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魔法を信じるかい? ― マッドサイエンティストの異世界旅行  作者: 黒々猫
■■■■■■ 第1章 異世界は光の向こう側
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■■■ Step010 マッドなバイクは異世界でも絶好調

いよいよ冒険に出ます。

コボルド討伐という初心者依頼と、サイクロプス討伐という上級者依頼をどうやって対応するんでしょうかね。


第1章を順次投下しています。

電龍を押して厩に行くとミームとリアが既に馬に乗っていた。見る限りでは出かける準備は出来ているようだ。

タニアはミームの乗っている馬の鼻を撫でていたのだが、近づいてきた私に気が付いた。


「おや?昨日見た時と形が違うのだが?」


鋭い。

と言いたいが、側車が付いていればすぐに分かるか。


「あぁ、タニアが乗りたいと言ったので、側車を付けたんだ」

「側車?それは...ひょっとして横にくっついている、中に椅子が入っている車輪のついたものの事か?」


詳しい説明ありがとう。


「あぁ、それの事だ」

「いつ、そんな物を取り付けた?」


あぁ~...ちょっとまずかったかな。

確かに側車は直ぐには取り付けられない。実際に昨晩の遠隔操作でも30分はかかっているのだ。


「え?...あぁ~っと...厩に来る前に、向こうでちょいと細工してな」


まさか昨晩のうちに...と正直に説明するのも面倒な気がしたのでとっさに誤魔化す。


それを聞いたタニアは一瞬だけ目を細めたが、何も言わなかった。

タニアの顔を見ると私が誤魔化した事には気が付いたようだが、リアもタニアもいるのでスルーしてくれたようだ。


「で...それって...何?」


タニアとの会話が終わったのを見計らって、当然のようにリアがバイクを見て驚いている。

ミームは興味津々の表情で見ているが、それ以上の反応はない。

それ以上に馬がこっちを凝視しているんですけど?


「あぁ、これはリョウの乗り物で『バイク』というものらしい」


タニアが自信満々で説明をしてくれる。もっとも、それ以上の説明は出来ないだろうが。


「乗り物?馬の代わりって事?だからイスリーを私に預けたんだね」

「あぁ!!なんかズルい!!」

「ふふっ...昨日のうちに予約しておいたのだ」


ミームとリアの反応を見て、タニアが先ほどよりも大きな胸を張って嬉しそうに宣言する。


「しかし、これだけ大きな魔工は初めて見たな」

「そうよね~。お姉様の魔工は基本的に手のひらに乗るサイズですものね」


ミームとリアは驚きが止まらないようだ。


「私は出来るだけ小さく高性能にしようとするからな」


なるほど。タニアは本当に技術者なんだな。


「そういう意味では、このバイクも小さくて高性能なんだがな...」

「確かに!人間を2人も載せて動くのなら、すごいわよね!?」

「人間を乗せて動く魔工はそもそも無いものな」

「私も作った事がないわね」


この世界では、こういう乗り物は無いって事だな。

そもそも、車輪の駆動系がとても大掛かりになるだろうから、おそらく現状の技術では無理なのだろう。


という事で、移動はお馬さん一択になる訳だ。


「ところで、私の乗る場所はこの『側車』という場所のようだが、どうやって乗れば良いのだ?こう...跨げばよいのか?」


と、ローブをはだけ素足を出して無理やり乗り込もうとする。あぁ!太ももが...って、アカンわ!


「いやいや!ちょっと待て!!ここをこうすると乗りやすくなるから...」


慌てて側車に乗り込むためのドアを開いてやる。


「なるほど!小さくともちゃんと扉が付いているのだな。これは失礼した」


そう言いながら、今度は行儀よくシートに収まる。

ちなみに側車は乗りやすいものを選んできた。座席も割と大きなものなので、乗り心地は全く問題ないはずだ。


一応シートベルトもあるので、身体に触らないように気を付けながらセットしてあげた。

で、付けながら説明し、外し方も教える。

タニアは理解が早くて本当に助かるよ。


座席に収まったタニアは座り心地を確かめるようにシートのあちこちを触っている。

その様子は微笑ましいのだが、それを見て気が付いたのだが、タニアの荷物はどれだ?


