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魔法を信じるかい? ― マッドサイエンティストの異世界旅行  作者: 黒々猫
■■■■■■ 第2章 初めての異世界の討伐依頼はマッドな香り
15/55

■■■ Step012 この世界の神々はどこの世界でもマッドな戦争するのね

トモニア村にやっと到着。

前日の下見で洞窟まで移動する間にタニアとゆっくりお話をする回ですね。

結局、小休止が小休止でなくなり、その分到着時間がずれ込む事になった。さらに、昼食を野外で取った為、出発してから約半日ぐらいで現地に到着。

現在14時16分。どうやらここがトモニア村らしい。


エルセリアからの北北西に移動。距離にして約32km。

これからは千里眼で事前に確認できるので、色々と情報収集が出来るようになる事だしな。


吹田から京都駅前までがだいたい32kmぐらい。

昔ロードで行った事があるが、帰りはケツが死んだ。


そんな事はどうでも良いか。


トモニア村は広さで見れば、東西南北それぞれ約1.5kmずつ。

家は200戸ほどで、人は1000人前後。

千里眼の映像を電龍が解析した結果だ。


さて、リアとミームが村長の家に討伐依頼の事前報告に行った。

それを待っている間、私とタニアはトモニアの中を通ってゆっくり洞窟に向かう事になった。

通信できるので、合流も問題ないしな。


移動で疲れているので、コボルド討伐は明日という事になっている。

が、その前に洞窟の様子を見に行こうという話になったのだ。


ちなみに、千里眼でこの惑星を確認した所、ほぼ地球と同じサイズである事が判明。

衛星...月の事だが1つあり、これも大きさや距離といったものまでほぼ一緒である。

さらには、エルセリアは北緯34度45分で、ほぼ大阪の緯度と同じだったのはさすがに笑ってしまった。


トモニアは山の麓にあり、山の方にも少しだが家が点在している。

村の周りは簡単な生垣や柵、石垣で囲われている。


この村の特徴は、周りには広大な畑が広がっている事だ。

まだまだ収穫時期ではないようで、青い麦が風に揺れている。

ただ、絶賛成長中という事ではない感じで、麦の穂は見た目にも大きく育っているようだ。


「なかなか...のどかな所だな」


エルセリアの道路は石畳になっていたが、トモニアの道は踏み固められた土だ。

私とタニアが歩いている道は村の大通りのようで、人々の往来がそこそこにある。


そうそう、電龍は少しはなれた場所から自動でついてくるようにしてある。こうしておけば村人の視線は私たちではなく、すべて電龍に向くからだ。

うむ、エルセリアでもこうしておけば良かったな。


日本では多少注目を浴びても「あからさま」な視線は少ないので気にならないのだが、こっちは「あからさま」というか、パレード状態になるからな。


「そうだ。ここは背後にベールナル山脈があって水も豊富だ。そういう事もあって、大規模な農園が広がっている。我が国の穀倉地帯の1つだ」


さっきの私の独り言をタニアが拾ってくれて、説明をしてくれる。

この辺りは、さすが『タニア先生』という所だろう。


「なるほどね。だったら、コボルドが近くに居るとなるとかなり心配だな」

「しかも今回はサイクロプスまで出てきたからな。かなり大変だと思うぞ。で、洞窟はあの山脈の麓だ。村の外れから北へ少し...森の入口の手前だな」


と、視線で山脈を示す。


「ふ~ん...ここに来る道中でも見ていたが、なかなかに険しい山脈だな」


確かになかなか険しい山脈だと思う。

自分の世界では、このような大きな山脈を見る事はない。大阪で住んでいると生駒山地がせいぜいだ。

実はここに来る途中に千里眼で計測したのだが、手前の方はともかく、2000mから3000m級の山々が奥に連なっている。かなり壮大な山脈だった。


「普通の人はほとんど住んでないらしいが、山の中には山賊や犯罪者がゴロゴロしているぞ」

「そうなのか?だとしたら、この村なんかは恰好の餌食じゃないのか?」


距離的にはお馬さんでひとっ走りっていう距離だぞ?


