスだな。落ち着かない。落ち着こう。


隣を見ると、タニアも私の真似をして両手で湯飲み茶わんを持って飲んでいる。


「で、どうなん?その娘は婚約者とか?」

「なんでやねん!」


いきなり爆弾を投げられた。

なんでそうなるんかな?


早々にペースをこっちに持ってこないと確実に負けてまう。

タニアにはまず自己紹介...あ、タニアはこっちの言語が分かんないんだよな。


「まずは紹介する。彼女はタニア・ソフリート。タニアって呼んであげてくれ」


と、タニアをみんなに紹介する。

雰囲気で自分が紹介されたと分かったのだろう。


すっと立ち上がり、綺麗なカーテシーを見せてくれた。


女性陣は「おぉ~」とどよめいた。

生で見る事はないもんな。


『我が名はタニア・ソフリート。異世界から来た者だ。よろしく頼む』


と、異世界の言語で自己紹介をする。

あえて堂々と自分の言語でしゃべったようだな。


しかし、あっぶね~...。ここで素直に「異世界」と言うとは思わんかった。

タニアには翻訳機を渡そうと思ってたんやけど、まだ渡してなくて良かった。

おばちゃんは善良なんやけど、スピーカーやからな...。


タニアの挨拶の中に「タニア・ソフリート」って入ってるから、自己紹介したとみんな感じてくれたやろう。


「私は彼女の国でめっちゃ世話になってな。で、この国を見てみたいって言うから、お礼代わりにこっちに連れてきた。それだけや。そうそう、彼女は19歳やからな」


と、簡単に経緯を説明しておいた。


ちなみに、私が25歳、ユリが23歳、タニアが19歳、輝が16歳、葵が13歳だ。

おばちゃんの年齢も知っているが、まぁ良いだろう。


紹介が終わったので、タニアを促して座らせる。


じゃあ、こっちの自己紹介はタニアの正面の輝からしてもらおうかな。


「輝。自己紹介してあげて」

「良いけど、タニアさんは言葉分からへんよね?」

「私が翻訳するから問題ない」

「変な翻訳せんといてや」


と、不要な一言を言いつつ、立ち上がる。

タニアがしたようなカーテシーをする。

器用なもんだ。


「私は江上輝。了の相棒になります。どうぞお見知りおきを」


相棒ってなんだよ。まあ、あながち嘘じゃない。あと、「私」になってる。

最近は実験を色々手伝ってくれるし、理論構築の際には話相手にもなってくれる。

...うん。頼もしい相棒だな。


『タニア。この娘は私の実験の助手をしてくれるヒカル・エガミだ。きっと君にとっても良い話相手になると思うよ』

『彼女は宿で話していた娘だな。声で分かったぞ。よろしくと伝えてくれぬか』

『もちろん』


トモニアの宿で電話をした際、輝の『なんで切っちゃうんよ!リョウのバカ!!』という絶叫が聞こえていたハズだな。

タニアから見て、輝はどういうイメージだったのか、ちょっと気になるが...。


「こちらこそ、よろしくだってさ」

「よかった!」


にっこり笑って勢いよくソファーに座る。

お~い、輝。そんな短いスカートでそんな動きをすると中が見えるぞ。あとで注意しておこう。


さて、次はおばちゃんなんだが...。


すっくと立ちあがり、なぜかテーブルにドンと手を突いて身を乗り出す。

とたんにタニアは驚いて私にしがみつく。

瞬間、輝と葵の顔色が険しくなる。


勘弁して~な...。


「アタシはユリの母親で、近所に住んでんねん。困った事があったら言ってきいや?」


と、ユリを指して説明する。


「お母さん!名前!」

「あ、そうやった。アタシは園田智代いうねん。覚えといてな」


ユリのフォローでやっと名乗る。ホント、言いたい事しか言わないんやから...。


