孫娘とおばあちゃん
失恋後。やるせない気持ちのまま、あたしは今、会社の社長室で祖母から教わる週二回の後継者教育を受けていた。普通の女の子になりたいと思いながらも、大企業のお嬢様でその跡取りという立場に見切りをつけることは出来なかった。恋より仕事、という天秤の傾きが今のところ変わることはない。
曽祖父の代で立ち上げた会社は、最初は慎ましく経営していたが、祖母の代で有名な大企業へと発展した。祖母はやり手で決断力があり、その判断は間違いがなく業績はうなぎ上り。そんな良き時代に社長交代を果たしたのが当時跡取りだった父だ。元来頼りなく優しすぎる父に、祖母は懸念を抱いていた。跡取りとして教育はしていたが、どうにも手応えがなく頼りない。しかし他にめぼしい人物はいなかったので、祖母にしては決断が甘く、仕方なしに社長の座を譲った。祖母は悠々自適な隠居生活というものを早く手に入れたかったのだ。
しかしこの祖母らしからぬ甘い判断が招いた結果は大きかった。父が社長になってから、徐々に右肩上がりだった売り上げは、次第に右肩下がりになり、社長である父の不安はもちろん社員も危機を感じ取り、危うんだ彼らは祖母に頼み込んだ。祖母は勿論断った。隠居生活は祖母を現実逃避させ、ストレスフリーの楽園だった。現役復帰なんてとんでもない。だがしかし、可愛がっていた会社が倒産の危機に晒されていると知り、泣く泣くもう一度現役へと引き戻る決意をした。こうして望まぬ返り咲きをした祖母は、隠居生活をしていても鈍らなかった経営術と手腕を惜しみなく使い、業績をもとに戻し、さらには最高売上の記録まで作ったのだからさすがである。