「ひと昔前はそうだったらしい。が、今はこの村にも騎士が常駐していてな。今ではほとんど被害はない。その代わりに山を入ったりすると、例え騎士でも山賊の餌食になるそうだ」

「それはまた大変だな...って、ちょっと待て。だったら、今回の討伐依頼のコボルドも騎士が退治すれば問題ないんじゃないか?」

「前にも言ったが、騎士はこの村の防衛が目的だ。コボルドがここまで来たのなら討伐するだろうが、わざわざ洞窟にまで出向いての討伐はしない」

「そんなもんかね...」

「そんなもんだ」


なるほど。お役所はどこの世界でもお役所なのだと妙に納得してしまった。


「ちなみに、その洞窟まではここからどれぐらいで行けるんだ?」

「ここからだと、馬に乗ってすぐだな。歩いてもそれほど時間はかからないぞ」


その「すぐ」というのが良く分からない。タニアと共通の単位が必要なのだが...共通の単位...あ...。


「エルセリアの端から端まで歩く時間と比べたらどんな感じだ?」

「距離的にもそれぐらいだな」

「なるほど」


だいたい洞窟までは2.5kmって所だな。

と、そこまで話をした時点で村の出口に到着。その後すぐにリアから通信があり、そこでリア達を待つ事になった。


リアたちが合流するまでの間、タニア先生から色々と情報を仕入れておこう。


「そういや、この辺りを治めている領主はどこに住んでいるんだ?」

「あぁ、領主はエルセリアに城を構えているぞ」

「エルセリアだったのか。そういや、山の方に大きな砦みたいなのがあったな」


軍の施設かと思っていたが、領主の城だったようだ。


「あれはエルセリアがクラスタンプ領だった時の砦だ」

「昔って、どれぐらい昔?」

「50年前ぐらいかな?」

「なるほど」


クラスタンプの軍演習の話があったから、エルセリアの奪還とかあるのかも知れないな。

一応脳内にメモだけしておこう。


「あと、リアが修道者みたいだけど、この世界の神ってどういうのがいるんだ?」


地球のファンタジーだと、回復魔法などは神聖魔法なので、聖職者しか行使できなかったりするからな。

そういうのはちゃんと知っておかなければならないだろう。


「そうか、リョウの世界とは違うだろうからな」

「ここの常識を知っておかないとだからな」

「わかった。じゃあ、まずは【エルヴァータル神話】を話してやろう」


と、タニアはこの世界の神々の歴史を語ってくれた。


-------------------------------------------------------------------------------


【エルヴァータル神話】


最初、この世界は何も変化もなく、ただ真っ平な大地があるだけであった。


どれだけの時間が過ぎただろうか。幾年、幾十年、幾百年、幾万年...。

何も変化のない世界に、大きな変化が訪れる。大地に星が落ちてきた。

そして、その落ちた星には神々が乗っていた。


神々は何もない大地に変化をもたらす。

大地を裂き、海と大陸に分ける。

山を成し、川を流す。

空を刷き、雲を浮かべる。

雨を呼び、大地を潤す。


そして、神々は乗ってきた星を材料に、ありとあらゆる生物を作り出す。


植物、魚、昆虫、動物、鳥、エルフ、ドワーフ、獣人、そして人間。

また、自分たちを補佐する者たちとして、眷属となる神々と精霊等を作り出した。


地上をそれらの生物に明け渡し、神々は天空に神々の楽園を築いた。神々が住まう場所が「天上世界エルヴァータル」と呼ばれた。

地上の生きとし生けるものはエルヴァータルから降りてくる神々と交流し栄える。


そのうち、神々は世界の色々なものを管理するようになった。


