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魔法を信じるかい? ― マッドサイエンティストの異世界旅行  作者: 黒々猫
■■■■■■ 第2章 初めての異世界の討伐依頼はマッドな香り
18/55

■■■ Step015 出発前にマッドな状況になって、到着してからもマッドになる

やっと戦闘シーンです。

朝、朝日を感じる前に目が覚めた。

いつも通りではあるのだが、今日はいつもよりもかなりスムーズに目が覚めたのだ。


昨日は色々沢山の出来事があったので、かなり疲れを感じていたのだが、今は疲れは全く感じられない。

食べ物とかがすべて天然ものだからなのかもな。とちょっと思ったが、検証する気はない。


そっと他のベッドを見ると、静かな寝息が聞こえてくる。

まだ時間は早いと思うので、静かにベスト、スーツ、マントを羽織り、荷物を持って部屋をでた。


電龍の所に行って、あそこで身なりを整えよう。



宿を出て、裏に回って厩に行く。


そこでは電龍がのんびりと鎮座していた。


「電龍、簡易更衣室を出してくれ」

『承知しました』


側車の後ろのトランクが開き、そこから自動で簡易更衣室が出てきた。


「アニメの『こんな事があろうかと』と言う時があるかも、と思って冗談で作った機能だけど、ホントになるとはな...」


事前に用意していた着替えを持って、簡易更衣室に入る。

下着から全部替えよう。あと、軽く身体も拭いておくか。2日前からお風呂に入ってないからな...。


着替えが終わり、こっそり魔法で水を出して、顔を洗い、髭も剃る。

悪の科学者と言えど、身だしなみは大事だからな。



何気に東の方向を見たら、朝日が差し始めていた。

久しぶりのご来光だな。


思わず合掌してしまった。


そんな事をしていたら、通信が入ってきた。


『リョウ。どこにいるんだ?』


タニアか。


「今、厩の所にいるぞ」

『そうか。じゃあ私もそっちに行く』

「わかった」


タニアは本当に物覚えが良いな。

もう、ヘッドフォンの使い方を覚えてしまったな。

これだと、本当に電龍も乗りこなせてしまいそうだ。


と、思っていたらタニアがやってきた。

思った以上に早いな。


「何をしていたんだ?」


厚手の布地で作られた、ドレスのようなワンピース姿に、魔術師の杖を持ってタニアが現れた。


「あ~、ちょっと身だしなみを整えていたんだ」


どうしても、という時以外はタニアにはちゃんと伝えようと思っているので、嘘偽りなく答える。

ただ、下着を替えたとは言わないだけ。


「身だしなみ?」

「顔を洗ったり、髭を剃ったり、着替えたりだな」

「外で着替えるのか?」

「確かに外だが、そこは、ほら」


と、まだ展開したままだった簡易更衣室を示す。


タニアはそこに近づき、中をのぞいたりしていた。


「これはなんだ?」

「『簡易更衣室』だ」

「更衣室?」

「この中に入れば外から見られる事はないからな。この中で着替えるんだ」

「ほ~...そういうものがあるんだな」

「まさか、本当に使う時が来るとは思ってもいなかったけどな」

「中は結構広いな」

「着替えるのにある程度のスペースは必要だからな」

「私も使ってみたいが、着替えるものがないからな...リョウは着替えを持ってきていたのか?」

「『備えあれば患いなし』って言うからな。一応一通りは持ってきている」

「よし。次は着替えを持ってこよう」

「ま、覚えていたらな」


思わず「次があれば」と言いそうになったが、さすがにそれはダメだろう。

タニアは間違いなく私の友人なのだから、友人の願いぐらいは叶えてやりたい。


と、そろそろリアたちも起きたんじゃないかな?

と思ったら、通信が入ってきた。


「ちょっとリョウ!お姉様に変な事してないでしょうね!!」


言いたい事は良く分かるが、私たちはそんな仲じゃない。



宿を出る前にひと悶着があったものの、無事に村を出て洞窟に向かう。

今日もタニアが側車に乗り込み、リアとミームがお馬さんに揺られている。


「それにしても、お姉様とリョウって本当に仲良しなのね」


良く分からないがリアが怒っている。

シスコンなのだろうか?


「友なのだから仲がいいのは当たり前じゃないか」

「一昨日初めて会ったんですよね?」

「そうだぞ?」

「今日で3日目なんですよね?」

「そうなるな」

「どうしてそこまで仲が良いんですか?」

「おかしいか?」

「スバンとはそうではないですよね?」

「スバンは隣人であって友人ではないぞ?」

「あ~...そうですね。そうでした」


なんか拗ねちゃった感じだな。

こういう時はどうすれば良いんだ?