『彼女はトモヨ・ソノダ。私の隣の娘の母親で、この近所に住んでいる。なんとなく分かるだろうが、世話焼きで良い人なんだが、色々と問題を起こすんだよ...』

『な...なるほど。こちらにもリアみたいな人がいるんだな』


リアかぁ~...個人的にはリアよりもひどいと思うんだよな...。

この人、ホントのトラブルメーカーなんだ。


以前の高校の運動会なんて...。

いや、それは今は関係ないか...。


『いや、まぁそうかもな。あ、それから、基本的に異世界の話は秘密にしてくれ。智代以外は知っているが、それ以外は秘密でな』

『そうなのか?承知した』


ともかく、タニアはかなり優秀だから、きっと今後は大丈夫だろ。


「おばちゃんは妹と同じような性格をしてそうだ。だってさ」

「あら!妹さんがいてはんの?その娘も来てくれたら良かったのに」


トラブルが増えるだけだが、リアを連れてくるのは約束だからな。いずれ連れてこよう。が、おばちゃんには会わせないようにしないとな。

そういや、リアと輝は同い年だったな。


「そのうち、連れてくるかもな」


放っておくとおばちゃんは、話をどんどん違う方向に進めるので、座ってもらって今度は葵に立ってもらう。


「私はお兄様を敬愛する大橋葵と申します。よろしくお願いします」


と、きれいな日本式のお辞儀をして挨拶をする。

敬愛って...まぁいいけどさ。


『彼女はアオイ・オオハシ。ある事件があって、私に懐いてしまった近所の娘さんだ』

『ある事件?』

『それはまた今度話すよ』

『ふむ。ともかくよろしく頼む』


ある事件の説明をどうやってするかだが...まぁ、タニアにはしゃべっても問題ないだろう。

ともかく、自己紹介を進めていこう。


「よろしくだって」

「はい!よろしくです!」


で、最後はユリだな。


「私は園田ユリ。了くんとは幼馴染になるの。了くんの事は私が一番知ってるから、なんでも聞いてね?」


と、いつものふわっとする、優しい笑顔で挨拶をする。

私の事を一番知っているって、まぁ事実だがな...。


『彼女はユリ・ソノダ。さっきも言ったようにこちらの女性の娘で、私が小さい時から一緒に遊んだ仲だ』

『彼女も科学者なのか?』

『いや、専門は医療福祉工学だ。同じ探究者だが、科学者というより研究者だな』

『医療福祉?よく分からないな...』

『簡単に言うと人の体と機械を繋ぐ研究をしている。科学者と言うなら輝だろう。彼女は私の助手も出来るので』

『そうなのか?じゃあ輝は魔法も使えるのか?』

『いや、魔法は私だけだ』

『なるほど。色々と事情があるんだな』

『まぁ、今度ゆっくり説明するよ』


ただ、なんだかんだで、一番助けてくれているのはユリなんだよな。

タニアとユリが仲良くしてくれると嬉しいんだが...。


「ねぇ、なんて言ってるん?」

「ユリも私と同じ科学者なのか?って聞かれたんで、違うって伝えたんや」

「僕の方も見てなかった?」

「科学者はどっちかと言えば輝やでって言ったんや」

「ま、了の実験の助手をしてますからね!」


これで自己紹介は終わったな。

それにしても、帰ってゆっくりしようと思ったのにな...。


まぁ、面倒事が終わったと思おうか。


「それにしてもめっちゃ美人さんやん。金髪碧眼やし、ホンマ、お人形さんみたいやね」

「美人なのは確かやね。それに声もめっちゃ綺麗!僕もあこがれるわ」


さっそく、おばちゃんが話し出し、それに乗って輝がタニアを見て褒め倒す。


「それにその服、凄いやん!コスプレの趣味があんの?」


と、タニアの姿を見ておばちゃんが言う。

