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魔法を信じるかい? ― マッドサイエンティストの異世界旅行  作者: 黒々猫
■■■■■■ 第2章 初めての異世界の討伐依頼はマッドな香り
23/55

■■■ Step020 タニアの旅立ちはマッドでカオス

タニアとリアはどうなるんでしょうね

ともかく、次回から大阪編になります

ミームの一言で、タニアの言動が『結婚』を匂わせるものだったと、今更ながら気が付いた。


見るとタニアは真っ赤な顔で俯いていた。

同じように「結婚すると宣言した」ような言い方だった事に気が付いて、恥ずかしくなっているのだろう。


もちろん、我々は結婚する訳ではないのだが、それを説明するには全てを話さなければなるまい。

それには、リアに戻ってきてもらわなければならないのだが...。


一瞬で考えをまとめ、ミームに向かって話し出す。


「私とタニアは結婚する訳ではない。だが一緒に旅をする事は本当なんだ。ちゃんと説明をしたいんので、悪いがリアを連れてきてくれないか?」

「私がか?私は良いが、この場合はタニアが呼びに行くのが良いんじゃないか?」


なるほど。それも一理ある。が...、


「これは個人的な意見なんだが、今のリアはタニアと話をしたくないと思う。当然私とも話をしたくないだろう」

「あ~...確かにそうかもな」

「だとしたら、ミームしか居ないんだよ。お願い出来ないかい?」


日本人の悪い癖で、手刀を目の前に立ててお願いする。


「...なるほどね。分かったよ。ちょっと時間がかかるかもだけど、待っててくれな」

「分かった。すまないね」


ミームは「任せな」とでも言うように、手をひらひらさせて部屋を出ていった。

普段から多くを語らない。が、その背中が全てを語っていた。頼もしいな。



部屋には私とタニアの2人きりになった。


あの日の事を思い出す。あの時は警戒心しかなかった。今は...まぁ、本当に同志という感じがするな。

もっとも、それはリアに対しても、ミームに対しても感じている事ではあるんだが。


最初にここに来た時と同じ構図だが、あの時とは違ってタニアが小さく感じる。

勘違いとは言え、妹を泣かせてしまったもんな。


私はミームが戻ってくるまで、ゆっくりと紅茶を楽しむつもりだったが、タニアが小さい声で話しかけてきた。


「リョウ...その、すまないな...」


いつも自信に溢れたその声は、さすがに自信なさげだな。


「大丈夫。問題ない。リアにもちゃんと説明しなきゃと思っていたし、ミームも色々と気を使ってくれているからな。仲間外れにするのは気が引けていたんだよ」

「そう...か...そうだよな」

「大丈夫。ちゃんと説明するし、後で納屋に行って、実物を見て貰ったら分かってくれるさ」

「そうだな」


最後の一言は、いつものタニアに戻っていた。


ともかく、あの2人には全部話をしよう。

そして、タニアとリアには仲直りしてもらおう。



およそ20分後にミームに連れられてリアが戻って来た。

何も言わずに、さっきまで座ってたタニアの隣にストンと座る。


ミームも何も言わずに私の隣に座る。


続いてメイドさんが入ってきて、冷めた紅茶を入れ替えていく。

これはミームが気を利かせたんだろうな。


メイドさんたちが一礼をして部屋から出る。

壁に耳あり、障子に目ありというからな。

ここで防音の魔法をこっそりかけておこうか。


魔法をかけた瞬間、タニアがこちらを見た。

あら、ばれちゃったみたいだな。


ちょっと苦笑いをして返すと、タニアも苦笑いで返してくれた。

分かって貰えたようでなによりだ。


さて、説明をしなきゃだな。


「全員が揃ったので、最初から説明をさせてもらおう」

「説明?旅の説明なの?」


リアが不安げな表情で、不安げな声で聴いてくる。


「リアが何を心配しているのかは分からない。が、これを聞けば安心出来ると思うので、ちょっとだけ聞いててくれるか?」

「あ...うん。わかった」


私の真剣な声に、リアもちょっと落ち着きを取る戻したようだ。


「実は、私はこの世界の人間ではないんだよ」

「え?どういう事?」

「まさか、神様とか言わないわよね?」


人間は辞めてませんから。

あと神様は飛びすぎです。