経験則としては下手な事を言うとダメというのは分かっているが、解決策はない。


「私はタニアとリアの方が仲良く見えるがな」


悩んでいたらミームがなかなか上手い事を言う。

なるほど、こういう言い方もあるんだな。と感心しつつ、ここは乗っからせてもらおう。


「そうだな。私から見てもそう思うな」

「そうか?しかし、姉妹だからな」


あ~...そう言えば、一番の敵はこの人でした。


「もう良いです。早く行きましょう」


と、リアがスピードを上げて先行した。

それを追ってミームがスピードを上げる。

その時、ミームがちょっと後ろを振り返り、軽くウィンクする。


どういう意味かは分からないが、きっと「大丈夫」という意味なんだろう。


私とタニアは顔を見合わせ、軽く笑い合ってから2人の後を追うべく、スピードを上げたのだった。


結局このまま、誰も口を開かずに目的地に着いてしまったのだが、リアの機嫌が治っているのだけは分かっていた。

リアがこっそりと後ろのタニアを見た時の顔が、笑顔だったからだ。



昨日と同じ場所にイスリーとマールスをつなぎ、電龍を置いた。

すぐに影百舌鳥を飛ばし、洞窟の様子と周辺を探る。


洞窟の入り口は、なぜかまたコボルドが増えており、合計25匹。

こりゃ、総数50を超えるかも知れないな...。


サイクロプスは姿が見えず、どこにいるのかさっぱり分からない。

山に帰ったとはちょっと思えず、きっと近くに居るんだろうけど、どこに居るんだろうな?


討伐開始の前に、簡単に作戦を...という事で集まったのだが、ちょっと考えがあったので提案...というかお願いしてみた。


「さて、今日はまずコボルドの討伐なんだが、洞窟入口のコボルドは私に任せてくれないか?」

「どういう事だ?」


タニアがビックリしたかのように、私を見る。

そりゃビックリするだろうけどな。

リアもミームもビックリしたようだ。


「1人で20匹ぐらいを相手にするって事?」

「魔法使いとは言え、それは無謀だぞ?」


ま、確かに魔法使いでも爆炎の魔法以外だと難しいかもな。

電撃の魔法は即効性があるが、威力が足りない場合もあるし。


だが、私は悪の科学者である。

平和な日本では実験しきれない危険な代物が、かなりの数ストックされているのだ。

そして、ここは合法的に、それらが使用できる。


先日の千里眼なんかは、今の地球では簡単に打ち上げられないからな。

そもそも、電龍を走らせることが出来ない。

困ったもんだ。


ともかく、私のとって楽しい実験場になるのだ。この機会を逃すわけにはいかない。


「心配してくれてありがとう。だが、大丈夫だ。ただちょっと広範囲に影響があるので、1人でやりたいだけだ」

「一帯が火の海になるような、派手な魔法をつかうのかい?」


それも良い方法だと思うんだよな。

そもそも、洞窟の周りが不衛生すぎる。一度マジで焼却して消毒した方がいいと思う。

が、今回は違う。


「いや、火の海にはならないけど、当たると怪我どころではないからな。お前たちを傷つける訳にはいかないから、頼むよ」

「...それは、洞窟の中では使えないんだな?」

「さすがタニア。その通りだ」


やっぱりタニアは色々と鋭いな。


「仕方ない。分かった」

「え?いいの?お姉様」


リアがホントにビックリしたようにタニアを見る。

その顔は「マジありえない!!」と言っているが、そこまでの事だろうか?


「リョウが何をするのかは全く分からないが、出まかせでない事は分かっている。任せても大丈夫だろう」

「お姉様がそうおっしゃるなら...」


リアが渋々という感じで了承する。

ミームは肩をすくめるだけだったが、こちらも了承してくれたようだ。



では、許可も出たので早速実験をしてみよう。


電龍のトランクを開け、中から刀を取り出す。

いわゆる「打ち刀」という日本刀だ。


当然と言っては何だが、これは正直違法品だ。


本来、日本刀は国家資格を持った刀鍛冶しか作れない。

つまり――これは完全にアウトだ。


私がこの日本刀を作ったのだが、当然鍛冶屋の免許は持っていない。

なので、届け出も出来ないまま作刀し、出来上がっても登録にも行けない状態なのだ。


もっとも、個人的な趣味で作った刀であり、日本鍛冶屋の伝統的手法は用いていない。

厳密には、日本刀と呼ぶ資格すらない代物だ。


ともかく、中二病的な勢いで作ってしまった、長さ2尺4寸(約72.7cm)、重さ820g、反り2.1cmの中反り。刃文は湾れを基調に互の目が交じり、切先は大切先。

その名も『星砕丸せいさいまる』をベルトに差し込む。


そして、銃も取り出す。

種類はアサルトライフル。セミオートもフルオートも可能な軍用小銃『飛燕』。

弾倉には30発の中間弾薬が入っており、予備で弾倉を4つ持つ。合計150発。50匹程度のコボルドには十分すぎる。


最後にもう一つの銃。『轟雷』

これはサイクロプス用に用意した切り札。

1発限りの使い捨て武器だが、威力は強力だ。

こちらは仙骨の上にホルスターが来るベルトを腰に巻き、そこに納める。


これで準備は整った。


「じゃあ、行ってくる。とりあえず、ここで待っていてくれ」

「本当に大丈夫なのか?」

「大丈夫だ。逆に近くに来られたらお前たちが危ないからな。必ずここで待っておくんだぞ」

「...分かった」


かなり心配そうにしているタニアに、懐から出したオペラグラスを投げて渡した。


「こっちが終わったら通信で呼ぶから、それまではそれで眺めていてくれ」


振り返らずにそう告げて、私は洞窟に向かって斜面をゆっくりと歩いて向かったのだ。



「さて、まずはセミオートで順番に倒していくか」


コボルドが『飛燕』の射程距離に入ったので、ゆっくり歩きながら『飛燕』を構える。いわゆる「肩付け」だ。

狙いを定めて一番手前にいるコボルドに照準を合わせ、引き金を引く。


ダァーン!

