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第12話:クズ相棒を紹介します。

【ストーリー概要】

おとなはずるい!

みんなずるい!


しょっけんらんよーとか、ふせーけーりとか、ふりんとか、

色んな悪いことをするんでしょ?


え”っ……! 氷ちゃんはしていないのっ……!?

なんでっ……! なんでっ……!

氷ちゃんはダメなオジサンなんでしょ……!?


この世の不正って、何なのか分からなくなっちゃうっ……!

「……先ほどは、取り乱してしまい申し訳なかった。自分の家庭のこととなると、どうしても動揺してしまってね」

「い、いえ……致し方ないかと……」


 町長が頭を下げて、オレ達に謝罪している。

 先ほどまでの取り乱しが嘘たっだように、落ち着いた風に話している。


「カレーしかもてなすものは無いけど、ゆっくりしていってくれ。おかわりもあるから」

「あ、はい。ありがとうございます」


 そう言って、オレ達は、目の前に置かれたカレーを口にする。

 ほんのりスパイシーな中辛で、レトルトとは思えないようなコク深い美味しさがする。


「ねえ、今日は氷ちゃん何しに来たの? しょっけんらんよーで、からしゅっちょーという名のサボりをおーかしているの?」


 うん、ダメだよ聖ちゃん。いくら市役所裏に住んでいるからといっても、大人の言葉で的確にオレを非難するのは止めるんだ。


「ははっ……お前の悪行は聖ちゃんにすら筒抜けって事だな」


 二熊がオレの頭にチョップを入れて言う。

 だがしかし――


「今日はサボりじゃなくて、仕事できたんだよ聖ちゃん」


 聖ちゃんの頭を撫でながら言う。


「えっ! 氷ちゃんって仕事するの!?」


 聖ちゃんがピュアな心でオレにそう言う。


「げへへ……氷ちゃんって、ガチクズで仕事しないんでしょ!?」


 二熊が気持ち悪い顔で、聖ちゃんの後ろから呟いている。

 よし、お前は後で市役所裏に来い。


「……相変わらず、君の仕事に関する評判は著しく低いな」


 町長がオレの肩を叩いて言う。


「氷理がガチクズなのは事実だから仕方ないよ。ねー聖ちゃん!」

「うん! 氷ちゃんはがちくず~!」

「あはは~聖ちゃん可愛い♪ 二熊は苦しんでから四回死ね!」

「……聖は言っても良いのかい?」


 町長がオレの横から指摘してくるが、天使は何を言っても許されるという法律があるから、その質問自体が不問なのだ。


「二熊、聖ちゃん、残念だったな! 今日は町長直々に仕事の話があって、わざわざ見参したのだ!」


 そう言って、例の短距離選手のようなポーズを取ってキメ顔をする。


「はぁ? 何でお前が町長から仕事をもらっているんだよ」


 二熊が怪訝な顔でオレを見ている。


「……まあ、オレが説明しても良いけど、多分信頼が滅しているだろうから――町長、代わりに説明をお願いします」


 色々と弁明が面倒な気がするので、オレは町長にバトンを渡すことにした。


「そうだね……じゃあ、代わりに」


 町長がそう言うと、自分の机の上にある数枚の資料を手に取り、それを俺達三人へと手渡してきた。


「見てもらいながら説明しようと思う。今渡したのは、ふるさと帰還支援制度の改訂版の資料だ」

「改訂版?」

「そうだ。帰還支援を施行してからまもなく一年を迎えるにあたり、帰還した人がより積極的に地元の活動に参加できるようにという仕組みを追加したものだ」

「へぇ……いつの間にそんな法律出来ていたんだ」

「実際に適応されるのは再来月からだがな」

「再来月……?」

「改訂版を出したと同時に、さあ更に色々出来ますよと突然言われても、言われた側はすぐには動けないだろう」

「まあ……どう動こうとか、予算とか、内容理解とか、色々とネックなところはありそうですね」

「だろう? だから必要な人には予め通達をした上で、活動の準備がスムーズに行えるような体制を取っているというわけだ」


 町長は言うが――


「しかし、いくら早めにとはいえ、二ヶ月前でも普通に遅い気がしますけど……」

「ま、まあ……国的には一応頑張った方なんじゃないかな? 多分……」

「頑張った……ねえ……」


 二熊が呆れたような顔で言う。


「まあまあ……施行されたからすぐに始めなくてはいけないというものでもないし、うちの町にしても、最初の一年は試験的に活動しようと思っている」

「そうなんですか」

「ああ。ルール導入したての状況なんて、どこもそんなもんさ」


 町長がそう答える。


「それで、その新ルールのお試し要員として、暇そうな氷理が採用された訳か」

「氷ちゃん、店長なのに暇そうだもんねー」

「……などと供述しているようですが、実際のところ、オレの潜在的才能を見いだして選定したんですよね?」


 そうお互いに言い交わす。


「……まあ、実のところ、半分ずつ正解と言ったところかな」


 町長はオレ達に応える。


「はぁ……どういうことでしょう?」

「氷理のクズっぷりが半分とかあり得ねえんだけど」

「お前はちょっと黙ってろ」


 オレの潜在的才脳が半分という方が、むしろ非常に遺憾だ。


「氷理君は、この町を出てから数年間、東京で様々な仕事を職場で担当しているよね」

「ま、まあ……担当をしていたというか、むしろ人が居ないから無理矢理やらされていたというか……」


 ブラック企業独特の、仕事が辛い→人が辞める→残った人にしわ寄せ→以下ループというデスマーチが、たまたまオレに降りかかってきただけなんだよね。


「まあ、大変な思いをしていた件については、耳のタコが潰れるくらいお酒の席で聞かされたからね。同情しているよ」


 町長が苦笑いをしながらオレを見て言う。


「なんだよ氷理。そんな苦労話、俺には話さないとか水くせえじゃねえか」


 二熊が俺の肩を叩きながら言う。


「でもお前、俺が社畜で苦労していたら笑うだろ?」

「うん、笑う。約束できる」

「正直で宜しい。言わなくて良かった」


 ……つか、言ったところですげぇ微妙な空気になってしまうのは目に見えているからな。


 二熊に湿っぽい話をするのは、何というか……言う人を間違えている気がする。 


「まあ……氷理君も色々と苦労して今があるということで、スキルを培っていると二熊君も思ってくれれば良いよ」

「はぁ……分かりました」


 腑に落ちないような表情をしつつも、言葉では納得する旨を言う二熊。


「それで町長、話を進めてもらって良いですか?」

「ああ、そうだったね。説明をしなくては」


 そう言うと、町長はコホンと咳払いをして、俺に視線を向ける。

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