孫娘とおばあちゃん 3
後日、重役が揃う定例会議で、祖母は跡取りを孫娘の蜂蜜に譲ると宣言した。この時から祖母はあたしを厳しく教育するようになった。そもそも勉強は好きだったし、学ぶことは苦ではなかったあたしはめきめきと実力をつけていった。後継者教育は、あたしに新しい知識と経験を与え、成長させてくれているのだと思うとやる気が出た。
高校生になると勉強の他に経営学を学び、放課後には祖母と会社に赴き簡単な仕事を手伝ったりもした。
両親に甘やかされて育ったあたしがふわふわの能天気なご令嬢にならなかったのは、ひとえに祖母の厳しさのおかげである。祖母には感謝してもしきれない。
社長室のソファに座り、社員の企画書に目を通していたあたしはふと顔を上げて聞いた。
「普通の女の子がいいって言われてフラれた」
社長室の椅子に座りパソコンを開きカタカタとキーボードを打っていた手を止めて、なんの話だ、と祖母は眉根を寄せ、ああ、と頷いて顔を顰めた。
「蜂蜜がイカれていたあの山田くんの話か。そうかいフラれたかい。いい経験になっただろう」
老眼鏡を外し、眉間を指で揉みながらくつくつ笑う。まるでフラれるのがわかっていたかのような様子に、あたしはちょっとムッとした。
祖母は失敗談を良い経験、と言う。失敗しないとそこから這い上がる強い心は育まれないし、成功だけだと失敗を恐れて決断力が鈍る。失敗は成功のもと、と祖母は何かある度にそう諭す。
「蜂蜜を見て理解してくれる男を選びなさい。男を見る目を養うことだ」
「山田くんは駄目な男じゃなかったわ。あたしのことちゃんと理解して……す、好きって言ってたもん」