「ところでタニアの荷物はどれなんだ?」

「あぁ、すまない。そこの柱の所に置いてあるのだが...ちょっと待ってくれ...あれ?...さっきは、どうやって開けたのだ?」


と言ってせっかく乗ったのに降りようとする。

私はちょっと笑ってタニアを押しとどめて、その荷物を取る。それほど重くはない荷物だ。


「これだな。タニアの座っている側車の後ろにトランク...荷物台があるからそこに入れておくぞ」

「すまないな」

「まぁ、これぐらいは気にするな」


どうせトランクの開け閉めも教えていないから、私がする事になるのだ。

タニアにはこれから色んな事を覚えていってもらえば良いだろう。どうせ、私の世界にも行きたいと言うのが目に見えているのだ。


「なんか...お姉様とリョウって...仲が良すぎる?」


と、タニアと和気あいあいとしているのを見ていたリアが、ボソっと独り言のように言う。


「そうなのか?」


それを受けて、タニアが私に振り返りつつ首をかしげながら私に聞いてくる。

昨日以降、本日初めての可愛い笑顔だ。


「...私が知るわけがなかろう...」


ちょっとだけ...いや、かなりドキドキしたが...顔に出なかったよな?

さぁ、心躍る冒険の始まりだ。



エルセリアの街を出るまでは、トロット...速歩(はやあし)以上の速度では走れないとの事なので、それに合わせてバイクを走らせる。だいたい13km/hってところだな。

道はそこそこに広いのだが、電龍は側車を付けているので横幅が馬よりも広い。

なので、前にリアとミームが馬を並べて先に行き、そのあとを追いかけて私が続くという流れになった。


いや、街中の移動には問題はない。が、衆目を集める事凄まじいな。何せこの世界で初めてのバイクなのだ。しかも馬が引いてないのに勝手に進んでいく。


最初は前の馬に引かれていると思うのだろうが、馬との間には何もない。

なので、人々が驚き、驚きが人を呼び、さらに驚きが増えていくという状況だ。


しかし、この街にはかなりの人が住んでいるんだな...朝の早い時間だと思ったのだが、この世界ではそうでもないのだろうか。

田舎だと日の出と共に活動を始める人たちがいっぱいいるからな...などと色々考えていないと、この完全な見世物状態に耐えられそうにないな。


っていうか、3人ともよくこの状況で冷静でいられるな...と、隣のタニアを見ると幾分顔が赤い...さすがにタニアも恥ずかしいようだな。

しかし、嬉しそうに乗った手前、降りる事が出来ない。それ以前に、ドアの開け方をまだ知らないので、そこでローブを翻して降りるというのは女性としては無理だろう。

前の2人は...顔が見えないが、おそらく楽しんでいるんだろうな。雰囲気でなんとなくそう感じる。注目を集めているのはリアたちではないからな。


「『フリー、オン』おい、リアとミーム。もう少し早く行けないのか?さすがにこっちはこの状況はしんどいんだが?」

「リョウ、街中では駆け足は出来ないって言っているだろ?」


ミームが楽しそうな雰囲気で通信を返してきた。ふふっという笑いも聞こえる。これはリアだろう。

と、いう事は2人はわざとちょっとゆっくり目に走っているようだ。

ちょっとムカつく!!