乾いた衝撃音が岩壁に反響し、次の瞬間、コボルドの頭部が爆ぜた。


「ギャウン!!」


それを見て、慌て始める周囲のコボルド。

しかし、まだ私には気が付いていないようだ。

ホントに頭悪いな。


続けて2発、3発と撃っていき、確実にコボルドを仕留めていく。


『戦場では常にクールであれ』


師匠の言葉が頭によぎる。

ここは戦場ではないが、生きるか死ぬかの瀬戸際である事は変わりがない。

最弱の妖魔であっても気を抜く事は、自らの死を招く事になるのだ。


10匹ほど倒した頃に、やっと私を確認したようだ。


手に木の棒や、どこで拾ったのか赤錆だらけの剣やナイフ、大半は素手だが、私に向かって突撃してきた。

その数、10匹ほど。


肩付けのままでは間に合わない距離だ。

狙い撃ちを諦め、フルオートに切り替えて腰だめに構え、反動を押さえつけるように引き金を引く。


ダダダダダダダダダダ!!

「「「「ギャワワワ!!」」」」


向かってくるコボルドが前から順番に倒れていく。


数匹がまだ生き残っているが、弾には当たっているのでその場から動けずにいた。

ちょうど弾倉が空になった。

反射的に新しい弾倉を叩き込み、ボルトを送る。


改めてセミオートに切り替え、1匹ずつとどめを刺す。


洞窟の前を見ると、4匹のコボルドがこっちを見ている。

おそらく、どうしようかと悩んでいるんだろうな。

悪いが、お前たちは全滅してもらわなきゃならないんだ。


私は...俺は、間違う事は許されないんだ。



洞窟の外にはもうコボルドはいないようだ。

それにしても、戦闘が始まって3分もしない内に終わったな。

普通に現代の武器は、この世界では強力すぎるな。

しかし、実験を止めるつもりは無い。私は『悪の科学者』なのだ。


「フリー、オン。みんな、洞窟前のコボルドは全部倒したようだから、来てくれるか?」

『終わったのか?』

「見てたんだろ?終わったよ。後から洞窟から出てくる奴もいるかも知れないが、見える限りにはコボルドは居ない」

『分かった。今からそっちに向かう』


すぐにタニアたちがやってきた。


「リョウ。それはなんなんだ?」


タニアの第一声がこれでだ。

後ろの2人もちょっと怖い...じゃないな。私を恐れている気配がする。


「これか?これはアサルトライフルというもので、見てたと思うが、銃口...この筒の先から弾丸...鉄の塊だな。それを撃ちだして敵を倒す武器だ」


軽く鼻から息を吐き、いつもの調子で武器の説明をする。

が、自分の声がかなり余所余所しいと感じられる。


「弓矢とかではないのね」


これはリア。

見たこともない武器だからな。比較するものはここでは弓矢しかないだろう。


「全く違うものだな」

「それがリョウの魔法なのか?」


これはミーム。

魔工のようなものだと思ったのだろうか。

そういえば、魔工の武器ってあるのかな?


「違う。これは『科学』によるものだ」

「『科学』?」


この世界では発展してこなかった『技術』。

いや、どこかで細々と進化している可能性はあるが、この文化レベルだと、まだ蒸気機関もないハズだな。


「誰がやっても同じになるやり方を探すことだ」

「という事は、アタシがその...アサルトライフル?というものを使っても、さっきのリョウみたいに出来るって事?」


いよいよ核心に触れてきたな。

もちろん、『悪の科学者』としてはキチンと説明はするさ。

それが私の矜持だ。

しかし、これは説明が難しいな。


「う~ん...『私と同じようにコボルドを倒すのは難しい』けど、『誰でもアサルトライフルの、この引き金を引けば、弾丸が出る』という事だ」

「戦い方はマネできないけど、それを使う分には誰でも簡単に出来るって事?」


その通り!


「そうだな」

「...物騒だな...」


タニアの一言が真髄を貫く。

そうだ。この世界にとって、『科学』は脅威となる。

理由は簡単。誰も『理解できない』ものだからだ。


「タニアの意見は正しい。だから、これは私しか使えない事にしておくよ」

「そうだな。その方が良い」


ちょっと派手にやりすぎた気がしない事もないが、いずれ通る道なはずだ。

逆に速めに理解してもらって良かったと思おう。


これで、タニアとの友誼が終わったとしても、タニアには良い経験をさせてもらったのだ。

この依頼は最後まで全うしようと心に誓った。

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