「いやいや、普通の人間だよ。ただ、ここではない所から来たってだけだ」

「ここじゃない所って、東の端の国なんでしょ?」

「それは、歩けばいずれ行ける場所だけど、私の場所は歩いても到着できない場所なんだ」

「意味分かんない」

「私も分からないぞ」


でしょうね。

いや、これは言葉だけの説明では無理だな。


「まぁ、あとでその証拠を見せるんだけど、とにかく、ここではない世界から来たって事だ」

「じゃあ、どうして来たのよ」

「実は、その『どうして』は今でも分からなくて困っているんだが。ともかく、こっちに来た時に目の前に居たのがタニアだったんだ」

「え?じゃあ、それって...」

「そう。あの日リアがこの部屋に飛び込んできた日、私はこの世界でタニアと会ったんだ」


あの日の出来事を簡単に説明した。



説明し終えると、部屋が静かになった。リアもミームも、しばらく何も言わなかった。こういう沈黙は嫌いではない。


「そんな事があったのね...」

「そうだ。私はそこで初めてリョウに出会って、話をして、友となった」


お友達になるの、早かったよね~。


「そして、タニアはこの世界を案内してくれた。今度は私がタニアを私の世界に案内する」

「それだけの話なんだよ。ちゃんと説明出来てなくてすまなかったな」


ちゃんと「結婚するんじゃない」って事は伝わったようだ。


「いえ...確かに、そんな事だと簡単には話せませんよね」

「でも、これでリョウが普通じゃないって事の説明にはなったな」

「そうよね...ずっと驚いてたもん」


全く別の世界のテクノロジーを目の当たりにしたのだ。

驚いて当然だよな。


「それに関しては、私もすまないと思ってる」

「ま、面白かったから良いんだけどね」

「便利な道具も貰えたし、私も問題ないな」

「君たち、意外としたたかだね」



そして今、4人で納屋の中に来た。

リアの目が丸くなっている。ミームは口を丸くしている。2人の反応が対照的で面白い。


「これが...光の帯...」

「そうだ。これを通って私はこちらの世界に来たんだ」

「これ...通れるの?」

「ま、普通はそう思うよな」


と言って、私は光の帯に飛び込んだ。

瞬間、堅牢の間に降り立つ。


振り返るとタニアがにやにやと笑い、リアが目を丸くし、ミームが口を丸くしていた。


タニアの口が何かをしゃべっているように動いているが、聞こえない。

どうやら、この光の帯は「物体」は通すが、「音波」は通さないらしい。でも「光」は通すみたいだな。「光」も波なんだが...。

これはまた新しい発見をしたのかも知れない。


と、今はそんな事よりもタニアが何を言っているのか分からないので、一旦向こうに戻るとしよう。


何度目かになる異世界訪問だな。もう慣れてしまった。


「どうだ。ちゃんと行って帰ってこれただろ?」

「本当だったんだ...」

「これ...私たちも通れるのか?」


ここまで来て、タニア達が通れないって事はないハズだ。

だが、せっかくなのでみんなで通ってみようか。


「まだ私だけしか通ってないが、問題はないはずだ。通ってみるか?」

「え?良いの?」

「通るだけなら問題ない。ただし、向こうの世界はおそらく君たちにとっては衝撃の連続になる。かなりの覚悟が必要だぞ?」


私の持ち込んだ物は、あっちでもオーバーテクノロジーになるが、そもそも生活様式が違うので、受け入れるのが大変だと思う。

それに、こっちに戻って来た時にギャップでいわゆる「逆カルチャーショック」が発生するはずだから、そこも覚悟が必要だ。


「え?待ってよ。お姉様はどうなるのよ?」

「タニアは私と同じで、未知のものにも耐性がある。ほら、私はこの世界でも普通に見えるだろ?」

「リョウを普通だと思う人間はこっちの世界には居ないわよ。でも、言いたい事は分かるわ」


言いたい事が分かってくれるのありがたいが...。


「ひどい謂れようだな。が、ミームの言いたい事は分かる」

「とにかく、一度通ってみたいのだが、良いか?」


タニアは待ちきれないようだ。

きっと、あの日からずっと通りたかったんだろうな。


「もちろん。では、お嬢様方。我が世界へご招待させていただきます」


と、執事のように右手を胸に当て、左手を後ろの腰に回し、深々とお辞儀する。

ちょっと、やりすぎたかな?