輝と葵、ユリは苦笑いをしているので、そこは分かっているみたいだ。

異世界からの訪問者って伝えているからな。


実際、タニアの恰好は冒険者のそれだ。


藍色のチュニック。紫のローブ。魔法使いの杖。

どう見てもコスプレと言われても仕方がない。

めっちゃ年季が入ってるけどな。

あと、あまり嘘を混ぜるのは後が大変なので、しれっと本当の事を混ぜておこう。


「事情があって、これが彼女の普段着やねん。やから後で服を買いに行かなアカンねんけど、それまでの服をちょっと貸して欲しいねんけど...」


私の感覚では、ユリが一番身体的特徴が似ている。

若干胸はユリの方が大きいようなのだが。


「ユリ。すまんけど少しの間、彼女に服を貸してやってくれへんか?」

「ええよ~。じゃあ、ちょっとお古になるけど、何着かあげるわ。もう着ないのがあるから」

「そうなんか?助かるわ」

「じゃあ、さっそく家に帰って用意してくるわね~」

「すまんな」

「大丈夫よ。じゃあ、お母さん帰るわよ~」


立ち上がりつつ、おばちゃんに声をかける。

声をかけられたおばちゃんは驚く。


「え?アタシも?なんで?」

「お母さんが居て、タニアちゃんが落ち着いていられると思ってんの?」


正論。


「え?そんな事ないわよねぇ~」


と、また身を乗り出してくる。タニアがしがみつく。輝と葵が目を細める。


だから、その圧倒的パワーはアカンって言うに...。


「ほら。タニアちゃんが驚いてるやろ。帰るわよ」

「え~...そんな事ないと思うねんけど...」

「帰るわよ」

「...分かりました」


ユリの圧に負けて、おばちゃんがすごすごと歩き出す。

どっちが親か分からへんな。


「じゃあ、タニアちゃん。また後でね」

「またね~」

「お母さんは家で留守番。そもそも家の用事が終わってないでしょ!」

「え~!だって、こんな面白いのしばらくぶりやのに~!」

「それがダメやって言ってるんやんか!」


と、ユリが暴風雨を連れて帰ってくれた。

助かったわ~...。


さて、改めて話を...と思ったが、まだ輝と葵の顔が険しい。

ふと隣を見ると、まだタニアが引っ付いている。


すぐそばにタニアの顔があり、タニアも私の顔を見る。


「ひゃああぁぁ!」


慌てて離れるタニア。

もっとも、同じソファーに座っているので、それほど離れる事は出来ないのだが。


しかし、久しぶりに見たな。こんなタニア。


私はかなり耐性が付いているようで、最近はあまり驚かなくなったな。

それはそれで良いのかも。


『あ...ユリとトモヨが出ていったけど、どうしたんだ?』


タニアがちょっと遠慮ぎみに聞いてきた。

まだ顔が真っ赤だから、落ち着いてはいないんだろうな。

そんなタニアを見て、逆にこっちが落ち着いてきた。


『あ~。見て分かると思うけど、この世界の服装はタニアの世界のものと全然違うからな。ユリがタニアの服を用意してくれる事になったんだ』

『そうなのか?それは助かるが...良いのか?』

『私が言うのはなんだが、ユリはとても頼りになるからな。任せておけば大丈夫だ』


と、タニアにも説明出来たので、やっと話を進める事が出来るな。


「さて、おばちゃんが帰ったから色々と話をしたいんだけど、良いか?」

「はい。構いません」

「あ、でもユリさんがいないけど大丈夫なん?」


輝はさすがに鋭いな。

でも大丈夫だ。


「ユリには後で説明するし、あいつは空気を読む達人やからな。基本大丈夫や」

「...いつも通り、ユリお姉様には絶大な信頼をしてらっしゃるんですね...」

「ユリさんって、大きな存在よね~」


ちょっと?お二人さん?