と、私が思った瞬間、極低温の音声が聞こえてきた。


「リア、ちょっとだけでも早くして欲しいって言っているのだが?」


隣を見ると、何か紫色のオーラが見えるような...気がする。

と、その瞬間リアが弾かれたように反応した。


「お姉様!わ...わかりました!!」


目に見えてリアの馬が早くなる。慌ててミームも速度を上げる。続いて私もアクセルをちょっと回す。うむ、15km/hになった。

これでちょっとでも早く街から出れる...。少しほっとして隣のタニアを見ると、フードを目深にかぶりなおしたのか、全く表情が見えなくなった。

紫色のオーラももう見えない。


取り巻きの人々は少しスピードを上げた私たちを、相変わらず不思議そうに見ている。

まぁ、このまま出入りをしているうちに、見世物になる事は無くなるだろう。そう願おう。


それにしてもさっきのタニアは怖かった...。



街を出るには特に何もないとの事だが、今回は私のバイクの事を色々と聞かれたのだ。

衛兵には新しく魔法で動くこの乗り物の色んな実験を郊外でするのだと言っておいた。


こうなると「どうやって、このバイクで入ってきたのか?」が疑問になると思ったのだが、リアとミームはそんな事は何も気づいていないようだ。

どうやら、先ほどのタニアの怒りに触れて、まだ緊張をしているらしい。


今は門から出て、今はそれなりの駆け足で走っている。時速にして24km/h。お馬さんはスキップをしているような感じかな。

そのスピードで5分も走ると、馬のスピードを緩めてきたのでこちらも合わせる。

ついでに道幅もそれなりに広いので、2頭の馬の横にバイクを進める。おっと、リアもミームもまだ顔色があまりよろしくないようだな。


「お姉様、先ほどはごめんなさい...」


まだ『フリー、オン』の状態なので、小声でもリアの声は聞こえてくる。


「よい。私も少し大人気なかったと思っている」


と言いつつもまだ不機嫌そうな雰囲気だな。私もそうだが、まさかあのような「見世物」状態になるとは思っていなかったんだろうから仕方ない。

さて、このままの雰囲気では色々と差し支えがあるだろうから、話題を変えようか。


「それはそうと、目的地にはどれぐらいで到着予定なんだ?」

「ん?...あぁ、昨日リョウから渡してもらったこの時計で考えると...あと6時間ぐらいだろうな」


ほう。もう時計の見方を覚えたのか?