「ふむ。よかろう。案内せよ」


それを見たタニアが意地の悪い笑いを浮かべ、右手を差し出して来た。


面白い。


私はマントを捌き、片膝をつき、右手を胸にあて、左手でタニアの右手を恭しく取る。

ゆっくりと立ち上がり、軽くタニアの右手をつまんでエスコートするように並んで光の帯に入る。


瞬間、無機質な堅牢の間に降り立つ。


「いかがでしょうかお嬢様。気分などは悪くはないでしょうか?」

「いや、大丈夫だ。ただ、本当に潜れたのだな。まだドキドキしているぞ」

「ちょっと!お姉様!まだ演技をしているのですか?」


すぐ後に光の帯を通ったリアが、リスになっていた。


「あ、いや!すまない。ちょっと面白かったものでな」

「私も見てて面白かったわね。まさかあのタニアがお姫様みたいな事をするとは思わなかったもの」

「悪かったな」


今度はタニアがリスになった。

それを見てリアとミームが楽しげに笑う。


もう大丈夫だな。


「さて、これで理解出来ただろ?私はこの世界の人間、『カダヤ リョウ』だ」

「本当に別の世界なんだね」

「そうだ。いずれリアにも、ミームにも、こっちの世界を体験して欲しいとは思うけど、まずはタニアに体験してもらって、タニアから説明や案内をしてもらうのが一番だと思う」


2人にも世話になったしな。


「そうなんだ...でも、それはどうして?」

「今まで言わなかったけど、タニア達の言葉は、こっちの世界では通用しない。誰もタニア達の言葉が分からないんだ」

「え?リョウは分かってるじゃない!」

「そう。この世界では私だけしか分からないんだ。だからまずはタニアだけ」

「そう言えば、電龍との会話は全然違う言語だったな」

「そういう事だ」


そういえば、あの時に「アレは私の国の言葉だ」って説明したはず。

まぁ、その後色んなものを見せたから、記憶から抜け落ちていたのかもな。


「わかった。でも、だとしたら、お姉様はかなり不自由なんじゃないの?」

「そこは大丈夫。私がいるからな」

「それもそうね」


そして、4人でゲートを潜り、タニア達の世界に戻った。



夕食をいただき、キャリーに伴われてあてがわれた部屋に戻り、ベッドに腰掛ける。

今日はスバン君は現れなかった。ちょっと残念。


さて、この部屋で寝るのは2回目か。

四泊五日の旅の中で、一番多く寝ている部屋だが、全く慣れない部屋だな。


ともかく、明日帰るので、輝とユリと葵に電話しておこう。


まずは輝からかな?

しかし、良く知った相手だが、ユリ以外の女の子に電話するのは毎回慣れないな。


『もしもし!了!珍しいじゃん!了から電話なんて!』


落ち着け!ハウス!