「胸も大きいし...」

「こないだFって言ってましたわ」

「また大きくなったん?」

「らしいです」


そんな美味しい情報...げふんげふん。

そんな事は今は関係ないのだ。


「お前ら...男の私がいるんやから、そういうのは他所でやってくれへん?」

「「は~い」」


絶対わざとやってるやろ...。まぁ、いつもの事なんやけど。


「ともかくお前たちも知っての通り、タニアは異世界の人やから、色々とサポートしてあげて欲しいんや」

「はい。お兄様がお世話になったと聞いているので、それは問題はありませんが、そもそも何があったのか、教えていただけますか?」

「そうやね。僕もそれが気になるわ」

「そうやな。じゃあ、ちょっと長くなるけど聞いてもらおうか」


と、そこまで言ってタニアに説明をしようとして、タニアを見る。

タニアも私の顔を見る。

ちょっと考える。


このやり取り、地味に大変だよな。


改めて2人を見る。


「すまんが、少しだけ待ってくれへんか。このままやとタニアが会話に取り残されるし、私も翻訳しながらだと時間がかかって大変やからな」

「え?翻訳機ってあんの?」

「そもそも私がタニアとしゃべれるんやから、翻訳機ぐらいはすぐ用意出来る。なんで、ちょっと待ってくれ」


魔術大全の解析結果をAIに読み込ませているから翻訳そのものは問題ない。

あと、リアとミームが電龍と色々と会話したらしく、その実績データが反映されており、かなり精度は上がっているのだ。


『タニア。このままだと会話が不自由だろう。翻訳できるものを持ってくるから、少しここで待っててくれないか?』

『翻訳!?それはとても助かるが、電龍みたいな大きいのは困るぞ?』


確かに、タニアにとって翻訳と言えば電龍だもんな。


『それじゃあ普通に使えないだろ?とにかく、そんなに大きい物ではないから安心しておけ』


と、リビングを出て研究室に戻り、自家製のスマートフォンを用意する。

市販品のものは性能がいまいちだからな。


実験用にいくつか作ってあるスマートフォンの内、少し大きめのものを選ぶ。

翻訳アプリは作れていないので、家のAIと繋げて翻訳出来るように調整。

通信機能も一応つけておこう。

吹田市内なら十分繋がる。


時間にして約30分。色々機能を付けてしまったので時間がかかったな。



部屋に戻ると、既にユリが戻ってきていた。

意外と早いな。


部屋の中を見ると、待たせてた間に早速日本語講座が始まってたらしく、部屋の中の物の名前をタニアに教えてくれたようだ。


「ユリ、戻ったんか。早かったな」

「あ、了くん。実は用意してたんやけど、お母さんが付いてきちゃって...」


さすが空気を読む達人。タニアの服についても予測済みで既に準備してたんだろう。

だが、当日おばちゃんが急に一緒に来るって話になって、急遽持ってこないようにしたようだ。


「それは色々すまんかったな。で、聞いたかもしれへんけど、今からタニアに自動翻訳機の使い方を説明するから、少し待っててくれへんか」

「うん。分かったよ~」


と、タニアにスマートフォンを渡し、使い方を説明する。


『これでみんなの話している内容が分かるんだな』

『そうだ。会話の内容はここに表示されるから読んでくれれば良い。で、ここを押して話をすると、タニアの言葉をこっちの言葉に翻訳してしゃべってくれるから、会話には困らなくなるよ』


と、ディスプレイを指しながら説明する。


『そうなのか?それは非常に助かる!』

『最終的にはこっちの言葉を覚えてくれたら良いけど、それは難しいからな』

『私もこっちの言語には興味があるからな。いずれ攻略してみせよう』

『頼もしいな』


さて、こないだの事を話して聞かせるか。


「まず、そもそもの話は、新しい通信規格の送信と受信の実験をしようとしてたんや」


と、3人にあの日の話を聞かせたのだが、語ってて思ったよ。


めっちゃ面白い状況やったんやん!

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