ある神は植物とエルフの神となる。その名は「フォブネ」

ある神は鍛冶と戦の神となる。その名は「ベルテクト」

ある神は酒の神となる。その名は「ナコルドゥ」

ある神は魔法の理を司る事になる。その名は「ワクター」

ある神は大地とドワーフの神となる。その名は「ケブリード」

ある神は大海を管理する神となる。その名は「パステラ」

ある神は溢れた生物を調整する為に死を司る神となる。その名は「アウセルグ」


そして、ある神は神々を統べる神となる。その名は太陽神「マルザード」


神々が管理する世界は永遠に続くと思われたのだが、神々も完全な存在ではなかった。


きっかけとなったのは「イスフォーン」・・・愛と自由の女神である。

彼女は最高神マルザードに恋をして、そして愛するようになった。

マルザードには妻となる月の女神「レイアリン」が居たのだが、マルザードはイスフォーンと愛を交わしたのだ。当然レイアリンが激怒した。

イスフォーンはレイアリンの怒りによりエルヴァータルより追放され、闇世界「キューリル」に落とされた。

しかし、イスフォーンはこれを不服としてたった1人で神々に反旗を翻した。愛と自由を求めて。

当時すでに、多くの神々がキューリルに追放されていた。そして、イスフォーンの反旗に追放された神々が同調し一大勢力となる。

イスフォーンを旗印にし、力あるかつての神が集う。

かつての契約の神「イフォス」

かつての知識の神「ロデトーリ」

かつての弓の女神「レブレット」

かつての商売の神「ルイアンカ」

そして、キューリル軍の総司令である、かつての精霊の神「ルグ」


彼らは最強種のドラゴンを新たに生み出し、また魔族や妖魔、モンスターと言われる者たちを生み出した。

天上世界エルヴァータルに攻め入る。

当然、エルヴァータルの神々も最強種ドラゴンを生み出し、これに対抗。戦いは拡大した。


「神滅戦争」と呼ばれる神々の戦争はこうして始まり、神々は残らず消滅した。


神々の身体は消滅したが、精神は昇華しエルヴァータルとキューリルのそれぞれに戻っていき、神々の言葉が伝承として地上に語り継がれ、やがてそれぞれの神を崇める宗教となる。


この世界に神は実在するのだ。

そして、受肉すれば神は甦る。


たとえ、闇世界キューリルの神であっても・・・。



くれぐれも忘れるなかれ。

神は実在するのだ。


-------------------------------------------------------------------------------


タニアが朗々とした口調で神話を語ってくれた。

ちなみに、この神話は記録しなければと思って、こっそり電龍に録音をさせていたのだが、正解だな。

タニアは歌手の才能もあるのかも知れない。


と、それは置いておいて、一番気になる事をタニアに聞いてみた。


「落ちてきた星に神々が乗っていたって事か?」

「あくまでも神話の話だし、本当かどうかはそれこそ『神のみぞ知る』だな」

「あ、その諺はこっちにもあるんだ」


なるほどな。昔の事は分からないものな。

地球のあちこちの神話も、科学的には否定できるが、だからと言って神の存在を否定できる訳ではなし。


ただ、個人的には同じ諺が存在する事に興味があるな。


「ん?リョウの世界にもあるのか?」

「あるんだよ。まぁ、神に関する事はどちらにも似たような諺があるのかもな」

「可能性は高いな。しかし、実際にそういう話を聞くと面白いな」

「確かにな。今度、『ことわざ辞典』があれば読ませてくれないか?」

「『ことわざ辞典』?そんなものは無いぞ?」

「そうなのか?」


まさかの返答。

じゃあ、そういう諺はどうやって覚えるんだろうか?