「あ~っと、明日の朝、大阪に戻る事になったから、その連絡や」

『ホンマ?マジやんな?』

「ともかく、明日帰るんやけど、1人お客様を連れていく事になったからな」

『え...まさか、そっちの世界のお嫁さんとか?』

「なんでやねん!こっちでお世話になったタニアって娘が、そっちの世界を見てみたいってなったからや」

『へ~...ふぅ~ん』

「信じてないな。まぁ、えぇけど。私がこっちでお世話になった御礼に連れてくるだけやからな」

『...まぁえぇわ。じゃあ、そのタニアって娘の面倒を見てあげたらえぇねんな』

「そういう事や。あと、タニアは輝よりも年上で19歳らしいからな」

『めっちゃヤバイやん!』

「なにがヤバいねん!」

『結婚適齢期やん!』

「そんな事言われても知らんがな!」

『了の裏切りもん!』

「意味分からん!とにかく、ユリにも話をせなあかんから、切るで!」

『うん分かった』

「じゃあ、明日な」

『うん!明日な!』


ふう...。これで難関はクリアした。

次は簡単なのにしよう。


『あ、了くん。電話くれてありがとう』

「いや、明日の朝に大阪に帰る事になったからな。その連絡や」

『そうなんや~。めっちゃ嬉しい』

「ちゃんとお土産もあるから、楽しみにしといて」

『分かった~ありがと~...って、あら?』

「んどないしたんや?」

『輝ちゃんからチャットが来た...『明日了が帰ってくるんやって』って』

「あいつ...まぁえぇけど」

『葵ちゃんが『私には連絡ない~』って泣いてるわ』

「いや~...さすがに電話は1人ずつしかでけへんねんけど...」

『そうよね~。とりあえず、私はちゃんと連絡貰ったから、早く葵ちゃんに連絡してあげて』

「分かった。すまんな」

『ううん。私は大丈夫。じゃあ、明日ね』

「あぁ、明日」


と、急いで葵にかけてやるか。


『もしもし!お兄様!!お待ちしておりました!!』

「声が近い近い!」

『あ、ごめんなさい...』

「あ~いやいや大丈夫やから。すまんな、もう知ってるみたいやけど、明日の朝に大阪に帰る事になったから」

『はい。輝お姉様からチャットで聞きました...って、これは...』

「ん?どうした?」

『お兄様、不倫ですか?』

「不倫?」

『そちらの世界から女性を連れてくるって、輝お姉様がチャットで言ってらっしゃいますが?』

「あぁ、それな。それは本当。こっちの世界でお世話になったから、そっちの世界を見せてあげる話になったんや」

『それはいわゆる異世界旅行という奴ですか?』

「そうやな。彼女にとってはそうなるな」

『分かりました。では、彼女のお世話はお任せください』

「急に態度が変わったな」

『そんな事はございません。ともかく、明日の朝に大阪に戻られるんですね』

「そうや」

『分かりました。ではお土産をお待ちしております』

「分かった。もうこんな時間なんで、もう切るで」

『はい。では、また明日』

「ああ、また明日な」


ふう...これでノルマ達成だな。


電話するだけだが結構疲れてしまった。


とりあえず、ゆっくり寝かせてもらおう。



翌朝、朝食をいただいてから4人で納屋に入った。

念のため、認識阻害の魔法を展開しておく。


これも無詠唱で展開したので、タニアに睨まれたが、認識阻害なので呪文を唱えるのはナンセンスなのだ。許してくれ。


さて、今からタニアを連れて大阪に戻る。


リアとミームには、私たちが向こうに行った後、この納屋に施錠をしてもらうのだ。

ただし、錠前は私の作ったものを取り付けてもらう。


それは私とタニア、リア、ミームの4人の個性情報でしか開かない、電子錠前だ。

ここは秘密の部屋となったので、この4人以外は入れないようにしたのだ。


もっとも、納屋を壊されたら意味が無いのだが、タニアの屋敷でそんな事をする者は居ないので、それは大丈夫だろう。

ただ、盗賊とかはご遠慮願いたいからな。


あと、あっちから防犯システムを持ちだし、納屋の中を監視させるようにする。

床下や天井から侵入される可能性があるからな。


こういうのは万全にしとかないと、後で困っても遅いのだ。



「お姉様、本当に行かれるのですか?」


昨日、事態は納得したけど、それとこれは別なようで、リアはタニアの手を取って名残惜しそうにしている。


「あぁ。ちょっと行ってくるよ」

「戻って来られますよね?」

「もちろん。私の居場所はこっちだからな」


リアはまだちょっと涙声になっているが、大丈夫だろう。

みると、ミームが「任せておけ」と言わんばかりにウィンクしてくる。

うん。頼もしいな。


「分かりました。リョウ、お姉様をくれぐれもお願いね」


やっと笑顔になったリアが私に話しかける。


「大丈夫。私もこっちでいっぱいお世話になったんだ。タニアの事は任せておいてくれ」

「リョウが嘘つきとかではないのは知っています。ただ...」


おいおい。そこで落ち込まれると私も落ち込むんだが?


「大丈夫だって、リア。聞けばこの世界とは違って、戦争や大きな争いはないって話じゃないか」

「そうなんだけど...」


ミームの元気づけもまだちょっと足りないみたいだな。


「この光のゲートはいつでも通れるから、何かあればタニアはここを通って帰ってくるさ」


昨日もこの4人で一度ゲートを潜ったのだ。

行き来出来る事は確認済みだ。


「それに、さっき渡した通信機で話が出来る。リョウの妹みたいに夜に連絡をしてくれれば良いさ」


と、これはタニア。


妹って...あ、それ、輝の事ね。

まぁ、確かに妹みたいなもんだ。小姑とも言う。


「じゃあ、すまないがしばらくこっちを頼むな」

「はい、お姉様。お任せください」

「私も今回の討伐の報酬で潤っているからな。リアの手伝いをしておくよ」

「ホント?それはとても助かるわ!」


と、そんな会話をしながら、ゲートに向かう。

タニアとリアが別れを惜しんでいるので、ミームに軽く挨拶をする。


「じゃあ、また5日後ぐらいに」

「えぇ。分かったわ」


リアとミームに見送られ、順番にゲートを潜ったのだった。


やっと大阪に帰れるわ~...

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