「お姉様、何ですか?そのトケーって?」

「時間が分かる道具だな。今は7時2分。で到着は13時ぐらいと言ったところかな」


おぉ~...昨日教えた通りに1日24時間で考えているようだな。いや、なかなかに優秀だね。


「6時間ってかぁ...結構かかるんだな」

「今回は馬で移動しているのでもっと早く行く事もできる。が、ここからトモニアまでだと急いでも仕方無いのでな」


現代日本では1分1秒でも早い方が良いのだが、この世界では基本的に田舎時間で動いているのだろうな。良い事だ。


「ねぇねぇ、そのバイク?って、どれぐらいの速さがでるの?」


相変わらずリアは話を急に変えてくるな。

さて、電龍の最高時速が190km/hって言っても全く通じないだろうな。こういう時に共通の基準が無いというのは表現に困るな。


「普通に馬よりも速いぞ」


と、一番わかりやすい事を言った。

馬の最高時速が88km/h...だったかな?まぁ、100km/hとかであっても全く問題ない。

それを聞いたタニアが、隣から意味ありげな顔でこちらを見て、ちょっとだけ挑戦的に話に加わってきた。


「私のイスリーは名馬とまではいかないが、それでも街では一番の速さなのだが?」


そう言えば、厩のおじいさん...キナーフさんだっけか?馬に運動をさせて欲しいという事を言っていたな。

それじゃあ、ちょっとリアやミームを煽ってみようか。


「さっきも言ったように、残念ながら馬なんて全く問題ないぐらいに速いぞ」

「ほう、その言い方。ひっかかるわね」


はい。ミームがひっかかりました。


「じゃあ、ちょっとだけ競争してみない?」


そしてリアが乗ってきました。


「そうだな。私もこのバイク...『電龍』だったか?どれぐらい速いのか見てみたな」


これで満場一致となりました。


「いいわね。この先に目印になる大きな双子の大木があるの。そこまででどう?」


リアが目標を示してきた。なるほど、確かに大きな木だ。双子と言ったが、ここからでは1つにしか見えない。


「あぁ、あの見えている奴だな。構わないぞ」


レーダーで確認すると距離にして約1.5km。


「そっちは2人乗りだけど、言い訳にしないでよね」

「全く問題ない」

「じゃあ、いくよ!...それ!!」


我々の世界では「よ~いドン!」だが、そういうのは無いようだな。

思わずタイミングが取れなかったのと、リアの合図が可愛く感じられたのでちょっと笑ってしまった。で、完全に出遅れてしまった。


「おい!笑っている場合ではないぞ?」


どんどん引き離される事に焦りを感じたタニアが私を現実に引き戻してくれた。


「あぁ、問題ないよ。それにしてもあの馬たちはすごいね。思った以上に速い」

「感想は良いから!!」

「はいはい。可愛いお姫様のおっしゃる通りに致します」

「かわっ!?...きゃあぁぁぁ!!!」


タニアが顔を赤くして慌てている最中にアクセルを回して急激に加速を開始する。

そのため、突然シートに体が押し付けられた事と予想外の加速で女の子らしい悲鳴を上げる。


それを聞きながら、前を走る2頭の馬を追いかける。すでにその差は70mぐらいだろうか。

ゴール地点はそれほど遠い訳ではないので急がなければなるまい。


隣の側車でまだ悲鳴を上げ続けているタニアを横目に、スピードを上げるバイクを細かく操作する。

ゴールまでの道はあるが舗装された道路ではない。凸凹なので車輪で走るバイクには不利だが、そこは自分のバイクの性能と自分の操縦技術で乗り切るしかない。


レーダーで出来るだけ凸凹の少ない場所を選んでバイクを走らせる。

数秒で2頭の馬を抜き去った。しかし、タニアは「きゃああぁぁああぁ!!」という可愛らしい悲鳴をあげ、自分の身体を抱きしめている。

馬を抜き去った事は気が付いてないだろうなぁ...。

そして、勢いそのままにゴールしたのだった。



いやぁ、自分で作ったマシンながら驚きの速さだね。

そもそも日本の道路では走らせることが出来ない代物。実験室では性能実験も限られるのだ。


さて、隣の側車を見るとタニアが深呼吸を繰り返している。走行中ずっと悲鳴を上げていたので一時的に酸欠になったのだろう。


「リョ...リョウ!!...これ...凄い!!!」


目をとてもキラキラさせて、上気した顔でこちらを見つめてくる。

うむ、きっと時々こういう顔をした時にスバンが落ちたんだろうな。いや、元々が美人だから、落ちたのは仕方がないのだろう。


しかしまぁ、このバイクの性能を目にすればタニアに限らず、ほとんどの人がこういう反応になるだろうな。

この世界、馬よりも早い乗り物はない。その馬よりもバイクの方が圧倒的に早いのだ。


「まぁ、そうだろうね。私の世界ではこれよりも性能が低いものが一般化している。色んな種類のバイクがあって速さは色々になるけど、基本的には馬よりも早いかな」

「そうなのか...リョウの世界は私たちよりも高度な文明を築いているのだな」

「高度な文明か...まぁ、どれぐらい高度かは実際に私の世界に来てからのお楽しみにしておこうか」


タニアとの会話に一区切りついた所でリアたちが追い付いてきた。


「ちょっと!速すぎ!!」

「とんでもない乗り物だな」


と、勝負に負けて悔しそうにしながら文句を言う。


「だから、馬よりも速いと言ったぞ?」

「聞いたけど、これほどとは思わなかったもん」


確かにそうだろうな、私以外は。だから


「まぁ、『百聞は一見に如かず』って言うからな」


それを実践してみたのだ。


「なにそれ?」


「『百回聞いても分からない事が一回見る事で理解できてしまう事』を言うんだ」

「見りゃ分かる!!っていう事ね」

「...まぁ、そうだな」


リアの一言でオチが付いたようだ。

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