■■■ 【サブストーリー】タニア Step001 日常の崩壊
タニアが了と会った日の、タニア側のお話です
この日、私の日常が崩壊した。
いつものように私の納屋に荷物を取りに来たのだが、突然、目の前に光の帯が現れたのだ。
光の向こう側には見た事のない部屋の様子が見える。
当然、この部屋...納屋の様子とは明らかに違う。
白い部屋だ。なんだろうか。
身体をずらすと光の中の景色も変わる。
どうやら、光の向こうは別の世界のようだが、どこだ?
詳しく見てみようと思い、近寄ろうとした瞬間、光の帯から小さなものが飛んできた。
...ココーン...
床に落ち、高い音を立てて転がった。
石?白い石のようなものだ。
恐る恐る近づいてみると、それは硬貨のようだった。
手を伸ばして拾い上げてみる。
見た事のない模様。文字。しかも、かなり精密に彫り込まれている。
これは凄い技術だ。
しかも、これは真円じゃないのか?
凸凹もない。
いや、あるがそういう類のものではない。
非常に細かいものだ。
この硬貨らしきものをはかなりの技術で出来ている。技術格差が恐ろしい。
そこで思いつく。
これは明らかに投げ入れられた物だ。
じゃあ、誰がこれを投げ込んだのだ?
投げ込まれた方向、光の帯を見てみる。
そこには...1人の男が立っていた。
白い服装に黒いマント。白く高い帽子を被っている。
手には魔法使いの杖...ではないな。シンプルな杖を持っている。
年齢は、私よりも年上だろうか。同い年にも見えなくもない。
瞬間に我に帰り、左手に持つ杖に魔力を注ぐ。
これは異常事態だ。
少しの睨み合いの後、彼が動いた。
今から彼が何をしようとしているのかは分る。
それは、私も同じ事をするだろうと思うからだ。
そう、こちらに来ようとしているのだ。
彼も私を認識している。
私が彼の行動を予測している事を知っている。
危険だ。
未知の世界の、それも技術格差がある世界からの侵略者。
時間が無い。ここは私が対処するしかない。
持っていた杖を構え直し、彼を迎え撃つ準備をする。
そして、男が現れた。
こちらに現れた彼は緊張もせず、私を見ている。
少し困っているようにも見える。
両手をだらりと降ろしており、敵意は感じない。
ともかく、確認をしなければならないだろう。
「お前は誰だ?」
私はそれを言うのが精いっぱいだった。
それを聞いた彼が驚いた顔をする。
どうしてだ?
「お前は誰だ!?なぜそこに居る!?」
もう一度、同じ事を聞いた。
すると、真顔になり、こう言った。
「私は...悪の科学者だ。ここには...なぜ居るのかは分からん」
しばらく会話をしたが、彼は光の向こうの世界...異世界から来たそうだ。
良く分からないが、遠い場所で会話が出来るようにする実験をしていたんだそうで、その副産物として、この光の帯が出来たんだそう。
先ほどの貨幣だそうで、一応彼に返しておいた。
それほど高価なものでなければ記念に欲しいと思ったのだが、貨幣だとやっぱりまずいだろうからな。
彼との会話はとても楽しいものだった。
科学というものは分からないが、どうやら私と同じ「探究者」だという。
であれば、私たちは志を同じくする「同志」だと瞬間的に思った。
彼ともっと話をしてみたい。
そう思った時には行動していた。
「では我が家に招待しよう。同志よ」
と...。
彼は「リョウ・カダヤ」と言うらしい。
私の事は「女」だと認識しており、その視線は私の身体を滑る。
が、すぐにあらぬ方向に視線を飛ばす。
面白い。
見られる事には慣れている。
その理由も分かっている。
しかし、ほとんどの男は検分するが如く私の身体を凝視する。
今までの男は私を「女」としか見ていなかった。
私は女である事を後悔した事はない。が、疎ましい事この上ない。
しかし、このリョウと言う男は違う。
男だからある程度は仕方がないと私も割り切っている。
見られると言う事は理解している。
リョウも私の身体を見ているがすぐに逃げる。
逆に面白い。
見られるという事が面白いと感じる事が面白い。
新鮮な体験をした。
しかし、それ以上に、会話をすると刺激される。
同じ高みで話が出来る。話を説明しなくても通じる。
面白い。楽しい。
会話をしていると余裕が出来、リョウを観察してみる。
どうやらリョウは男の本能として「胸」を見てしまっているようだ。
だが、すぐに視線を逸らす。
胸を強調するように腕を組んでみると、視線が来る。
が、すぐ逃げる。
ソファーに勢いよく座り、胸を揺らしてみる。
すると視線が来る。
が、すぐに逃げる。
昔、魔術学校の先輩が、「男の視線を集めるのが楽しい」とか言っていた。
今の今まで面白いと思った事は一切ない。
が、リョウの視線は面白い。
嫌だった事が面白いと感じられた事。
リョウと出会って一番の収穫だと思った。
そして、そういう風に思える私自身も面白いと思う。
ともかく、リアが乱入するまで、リョウとの会話を楽しんでいたのだった。