あ、そもそもの話、本が高価だからなのかも知れないな。


「あ~...印刷技術がそれほど発展していないからかな...」


確か、中世ヨーロッパでも15世紀ぐらいから活版印刷が発展したような気がする。


「印刷?なんだそれは?私は師匠の持っている本を自分で写したりしていたぞ?」

「おっと...まだ印刷は無い時代だったか...」

「リョウ...その印刷とやら、詳しく教えてもらおうか?」


しまった...眠れる獅子を起こしてしまったのかも知れない...。


「...この討伐依頼が無事に終わったらね...」

「約束だぞ」


タニアにしっかりと約束させられた。また約束が増えたな。

それから、この世界には「ゆびきりげんまん」ないそうだ。さすがに「針千本」は勘弁して欲しい。


そして20分後にリアとミームが合流。そのまま村を出て洞窟に向かったのだった。



4人で馬とバイクでゆっくり向かう。

急いでも仕方ないし、今日は洞窟を外から見てみるだけだ。あと、道中に危険なものは無いか、確認するのも目的だ。


リアとミームは先日もここに来ていたので、そういう事をしなくても良いのだろうが、タニアはかなり久しぶりだし、私にしては完全に初見だ。

もっとも、私の場合は千里眼で確認は出来るのだが、空が曇ると使えないし、そもそも自分の目で見て確認をする主義なのだ。


「お姉様。サイクロプスは洞窟近くの森の中にいるそうです」


リアが村長の家で聞いたという話を始めた。

まぁ、今回はサイクロプスの依頼もあったからな。当然、そういう話も聞いてくるだろう。


「森の中?」

「はい。昨日ですが村の狩人が森の中でサイクロプスを見かけたとか...」


狩人か。まぁ、魚は近くの川とかで簡単に捕れるだろうが、獣の肉は狩らないとダメなんだろうな。

村の中を歩いていた時にも牛とかがいたので、そういう肉もあるだろうが、それだときっと村全体としては足らないのだろう。


いや、違うか。


おそらく、今回のように村の近辺の獣の動きを管理する為の、ある種のシステムとして狩人がいるのだろう。

あとは単純に牛肉以外のタンパク質の獲得とかかな。


どちらにしても、そこに需要があるから成立しているという事だろう。


「待ち伏せをしていたら、偶然獲物を追いかけていたサイクロプスが目の前を通り過ぎたんだそうです。大きさは2階建ての家ぐらいだそうで、まぁ標準的な大きさじゃないかと...」


2階建ての家か...約5mぐらいの大きさかな?結構大きいな。


「ふむ...で、その追いかけていた獲物って?」

「コボルドだったようです」


コボルド、どんだけ居るんだよ...。


「森の中にもコボルドがいたのか?それとも、洞窟のコボルドなのか...」

「洞窟からは離れているので、おそらく森の中のコボルドではないかという話でした」

「それはまた面倒な話になりそうだな...しかし、その狩人はよく無事だったな」

「はい。サイクロプスはそのコボルドしか見ていなかったようですね。ただ、通り過ぎてすぐコボルドが捕まって...さすがに生きた心地がしなかったそうですよ」


言葉を濁したが、どうやら生きたまま喰われたようだな。


「それはそうだろう」

「しかし、森の中かぁ...そうだとすると『千里眼』からは見つけにくいかもな...」


と、私は思わず独り言ちる。

それを聞いたタニアがすぐに反応した。


「あぁ...さっきの上から見れる奴だな。そうか...木々に紛れてしまうからだな」

「そうだ。実は今も『千里眼』でサイクロプスを探しているのだが、なかなか見つからなくてな。ひょっとしたら森の中かと思っていたのだが...やはりそうなのか...」


想定はしていたが、なかなか骨が折れそうだな。

しかし、森の縁を重点的に監視しておけば、そのうちに見つかりそうな気もするな。

後で千里眼に指示を出しておこう。


「もう探していたのね」


ミームが驚いた顔でこっちを見てきた。

まぁ、こういうのは機械任せに出来るので、それほどの手間ではないからな。


「見つけておけば、サイクロプスが村に来るかどうかも分かるからな。用心するに越したことはないさ」

「確かにな」

「では、とりあえず洞窟の下見に行こうか」


どうやら、洞窟の近くまで来たようだ。

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